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バンド  作者: こくぼなり
一章
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29/60

上戸に餅下戸に酒

 早くテスト勉強をしようと、急ぎ足で教室に向かっていると靴箱に真波がいた。

「おっはよー!真波」

「おはよ!」

「昨日数学の勉強したんだけど、全然わからなかった」

「なになに?教えてあげようか?」

 嬉しそうに笑いながら、靴を履き替えている。笑い方が癪に触るが、真波より頼れる人はいない。

「お願いしますよー」

 適当に返事をして教室に入る。それぞれの机に荷物を置き、私の机に真波が来る。

「ここと、ここと、ここ。昨日全然わかんなかったとこ」

「あー!それはね…」

 それから二時間かけてわからなかった問題は、物の十分で全て理解できた。

「じゃあ、自分の勉強するから」

「これ以上どこを勉強すんの?」

「紫織しってた?今日数学以外もテストあるんだよ?」

 首を傾げながら、驚いたような無表情で答える。

「あっ…そ、そうだよねぇー…」

 微妙な返答になったが、決して他のテストを忘れていたわけではない。

 他のテストは、暗記だけだ。正直勉強しなくてもそこそこな点数を取れる。

 真波はこんなに数学ができるのに、何故かそれができない。

 まあ今は、そんなこと気にしている暇はない。一分でも多く、数学を解く時間を多くしなければ赤点をとってしまう。

 テスト開始まであと二十分だ。そろそろ勉強道具を廊下に出さなければいけない時間だ。

 数学のノートだけを残し、あと勉強道具をカバンに詰め込み廊下に出す。

 荷物を廊下に出すときに、青藍と目があった。何か言いたげだったけれど、教室を二つ挟んでいて遠かったから何も言わずに、教室に入った。

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