悪魔関係者
「「お父さん、その人たちは誰?!」」
「この人たちはお前を助けに来てくれた悪魔関係者の人たちだよ」
「「えっ、ええ……!?」」
娘さんたちはたちまち顔を青ざめさせるとお互い顔を見合わせて、私を見てはヒソヒソと何かをささやきあう。
「……あの、ナヅキさん」
シスターさんはそんな二人を見ながら私に耳打ちをしてきた。
「はい?」
「……ドッペルゲンガーってもっとこう、怖いものだと思ってたんですが、なんだか全然怖くないですね!」
私はシスターさんの耳元でささやくように返す。
「はい……しかしシスターさんはあの二人の違いがわかりましたか?私はぜんぜんわかりませんでした」
「私もドッペルゲンガーさんならこう、もっと邪悪なオーラをまとっているものかなと思ってたんですが。ちっともですね」
「まったくです、それどころかどちらも普通の子にしか……」
私がそう言うとシスターさんは少し口ごもりながら言った。
「……あの、もしかしてドッペルゲンガーさんって悪い方じゃないんじゃないですかね?」
「え?シスターさん……?」
すると二人は急にののしり合いをはじめた。
「ほらあ!あんたが出て行かないから!怖い人たちが来ちゃったじゃないの!」
「ここは私の家!なんで出て行かないといけないの!」
そして取っ組み合いを始めてしまった。
おじさんが必死に止めようとするも、二人はお互いの頬をつねったり髪の毛を引っぱったりで収まらない。
一方で石像はがっちりと腕を組んだまま二人の勝負の行方を無言で見守っている。
いや、石像なんだから無言は当たり前だ。
「お、おい、ウノ!よさないか!」
「そんな汚いそばかすだらけくせに私って……笑わせないでよ」
「あんたこそ髪は藁みたいにボサボサで、肩にフケは乗ってるし、目やにだってついてるじゃない!」
「おぉおん!?やってみるかぁ……この歯欠けブス!」
「あぁん……黄色い歯しやがって……来いやぁああ!」
二人の若い娘さんが言葉の限りを尽くして罵り合っている。
なんということだ。このままではどちらかが死ぬまで喧嘩を続けてしまいかねない。
これがドッペルゲンガーの策略なのだろうか?
-:-:-:-:-:-
「こらっ、よすんだウノ!お客さまの前でっ!いつもの聞き分けのいいお前はどこに行ったんだ?!」
「だってお父さん!このそばかす歯抜けブス、私のフリして家に住み着こうとしてるの!」
「そっちが私のフリをしてるんでしょ!いい加減にしなよ!フケ!フケ頭!」
再び髪の毛をつかみ合いもつれて転げ回る二人。
「うちょちょちょちょ!!」
「おにゃにゃにゃにゃ!!」
私はタッシャさんに助けを求めようと振り返るが、彼は石板に指を当てながら興味深そうに二人を眺めている。
農家のおばさんのような服装をしたゴツい石像は仁王立ちのままピクリとも動かない。
なんだこれは、どういうことだ。
いや、石像なんだから動かないのは当たり前だ。
……というよりこの石像はなんなんだ?なんでこんなものがここに置いてあるんだ?
おじさんもタッシャさんも特に石像のことを話題にしないし、もしかして私にしか見えていないのだろうか?
そんなことを考えていると、いきなり石像が口を大きく開く。
「やめな!!このバカタレども!」
怒鳴り声が響き渡ると二人はようやく動きを止めた。
「「お母さん……」」
「……」
それは石像ではなく石像のように逞しい体を持った強面のおばさんだった。
「無駄に暴れて腹を減らしてんじゃないよ!二人で畑の手入れでもしな!!」
「か、母さん!どっちが本物のウノか判るまでは外に出したらダメだってば!」
おじさんが食い下がる。
だがおばさんはバカにしたようにフッと鼻をならすと、こちらをギロリと見据えた。




