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【完結】最強クラス【影霊術師(シャドウネクロマンサー)】に覚醒し、俺を捨て駒にした勇者パーティと世界の全てに復讐する  作者: なすび
【第2章】KNT's of the Sword and Balance

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71 魔刻印石

前回のあらすじ

隠れ家をアニスに襲撃されたため、シド達は新しい隠れ家を探す旅に出る。

リンの希望もあり、シド一行はリンの生まれ故郷 ――大陸南部に位置するリングランド村を目指すのであった。

 リンの生まれ故郷である大陸南部――リングランド村を目指して2週間が経過した。


 日中はダークホースを走らせ、夜はヴァナルガンドの異空間で休息する。

 聖教会の追手が迫っている様子もなく、穏やかな旅路の末に、俺達は商業都市アーディオンに到着した。


「わぁ……おっきぃですね」


「外壁の立派さで言えば王都にも引けをとらないレベルだな……」


 街道の先に見えるアーディオンのそそり立つ外壁を見て、感嘆の声を漏らすリン。

 アーディオンは最終目的地――リングランド村の中継地点だが、進んだ距離は1/5程度。

 旅の終わりはまだ遠いが、ここを逃すと大きな都市はもうない。


「ヴァナルガンドの中に備蓄していた物資も減ってきたし、あの街に寄ってくぞ」


「え? 大丈夫なんですか?」


 不安げに俺を見上げるリン。


 俺の指名手配は全国規模。

 故に、ここまで来るまでに通りかかった小規模な町や農村は全てスルーしていた。

 目の前にそびえ立つアーディオンも、漏れなく俺の手配書であふれていることだろう。


「アーディオンは商業都市だ。人の出入りだけなら王都より激しい。つまり殆どの人間が他人ってことだ。余所者が紛れるには丁度よく、買い出しをするならここを置いてほかにないからな」


