悪夢
またあの夢だ。みんな楽しそうに歌っている。お客さんもノリノリで騒いでいる。
「お前なんていらないんだよ。」
まただ、また私は罵倒される。低い男の人の声で、メンバーのみんなに、お客さんに。
「やっめーろ、やっめーろ、やっめーろ。」
今日は、様々な罵声ではなくやめろコールだ。
「やっめーろ、やっめーろ、やっめーろ、やっめーろ。」
耐えきれない、頭がくらくらする、力が入らない。
立ってられなくなった私は、膝から崩れ落ちる。
「やっめーろ、やっめーろ、やっめーろ。」
お客さんが見下ろしながらやめろコールを続ける。やめようかな…思えばバンドを続ける理由などないのだ。誰に強制されてやっているわけでもないのに。
そうだ、やめよう。やめてしまおう!ここ最近調子が悪いのもバンドのせいだ。よし、やめる!
「やめる!バンドなんかやってられるか!」
私が叫んだ時には、ライブハウスは空になっていた。誰もいないライブハウスでひたすら叫ぶ。
「やめる!やめる!バンドやめる!もう楽器なんか持たない!」
夢中で叫んでいると、突然落ちた。何が起き…「ドスっ」目を開けると家の天井が目に入る。
「いったぁ。」どうやら寝ぼけてソファから落ちてしまったようだ。
3時間くらい寝ていたようだ。もうすぐ妹が帰ってくる。洗い物も風呂掃除もしていない。
妹が帰ってきたら文句を言われるだろう。それまでに終わらせなければ。
久しぶりに清々しい気持ちになり、上機嫌で洗い物をする。
明日は学校に行こう。そして「金輪際楽器は触らない、バンドはやめる」ということをみんなに伝えよう。
みんなに伝えるのは、難易度が高いが今は私の意思の方が固い。
よし、家事が終わったら明日の学校の準備をしよう。




