表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
side story  作者: 夜音沙月
5/43

君を探す……


 何が起きたのか、全く判らなかった。


 目を開けたら、何もない真っ白な空間にいて、目の前に大切な人がいた。滅多に見せない笑顔で笑っているかと思った。本当に幸せそうに笑っていると。でも、違った。僕の大好きな笑顔ではなかった。哀しそうな目をしていたのだ。それを見た僕は、ただ呆然と立ちつくすことしかできなかった。そして、彼女は、アヤは、姿を消した。


「アヤ!!」


 名前を叫びながら辺りを見渡したけれど、何もなかった。あるのは、自分の居場所が判らなくなるほどの、真っ白な空間だけ。


 自分の夢だと判っているのに、気持ちは焦る一方。夢から覚めることよりも、早くアヤを見付けなければという思いの方が強かった。


 一歩足を踏み出すと、突然景色が変わった。


 部屋の右側の奥にある、二つのソファー。向かい側には本棚がある。そして、部屋の中央にある長テーブル。その奥にある一つの執務用の机。執務室の中だった。


「アヤ!」


 城の中、アヤが好きそうな小さな丘のある場所。どこに行ってもアヤは見付からない。それに、夢の中ということを忘れそうだ。


 物音一つすらしない世界。人の影もなく、ただいつも見ている景色だけがそこにある。


 自分は何処にいるのか。


 判るようで判らないこの状況は、ただただ不安を大きくするばかりだった。


      *


 ぼんやりと感じ始める意識。


 そっと目を開けると、夢の中で見た同じ景色が目に入った。


 静かな執務室。夢の中と変わらない景色。人影は――。


 言いようのない不安感がこみ上げてくる。現実に戻ってきたはずなのに、夢と変わらない。不安に焦りが加わる。


 現実の世界にいるという証拠がほしかった。


「―――ト。タクト」


 名前を呼ばれた。夢の中で必死になって探した人に。


「……ア、ヤ?」


 少し安心して、彼女の名前を口にした。けれど、うまく声にならなかった。


「大丈夫?」


 心配そうに顔をのぞきこんでくる。


 窓から差す光で、アヤの金色の髪が柔らかく光っていた。それを見ていたら、自然と心が落ちついていくのが判った。


「珍しく眠ってると思ったらうなされてるから、心配したよ」

「ん、ごめん。ちょっと、変な夢を見ちゃって……」


 本当、嫌な夢だった。


「……。ちょっと待ってて」


 少し何かを考えたあと、アヤはそう言って僕から離れた。


 何をするのか気になっていたら、近くから心が和らぐ香りが漂ってきた。と思ったら、アヤが戻ってきて


「はい」


 ティーカップを差し出された。


「ありがとう」


 両手で包むように持ったカップから、ハーブのいい香りがした。


「ハーブティーは、心が落ちつくから、ね」

「そうだね」


 弱々しい笑みになってしまった気がするけど、僕は微笑んだ。それから、アヤが作ってくれたハーブティーを一口飲んだ。


 温かい液体が、じんわりとしみわたっていく感じがした。


 普段は魔法を使わないアヤが、珍しく力を使った。それくらい、彼女を心配させてしまっていたのだろう。


「アヤ、ありがとね」


 深く追求せず、ただ傍にいてくれる。それが、ありがたかった。


「お互い様ってことだよ」


 そう言って、アヤは優しく微笑んだ。



fin.



*ひとやすみ*

《ブログよりお題…君を探して。》


今回は、いつもと逆パターンで。

いつもタクトに慰められているアヤですが、こういう時もあるんです。



二人でお互いを支えているって感じです。だから、いつだってアヤとタクトは仲が良い。タクトはアヤの弱さを知っているし、アヤはいつも助けられているから、タクトが本当に困っている時には支えになろうとする。心を開いている相手だからこそ、の関係。他の人では絶対にダメ。



今回はシリアス風味になってしまいましたが、いつかは甘々とかも書いてみたいです。でも、甘々は、書き終えたあとに「恥ずかしさ」というものが襲ってくるので、なかなか書けないんですよね(笑)


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


初出:H24 10/4


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