第42話 『旅の終わり』
あれから三年の月日が経った。
俺は左腕を失ったが生き延びることができた。
本来なら死ぬはずだったが、マリーがなんらかの方法で延命をしてくれたんだと思う。
マリーが稼いでくれた数分のおかげで俺は生きている。
魔神討伐はすぐさま国王の耳に入った。
王都であんな立ち振る舞いをしていたら当然と言えば当然だろう。
結果、俺たちは国を救った英雄となった。
そして、国王の提案により授与式が執り行われることになった。
授与式に俺は嫌な思い出しかないので辞退しよとしたが、エメリとシルフィの圧に押されて渋々出席することにした。
莫大な報酬金と好きな褒美を俺たちは得られることになった。
俺は全ての功績と賞賛をマリーに与えるように願った。
国王始め、その場にいた大臣連中は疑問を浮かべた。
俺は勇者だとか英雄だとか、そういう枷を背負うのはこりごりだったから全てを放棄した。
それに元凶は全てマリーだ。
功績を背負うくらい安いものだろう。
シルフィは南の国の復興支援の援助を願った。
「なんやかんや言っても出身地っすからね」
と、シルフィは言っていた。
問題はエメリだった。
エメリが願ったのは、
「ブレイブに謝って」
エメリは俺の話を聞いてからずっと国王に腹を立てていたらしい。
国王は曖昧な態度をしていると、エメリが凄まじい剣幕で怒り出したのだ。
で、結局、国王は俺に土下座をして謝罪をした。
あの時のエメリのドヤ顔は一生忘れはしないだろう。
その件は瞬く間に王国全土に広がり、エメリは国王を土下座させた少女として有名になった。
×××
現在の俺は現役を退いて気楽な隠居生活を送っていた。
最近では魔王城の修繕に勤しんでいる。
腕一本だと作業はなかなか進まないがそれでいい。
他には庭園の端っこにポツンと建っているマリーの墓の前で近況を話したりしている。
「お前の忘れ形見は凄いことになっているぞ。シルフィと組んで冒険者として八面六臂の活躍をしている。アイツら見た目も良いから、半ばアイドルのような扱いだ」
話をしていると、背後から声をかけられた。
「ここにいたんだね」
振り向くと賢者がいた。
賢者は飲み物が入った瓶を俺に渡す。
蓋は開けてある。
「ちょっと休憩だ」
「そうなんだね」
賢者は柔らかい笑みを浮かべながら、俺の隣に座る。
システムが消えたことにより賢者も消えたかと思っていた。
しかし、コイツは一年前にひょっこりと俺の前に現れた。
賢者曰く、賢者たちはシステムから切り離されて、世界の監視役として残留することになったらしい。
しばらく談笑していると、エメリとシルフィもやって来た。
「人気者のお出ましだな」
「まー、アッシとエメリの美貌なら人気になるのは宿命っすよ」
「そうやってすぐ茶化すんだから。ブレイブだって有名人じゃん」
魔王の件と魔神の件、加えて功績を蹴った変わり者として俺は改めて国民の注目の的になっている。
今回は恐怖などは全く抱かれていない。
それどころか親しみすら持たれている。
きっと、エメリとシルフィの仲間だからだろう。
それより気になることがある。
「そのブレイブっていい加減止めろ。俺はもう勇者でもなんでもないんだ」
エメリは腕を組んで難しい顔をする。
「うーん、今更呼び方変えるの大変だし。それにマティアスって……ぷっ、似合わなくて」
「お前、マリーと同じこと言うな」
「親子だからね」
自信満々に言うエメリを見て、俺は笑ってしまう。
つられて賢者とシルフィも笑い出す。
俺は今、自然に笑えることができる。
笑いあえる仲間がいる。
そのことが幸せでたまらない。
君のおかげだ。
俺は君のおかげでこうして生きていられる。
君のおかげで仲間と笑うことができてる。
本当に感謝している。
俺はかつての宿敵だった彼女の名前を胸に抱きながら、今日も何気ない日々を生きていく。




