020 集う者たち
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「なあ、ここにルシードがいるって聞いたんだけど、ホントか!?」
レムスの街にあるギルド。そこで深夜時間帯の受付を任されているノーラは、銀糸の髪に紫の瞳を持つ少女――ルーファに声をかけられ、先程冒険者殺害の容疑をかけてしまったルシードの顔を思い出す。
「……ルシード? ルシードさんでしたら先程ギルドを出て――」
ノーラは息も荒く捲くし立てるルーファを不思議に思いながらも、ルシードが出て行ったばかりの扉へと目をやり、そこでどうしたことか、再び戻って来ていたルシードが、アギトと何やら話しているためこちらに気づかず鑑定室へと入る姿を目撃。
ノーラはそれを伝えようとして、
「――あれ?」
すでにルーファの姿がないことに気づく。
ノーラはどこへ行ったのかとその姿を捜すと、呼び止める間もなく、ギルドの外へと飛び出していく背中が見えた。
これでは嘘を伝えたことになってしまう。
ノーラはルーファを追いかけようと、椅子から立ち上がろうとして――
「すみません、今ここに、無駄に胸のでかい女が来ませんでしたか!?」
新たに現れた黒い髪に黒い瞳を持つ少女――レアによって、それもできなくなってしまう。
「……胸? 今の方のことでしょうか? その方ならギルドを出て行かれましたよ?」
一度ギルドの扉へと目を向けるノーラ。
深夜で訪れる冒険者が少ないことからも受付は一人しかいない。代わりのギルド員を呼びに行く手間を考えるならば、ルーファを追っているような様子のレアに、自分の代わりにルシードがギルド内にいることを伝えてもらった方が良いだろう。
ノーラはそれを伝えようとして、
「――あれ?」
すでにレアの姿がないことに気づく。
ノーラはどこへ行ったのかとその姿を捜すと、呼び止める間もなく、ギルドの外へと飛び出していく背中が見えた。
目で追いきれない速度で動く者たちに追いつけるとは思えないが、やはり追いかける必要がありそうだ。
ノーラはルーファとレアを追いかけようと、椅子から立ち上がろうとして――
「申し訳ありません。このギルドでルシードさんを見かけたとの情報を聞いてやってきたのですが……」
新たに現れた青髪に琥珀色の瞳を持つ少女――セラフによって、それもできなくなってしまう。
「……ルシードさんですか? ルシードさんなら、先程鑑定室へと入って行かれましたよ」
今度こそ伝えることができた。
そう思ったノーラは、セラフとともにいた赤い髪に緑の瞳の少女――ミラと、黒い髪に紫の瞳を持つ少女――サーシャに向かって、セラフが何やら視線で訴えかけている姿を目にしたところで、ルシードとアギトが鑑定室とは対極にある、換金室へと入って行く姿を目の端に捉えた。
ノーラはそれを伝えようとして、
「――あれ?」
すでにセラフたちの姿がないことに気づく。
ノーラはどこへ行ったのかとその姿を捜すと、呼び止める間もなく、鑑定室へと飛び込んでいく背中が見えた。
これはまずい。どこから優先すべきだろうか。まずは鑑定室へと向かった少女たちを追うべきか、それともすでに手遅れになっていそうなギルドの外へ出て行ってしまった少女たちを追うべきか。
ノーラが考えている間にも――
「ノーラさん! こ、ここにルシードさんがいるって聞いて来たんですけど!」
息も絶え絶えに受付へと現れた懐かしい顔、金糸の髪に青い瞳を持つ――セフィーリアとシャルニアによって、思考を中断させられた。
「お二人ともお久しぶりですね。前回この街に来られてからどのくらいに――」
「急いでいるのであとにしてくださいっ!」
あの内気だった少女に何かあったのだろうか。全身を覆い隠すように伸ばしていた髪も切り、今にも受付に身を乗り出しそうなシャルニアに対してノーラは思うが、急いでいると言われては話を聞ける雰囲気ではない。
「申し訳ありません。ルシードさんでしたら――」
ノーラはルシードが換金室へ入って行ったと伝えようとして、考える。よもや四度目はないだろうが、ないとも言いきれない。
一度周囲を見渡したノーラは――
「たった今、ギルドを出て行かれたようですね」
ギルドを出て行くアギトの背中に、まさかの四度目が起こるところだったと笑顔で伝えた。
「ありがとうございます! 姉さん、行こう!」
「うん!」
ノーラは笑顔のままギルドを飛び出して行くセフィーリアたちを見送り、鑑定室でルシードが持ち寄ったモリノオウジャのレア度を嬉々として語るギルド員とセラフたちが問答をしているとは知らないがために、まずは近くにいるセラフたちを優先しようと、椅子から立ち上がろうとして――
「――えっ?」
どうしたことか、アギトとともにいたはずのルシードが、換金室から出てくる姿を目に捉えた。
「な、なんで?」
ノーラが呆然としている間にも、今度こそ本当にルシードがギルドを出て行ってしまう。
混乱するノーラは急いでルシードを呼び止めるために、椅子から立ち上がろうとして――
「ここにルシードってのがいるはずなんだけど、どこにいるかわかるかい?」
新たに現れた老婆――ニーナによって、それもできなくなってしまう。そのうしろには、久々の来訪に会釈を送ってくるテオと、ニヤニヤと笑いを堪えきれていないカークの姿があり、ルシードに会うのが楽しみだとばかりに期待する、レニーとレインの姿もある。
どうして受付が一人しかいない深夜に限ってこんなにも人がやって来るのだろうかとノーラは頭を悩ませるが、一人を除けば次々と現れる者たちがルシードの名を出していることからも同じ目的なのだろう。では、どうして一緒に来てくれないのかと愚痴りたい気分だ。
まさか本当にルシードが結婚詐欺を行っていたのではないかとノーラは怪しむ始末である。
「ルシードさんなら、たった今ギルドを出て行かれましたよ。どこへ向かわれたかまではわかりかねます」
「一足違いですか。先に出て行ったセフィたちはどうしたのでしょう?」
「私たちが一番である必要もない。ゆっくりと追いかければいいさ」
「レインだって早く会いたいくせに、我慢すんなって!」
「とにかく俺たちも追おうぜ? あの野郎がどうなってるか見ものだしな」
今までとは違い、ゆっくりとした足取りで、テオたちはギルドを出て行った。
「……あ、テオさんたちに最初に出て行った方たちへの伝言……は必要ないか。ルシードさんが出て行ったのは本当だしね」
勝手に納得するノーラの目には、いつの間にか換金室へと入っていたセラフたちが、慌ててギルドを飛び出して行く姿が目に映り、もはや誰を追う必要もなくなったことに胸をなでおろす。
「……ええー、嘘でしょー?」
だがそこへ、ギルドの扉を開けて入って来るルシードの姿を見て、捜しに出て行った人たちは本当に何をやっているのかと、ノーラは呆れながらも思うのだった。




