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悪霊の姿

「もちろん悪魔を追い払う方法ならいくつかある。それは、悪魔の個性……というより召喚の種類によってさまざまに別れている」


「へー!そうなんですね!」


「ああ、例えばだ。悪魔を召喚する際に使われた呪文を逆から唱えたりとか、苦手としている動物を連れてきたりとか……」


「あははっ!なーんだ、動物を連れてくればいいだけだなんて簡単じゃないですか!」


「いやシスターさん、あははじゃなくて……」


私の言葉にタッシャさんが苦笑いを浮かべる。


「だから悪魔がいつ、どこから、どう現れたかを知ることが重要だ。そうすればそれに合わせて対処することができるだろう」

「なるほど……そうですね。まずは情報を集めることから始めないと」


「その通り……だが、理解して欲しいのは悪魔が勝手に現れて、人間に悪さするようなことはほぼあり得ないということだ」


「へ?そ、そうなんですか?」


タッシャさんの眉間に皺が寄る。


「ああ、悪魔は人間の生活にはほとんど干渉してこない。……なぜなら悪魔にも階級と社会があり、より上位の存在に奉仕するために忙しく働いているからだ」


「ん、んん?それは……どういう意味なんでしょう?」


「悪魔にとっては地獄で働くことの方がずっと重要なんだ。だからくだらない悪さのために現世に現れるようなことはないと言っていい」


「……つまり悪魔を利用する人間がいて、そこにこそ対処しないといけない、と?」

「そうだ、そういうことになるな」


タッシャさんの解説を聞きながら私は考える。


悪魔の社会については興味深かったが、こうなると単に悪魔を追い払うだけでは済まなくなるというわけか。


「あ!わかりましたよナヅキさん!タッシャさん!」


すると突然シスターさんが何かを思いついたように手を叩いた。


「シスターさん?何か閃きましたか?」

「はい!やっぱりこの世から悪魔さんを追い払うには愛の力しかないと思います!」


「……そうですか」

「うわぁん!ナヅキさんがバカにした目で私を見ています!冷酷!冷血!爬虫類!」


しかしタッシャさんはシスターさんの言葉に同意する。


「いやいや、素晴らしい意見だよ」

「え?」


「結局は人々の恨みの気持ちや、邪な心が悪魔を呼びさますんだ。例えば私たちがしっかりと団結することができれば、悪魔を利用しようなどという発想に至ることはほぼなかろう。しかしこう……」


タッシャさんは顔を上げて、辺りを見回す。


「人々が増えた分、かえって交流はどんどん希薄になり、その人の一面的なことしかわからなくなる。それが嫉妬やあらぬ想像を生んで、悪魔がつけ入る隙を作ってしまうんだ」


「やっぱりタッシャさんは物知りでとっても優しい人ですねえ!」


「ははは……大したことじゃないよ。無駄に年を取って、くだらないことで頭がいっぱいになってるだけだ。それよりシスターさん、依頼書を見せていただいてもいいかな?」


「は~い!どうぞ!」


シスターさんは破れた貼り紙をタッシャさんへ手渡す。


しかしタッシャさんは紙を受け取るとすぐにその顔を歪めてしまった。


「……う、こっ、ここ、これは」

「ど、どうしたんですか?」


「なんかべたべたしてるんだが、ううう……なんだこれは」

「あ、さっきナヅキさんに言われた時に鼻水をつけちゃいました!」


「すっ、すみませんすみません!タッシャさん!私がシスターさんに変なこと言ってしまったせいで……」


「……い、いいんだよ……」


タッシャさんは鼻水のついた手を振り、指先でつまみながら貼り紙の文面を読み上げていく。


「……困ったんもんだな。どうでもいいことは長々と書かれているが、肝心な悪魔の仕業とやらついて書いてあることは……娘さんが二人になったということだけだ」


「……二人?」

「え?それって一体どういう……」


「もちろん娘さんがもう一人生まれたという意味ではなく、娘さんに瓜二つの人物が現れたという意味だろう。しかし、だとすれば悪魔でなくドッペルゲンガーを疑ったほうがいいかもしれないな」


「どっぺるげんがー?それはなんですか?」

「うむ……」


タッシャさんは貼り紙を慎重に折りたたむと、それを懐へとしまう。


「ドッペルゲンガーは古い姿見の中に潜むという死者の霊だ。生きている者にそっくりの姿で現れ、出会えば死ぬという言い伝えがあり……」


「ええーっ!出会ったら死ぬとかもう無敵じゃないですか!」


「……死ぬのは姿を映し取られた本人だけだ。そうして本物になり代わることで、現世での安易な復活を目論むという。つまりこの娘さんはかなりまずい状況にあるのかもしれないな」


「そのドッペルゲンガーをご両親は悪魔だと勘違いされているというわけですね」


私の言葉にタッシャさんは微笑みながらうなずいてくれた。

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