 かつてリンを単身で王都に買い出しに行かせたように、人を隠すなら人の中という事だ。

 アーディオン外壁の門を通る前に、ワンサイズ大きなローブを羽織って、フードを目深(まぶか)に被る。


「リンもこれを着ろ」


 リンにも同じ格好をさせ。魔術師が使う杖を持てば変装完成だ。

 ローブも杖もダンジョンで手に入れたドロップアイテムだ。


 こういうとき、ヴァナルガンドの異空間収納能力がありがたい。

 余分なアイテムをいつか使うかもしれないと、保管しておくことが出来るからな。


「ぶかぶかだ……」


「多少大きい方が顔が隠れて丁度いい」


 オーバーサイズのローブを着たせいか、ただでさえ華奢なリンの顔が更に小さく見える。

 袖が余って手を動かせないリンの代わりに、フードを被せてあげる。


 成人した魔術師然とした男に、小柄な少女。

 巡礼の旅をしている子弟といった様相だ。


「わぁ、本当に門番さんに疑われず入れましたねっ」


 変装は功をなし、特に疑われることなく街の中へ侵入成功し、早速買い出しを始めるのだった。



***



 ――商業都市アーディオンは、大陸中の物品が集まる流通の要。


 品揃えの豊富さで言えば、国王のお膝元である王都にさえ勝る。

 そしてアーディオンには冒険者協会の支店が存在し、街の外には王都同様に無数のダンジョンが乱立している。


 つまり商売の街であると同時に、冒険者の街でもあるのだ。


「――となれば、冒険者御用達の店も沢山あり、そのラインナップは王都よりも豊富なんだよな」


 魔術師コンビの変装をした俺達が最初に訪れたのは、〝魔刻印石まこくいんせき〟というアイテムを扱っている魔道具店。


「いらっしゃいませ」


 魔術師と思わしき男が出迎える。

 どうやら魔術師ギルド(大規模な冒険者パーティのようなもの)を併設している様で、随分と立派な店構えだ。


 魔刻印石というのは――体内に取り込むことで新しい魔法やスキルを習得することが出来るアイテムだ。


 タンク職である重騎士クラスが、回復魔法が刻まれた魔刻印石を飲み込めば、自分で傷を癒せるようになり、より長く前線で魔物の攻撃を食い止めることが可能になる。

 MPが豊富な僧侶が、攻撃魔法が刻まれた魔刻印石を飲み込めば、魔法使いとしての役割も果たせるようになる。


 ちなみに修行を重ねることで、前者はパラディン、後者は賢者にクラスアップすることが可能だ。


 ――これらは一例だが、使い方は使用者のクラスによって千差万別。


 冒険者の冒険の幅を広げる夢のようなアイテムだ。



 超高価(クソたかい)という点に目を瞑ればの話だが……。



「なにかお探しでしょうか?」


「ひぇッ!?」


 ショーケースの中に並ぶ様々な魔刻印石を眺めていると、ローブを着た店主が声をかけてくる。

 俺の後ろにいるリンは小さな悲鳴をあげて萎縮する。


 リンの心配とは裏腹に、この男が俺とリンの正体に気付いている様子はなかった。


 この街にもやはりというべきか、俺の人相図が描かれた指名手配書が至る所に貼ってあったが、案外バレないものである。


「付与魔法の魔刻印石はあるか?」


「勿論、取り扱ってございます」


 店主はショーケースから俺が探している魔刻印石を取り出す。

 俺はその中から【ファイアエンチャント】【アイスエンチャント】【サンダーエンチャント】の3つの魔刻印石を購入することを決めた。


 それぞれ、武器に【炎】【氷】【雷】属性を一時的に付与することが出来る魔法で、【付与術師(エンチャンター)】クラスでなければ習得出来ない魔法だ。


「3点で――390万Gとなります」


 1つ130万G。

 平均的な冒険者の年収が300万Gなのを考えれば、結構な値段。


 冒険者協会で魔石の換金が出来ないため、貯金を切り崩しながら生活している手前、手痛い出費ではあるが、今後の必要経費と割り切る。


「ありがとうございます――こちら、うちのギルドに所属する【薬師】が作った【MP上限突破(リミットアップ)】ポーションです。おまけです。ご一緒にお付けします」


「そりゃどうも」


 魔道具屋の店主は愛想が良い訳ではないが、接客は丁寧で落ち着いた口調も好印象で、気持ちよく買い物をすることが出来た。

 シカイ族ってだけで見下されながら生活してきたので、新鮮な気持ちだ。


 もしこの店主が、俺がシカイ族だと分かっていても同様な接客をしてくれるのか? と思いながら、店主に見送られながら店を後にした。



***



 魔道具店を出た後、食材やら消耗品やらを買うために商店街を周り、日が沈む頃に都市内の宿を取るのであった。

 ヴァナルガンドの異空間で寝た方が安全だが、長旅で疲れているであろうリンに、柔らかいベッドで寝てもらいたくてグレードの高い宿を取った次第だ。


『親バカってやつよのゥ』


「うっせ」


 確かにリンを買う前――宿暮らしで冒険者をしていた時は、眠れればどこでもいいと、適当な安宿で生活していたので、エカルラートの指摘は的を得ていた。


「わぁ、ベッドふかふかだぁ!」


 リンはローブを脱いでメイド服姿になると、寝ころんでいる。


『シド――1件、お主に伝えておくべきことがある』


 影の中からエカルラートに声をかけられる。

 こいつが宿の部屋に入ってもなお、すぐに出てこないということは、リンに聞かせたくない内容――つまりは真剣な話なのだろう。


「(どうした?)」


『王都のネズミを通して情報を集めておるのだが、先日戦った《聖痕之肆》――カイネ・カイウェルじゃが、あ奴め、しぶとくまだ生きておるぞ』


 カイネ――全身を包帯で覆い、触れた物を錆び腐らせる鋸鉈のこなたを操る聖騎士。

 あいつ心臓に刃突き刺してたのに死んでなかったのか。


「(問題ない――あいつには勝ち逃げされた結果になって悔しい思いをさせられたんだ。次は必ず勝つ)」


 いつか来るであろうカイネとの再戦に気を引き締め、更なるレベルアップを目指す。


 こうしてアーディオンでの生活1日目が終了するのであった。


今回のAIイラストは変装するためにローブを被るリンです。

女の子がオーバーサイズの服を着て、ただでさえ細い首や小さな顔が更に華奢に見えるのが好きです。

挿絵(By みてみん)

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