魔法
「強くなりたいって願う人がいるのに、強い魔力をもっているあなたが魔法を使わないなんて、失礼だと思わないの?」
そんなこと思わないと、否定の言葉を答えそうになったが、すんでのところで飲みこんだ。そのかわり、曖昧な返事をした。
「そうかな」
「そうだよ。だって、出来ることが沢山あるのに、それをしないなんて」
それは、おかしいことなのだろうか。
「そうそう。魔法を使いたくないからって、ただそれだけなのが、また酷いよね」
もう一人の人までもが、私を責めるように言ってくる。
(そんなに、酷いこと―――?)
顔は見えないが、それでも判った。横にいるタクトが、ふっと哀しそうに笑ったことが。
「そう……。うん、そうなのかもしれないね」
夜。城の屋上。
昼間の会話を思い出しながら、一人空を見ていた。
すると、ふっと背後から人の気配を感じた。私を心配する人の気配が。
「大丈夫だよ」
その人が何か言う前に、先に言った。
「……全然大丈夫そうにみえないのは、僕の気のせいかな」
今は一人にしてほしかった。そう思っていた、ハズなのに。それなのに、やっぱり声をかけてくれたことに感謝する。
「気の、せいだよ」
それでも、口から出てきたのは、心とは裏腹な言葉。
「気のせいじゃないね」
すぐに反対された。気付かれている。そう確信した。
「泣きたいなら、泣いていいんだよ? 我慢はよくないと思うんだけど」
そう言って、隣に移動してくる。
顔を見られたくなかったから、隣に来たタクトの胸に額をあてた。すると、そのすぐ後に、ふわりと抱きしめられる。
「傷ついたんでしょう?」
やっぱり、タクトは判っていたんだ。
私が、あの会話で傷つたことを。
あの人達にも悪気があったわけではないのだろうけど、無責任だと思った。勝手に私を悪い人、酷い人ように言っていたのだから。
「アヤは、大きすぎる力がどんなに危険なのかを知っている。だから、魔法を使うのがあまり好きじゃない。そうだろう?」
私はただ、怖いのだ。
自分の強すぎる魔力のせいで、人を傷つけることになるかもしれないということが。そんなのは、嫌だ。だから、誰かを守るためや助けるためだけに、魔法を使うようにしている。
「アヤは何も悪くないよ。必要な時はちゃんと、魔法を使ってる。自分でしっかり判断できてるんだから、大丈夫だよ」
上から降ってくる声は、すごく優しいものだった。
「ありがとう」
ちゃんと私を理解してくれていることに。
私を、慰めてくれていることに。
―――fin
…ひとやすみ…
ブログで頭の中をぐるぐるしだした創作の想像、もとい妄想を吐き出していたら、いつの間にかss一本分の長さになっていた呟き。それを加筆修正して、ssにしてみました。
アヤに魔法を使わせる時、いつも頭の中に置いておくこと。
『アヤは魔法を使うのがあまり好きじゃない』
本来は、本編の一番大切な話が終わったあとの設定ですが、その前から、アヤは魔法を使うのがあまり好きではないと、そんな気がします。
今回のこの話、実は何度も頭の中で想像しては書かずに忘れていく、というのを繰り返していた話でもあります。いつか書いてみたいと願っていた話だったので、執筆できて幸せでした。
書かずにいた理由…
・アヤとタクトの会話だけしか想像できずにいた
・書いても、自分が満足するような話をかけないと思っていた
ここまで読んで下さり、ありがとうございました*
初出:H24 5/25




