君を探す……
何が起きたのか、全く判らなかった。
目を開けたら、何もない真っ白な空間にいて、目の前に大切な人がいた。滅多に見せない笑顔で笑っているかと思った。本当に幸せそうに笑っていると。でも、違った。僕の大好きな笑顔ではなかった。哀しそうな目をしていたのだ。それを見た僕は、ただ呆然と立ちつくすことしかできなかった。そして、彼女は、アヤは、姿を消した。
「アヤ!!」
名前を叫びながら辺りを見渡したけれど、何もなかった。あるのは、自分の居場所が判らなくなるほどの、真っ白な空間だけ。
自分の夢だと判っているのに、気持ちは焦る一方。夢から覚めることよりも、早くアヤを見付けなければという思いの方が強かった。
一歩足を踏み出すと、突然景色が変わった。
部屋の右側の奥にある、二つのソファー。向かい側には本棚がある。そして、部屋の中央にある長テーブル。その奥にある一つの執務用の机。執務室の中だった。
「アヤ!」
城の中、アヤが好きそうな小さな丘のある場所。どこに行ってもアヤは見付からない。それに、夢の中ということを忘れそうだ。
物音一つすらしない世界。人の影もなく、ただいつも見ている景色だけがそこにある。
自分は何処にいるのか。
判るようで判らないこの状況は、ただただ不安を大きくするばかりだった。
*
ぼんやりと感じ始める意識。
そっと目を開けると、夢の中で見た同じ景色が目に入った。
静かな執務室。夢の中と変わらない景色。人影は――。
言いようのない不安感がこみ上げてくる。現実に戻ってきたはずなのに、夢と変わらない。不安に焦りが加わる。
現実の世界にいるという証拠がほしかった。
「―――ト。タクト」
名前を呼ばれた。夢の中で必死になって探した人に。
「……ア、ヤ?」
少し安心して、彼女の名前を口にした。けれど、うまく声にならなかった。
「大丈夫?」
心配そうに顔をのぞきこんでくる。
窓から差す光で、アヤの金色の髪が柔らかく光っていた。それを見ていたら、自然と心が落ちついていくのが判った。
「珍しく眠ってると思ったらうなされてるから、心配したよ」
「ん、ごめん。ちょっと、変な夢を見ちゃって……」
本当、嫌な夢だった。
「……。ちょっと待ってて」
少し何かを考えたあと、アヤはそう言って僕から離れた。
何をするのか気になっていたら、近くから心が和らぐ香りが漂ってきた。と思ったら、アヤが戻ってきて
「はい」
ティーカップを差し出された。
「ありがとう」
両手で包むように持ったカップから、ハーブのいい香りがした。
「ハーブティーは、心が落ちつくから、ね」
「そうだね」
弱々しい笑みになってしまった気がするけど、僕は微笑んだ。それから、アヤが作ってくれたハーブティーを一口飲んだ。
温かい液体が、じんわりとしみわたっていく感じがした。
普段は魔法を使わないアヤが、珍しく力を使った。それくらい、彼女を心配させてしまっていたのだろう。
「アヤ、ありがとね」
深く追求せず、ただ傍にいてくれる。それが、ありがたかった。
「お互い様ってことだよ」
そう言って、アヤは優しく微笑んだ。
fin.
*ひとやすみ*
《ブログよりお題…君を探して。》
今回は、いつもと逆パターンで。
いつもタクトに慰められているアヤですが、こういう時もあるんです。
二人でお互いを支えているって感じです。だから、いつだってアヤとタクトは仲が良い。タクトはアヤの弱さを知っているし、アヤはいつも助けられているから、タクトが本当に困っている時には支えになろうとする。心を開いている相手だからこそ、の関係。他の人では絶対にダメ。
今回はシリアス風味になってしまいましたが、いつかは甘々とかも書いてみたいです。でも、甘々は、書き終えたあとに「恥ずかしさ」というものが襲ってくるので、なかなか書けないんですよね(笑)
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
初出:H24 10/4