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【コミカライズ】最強クラス【影霊術師(シャドウネクロマンサー)】に覚醒し、俺を捨て駒にした勇者パーティと世界の全てに復讐する【完結】  作者: なすび
【第3章】In the abyssal depths of the boundless SHADOW

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100/169

100 ヴァナルガンドVSククルカン

前回のあらすじ

影霊合戦が開幕する。

戦力差で勝ち目がないと判断したシドは、速攻で敵のキング(ソブラ)の首を取りにいく戦法を取る。

しかし蛇穴穿孔(じゃけつせんこう)という、寿命と引き換えに身体能力を超絶強化する秘術を使うルゥルゥに行く手を阻まれてしまう。


一方戦場ではシドの小駒が全滅し、ソブラの大駒が進軍を開始するのであった。

 影霊合戦開始から3分が経過。

 ヴァナルガンドによる空間移動で敵陣に斬り込み、速攻でソブラの首を取るという作戦は、ルゥルゥの妨害によって失敗に終わった。


 更に蛇穴穿孔(じゃけつせんこう)という身体能力を劇的に向上させる秘術により、ルゥルゥ如きに防戦を強いられる始末。

 そうこうしている内に玄室中央の戦場で衝突した小駒オークは全滅。


 幸先の悪い展開である。


 ルゥルゥの目で追うのが精一杯な斬撃の応酬を、ギリギリで捌きながら、影霊の視覚共有ウィンドウを横目で見て戦場を確認する。



 まず中央部――


『グルルルルルルルッッ!!』


『キシャア――――ッッ!!』


 ――2匹の《五大魔公》――ヴァナルガンドとククルカンが睨み合っている。


『ワウッ!』


『シャアッ!』


 やがて、タイミングを測ったかのように、大蛇と巨狼は同時に飛び込んだ。


 ヴァナルガンドの強靭なあぎとがククルカンの首に噛みついたかと思えば、スルリと逃げられ今度は鋭利な牙がヴァナルガンドに突き刺さる。

 ヴァナルガンドは首を激しく振って、ククルカンの牙から脱出し、再び噛むか噛まれるか、首の奪い合いが始まる。


 怪獣同士の取っ組み合いは圧巻で、もし地上で行われていたら地形が変わるんじゃないかという激しさだ。


『シャアアアアッッッッ!!!!』


 ククルカンは顎を大きく開くと、喉奥が白く光り――無数の鋼の刃を吐き出す。

 あれが物質を創造するというククルカンの権能か。


 だが――こっち(ヴァナルガンド)はあらゆる物質を呑みくだす悪食の獣だぜ?


『ワオンッ――――ギャウッ!?!?』


「ッ!? ヴァナルガンド!?」


 ヴァナルガンドもククルカンに習って口を大きく開き、飛来する刃を飲み込もうとした。

 異空間に収納されるはずのそれは喉奥に突き刺さり、ヴァナルガンドは口から激しく出血する。


「(ヴァナルガンドに飲み込めない物質が存在するのか!?)」


『ククルカンとヴァナルガンドの権能は同格――ククルカンが創造した物質はヴァナルガンドでは呑み込めむのかもしれぬ』


 怯んだヴァナルガンドに、ククルカンは長い胴を絡ませて拘束する。

 異空間に逃げようとするも、同じ神格を帯びた魔物だからか、ククルカンに縛られている間は空間移動が出来ないようだ。


 動きを封じた大蛇は巨狼の上を取り、うなじの辺りを噛みついた。

 対するヴァナルガンドの顎はククルカンには届かない。

 腹部や首を圧迫され、うなじを噛みつかれた状態――他の蛇系の魔物と同様、そうやってジワジワと獲物のスタミナとHPを減らしていく作戦か。


「耐えろヴァナルガンド! お前がやられたらこっちに勝ち目はない!」


『グルル……ッ!』


 ヴァナルガンドはククルカンによって完全に拘束された。

 ヴァナルガンドのHPが尽きる前にこの状況を打開し、救出に向かわなければ……!


 だが――ルゥルゥがそれを許してくれるはずもなく。



――キィンッ!



