上戸に餅下戸に酒
早くテスト勉強をしようと、急ぎ足で教室に向かっていると靴箱に真波がいた。
「おっはよー!真波」
「おはよ!」
「昨日数学の勉強したんだけど、全然わからなかった」
「なになに?教えてあげようか?」
嬉しそうに笑いながら、靴を履き替えている。笑い方が癪に触るが、真波より頼れる人はいない。
「お願いしますよー」
適当に返事をして教室に入る。それぞれの机に荷物を置き、私の机に真波が来る。
「ここと、ここと、ここ。昨日全然わかんなかったとこ」
「あー!それはね…」
それから二時間かけてわからなかった問題は、物の十分で全て理解できた。
「じゃあ、自分の勉強するから」
「これ以上どこを勉強すんの?」
「紫織しってた?今日数学以外もテストあるんだよ?」
首を傾げながら、驚いたような無表情で答える。
「あっ…そ、そうだよねぇー…」
微妙な返答になったが、決して他のテストを忘れていたわけではない。
他のテストは、暗記だけだ。正直勉強しなくてもそこそこな点数を取れる。
真波はこんなに数学ができるのに、何故かそれができない。
まあ今は、そんなこと気にしている暇はない。一分でも多く、数学を解く時間を多くしなければ赤点をとってしまう。
テスト開始まであと二十分だ。そろそろ勉強道具を廊下に出さなければいけない時間だ。
数学のノートだけを残し、あと勉強道具をカバンに詰め込み廊下に出す。
荷物を廊下に出すときに、青藍と目があった。何か言いたげだったけれど、教室を二つ挟んでいて遠かったから何も言わずに、教室に入った。