「フレイヤの強化魔法のせいか、ルゥルゥの動きが全然鈍くならねェ……!」


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッッ!!!!」


 ルゥルゥは今もなお悲痛な叫びをあげ、白目のみとなった瞳から血涙を流しながら超高速で短剣を振り回している。

 とてもじゃないが、ヴァナルガンドの救出に行ける状況ではない。



 ――続いて俺から見て左陣側の戦場をチェックする。


 敵の小駒サーベルパンサーが俺の小駒ゴブリンを全滅させ、そのまま前進している。


 俺の左陣営のシャドウはデュラハン、ダークホース、ウィンディーネの3匹。


「デュラハン、迎撃しろ! ウィンディーネはデュラハンの支援!」


 デュラハンはダークホースに騎乗しており、3匹のサーベルパンサーと対峙する。

 サーベルパンサーは俊敏性の高い獣型の魔物だが、機動力ならダークホースも負けていない。


 サーベルパンサーの牙を躱しながら、騎乗から振りかざす長剣がサーベルパンサーの首を刎ねていく。


 デュラハンは左陣側のサーベルパンサーを全て倒す――が、ソブラ陣営の大駒オーガが2本の巨剣を振り上げて、ダークホースに斬りかかった!


『ゴラアアアッッ!!』


『ヒヒ――――ンッ!?』



――斬!



 ダークホースは前足に力を入れ、バネのように素早くバックステップする。



――ダークホースHP 800/3600



 なんとか直撃クリティカルヒットは防いだようだが、それでも損傷が激しい。

 次の一撃は耐えられないだろう。


『ゴラアアアアッッ!!』



――斬! 斬! 斬ッ!!



 オーガは人が振り回すには苦労する巨剣を、まるで長剣のようにブンブンと振り回す。

 ダークホースはそれをサイドステップやバックステップで回避し、デュラハンが馬上から攻撃を繰り出しているが、オーガの強靭な肉体には殆どダメージが入っていない。


 オーガの巨体の前では、馬上という高さのアドバンテージも機能していなかった。


「マッドマザースパイダー――馬の動きを止めろ」


『キシュ――――ッッッッ!!』


『ヒヒ――――ンッ!?!?』


 左陣戦場にいるソブラのナイトマッドマザースパイダーが、黒い糸を吐き出す。

 それはベチャリと床にこびりつき――サイドステップで飛んだダークホースがその上に着地した。


 糸の粘着力にダークホースは底なし沼にはまかったかのように、身動きが取れなくなってしまう。


「(マッドマザースパイダーって、狂った(マッド)母蜘蛛じゃなくて、泥沼(マッド)の母蜘蛛って意味かよ!?)」


『ゴラアアアアッッ!!』


 機動力を奪われたダークホースに、オーガの凶刃が迫る。

 寸前の所でデュラハンは鞍を蹴り上げ跳躍――マッドマザースパイダーの沼糸の範囲外に着地した。



――ダークホース HP0【消滅】



「チッ!」


 ウィンドウがダークホースの消滅を告げる。

 だがデュラハンは愛馬の死を無駄にせんと、オーガを無視してマッドマザースパイダーへ迫る。


『キシュ――――ッッ!!』


 マッドマザースパイダーは、再び黒い糸を吐き出した。

 デュラハンは糸と着弾地点を予測し、左右にステップして回避。

 グングンとマッドマザースパイダーとの距離を縮めていく。


『キシュ――――ッッ!!』


『~~~~♪』


 痺れを切らしたマッドマザースパイダーは、地面に吐き出して罠を張る戦法を止め、デュラハン目掛けて直接糸を吐く。


 しかしウィンディーネがデュラハンの正面に球状の障壁を展開。

 障壁の湾曲した面を滑るように、マッドマザースパイダーの糸を後方へ受け流していく。


 ウィンディーネの障壁にヒビが入り――壊れたと同時に、デュラハンはマッドマザースパイダーの元へ到達。


『――――ッ!!』


『キシュ――――ッッッ!?』



――突!


――斬!



 糸を吐き出す口部に長剣を奥深く突き刺し、そのまま斬り上げた!

 マッドマザースパイダーの頭部が2つに割れ――消滅する。


『ゴラアアアアッッ!!』


『――――ッ!?!?』


 だが――ガラ空きのデュラハンの背中に、追いついたオーガが重撃を叩きこむ。



――デュラハン HP0【消滅】



 鎧がひしゃげ、一撃でデュラハンが消滅する。


 こっちの損傷はルーク(デュラハン)ナイト(ダークホース)

 それに対するこっちの戦果はナイトマッドマザースパイダー1体のみ。


『ゴラアアアアッッ!!』


『――――ッ♪』


 左陣中央戦場に残っているシャドウは、俺のビショップ(ウィンディーネ)とソブラのルーク(オーガ)のみ。

 オーガは相変わらず膂力にモノを言わせて巨剣を振り回し続ける。


「(ウィンディーネは障壁魔法で防いでいるが、それも時間の問題だろう)」


 右陣戦場の全滅を悟り、悔しさで奥歯を噛みしめながら、俺はルゥルゥの斬撃を防ぎ続けるのであった。


挿絵(By みてみん)

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