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第1話 桃色のプロローグ -後編-

「ヘアカットサービスでーす!」

 

 (はやっ!)


といろは扉を開ける。


「失礼しまーす」


大荷物の女性は会釈をしながらといろの部屋に入り、大きな細長いダンボールから全身鏡を出し、部屋の壁に立てかけ、ビニールを床一面に敷き出した。

そしてといろにそのビニールの上に椅子を置いて座るように促した。


「指定された髪型でいいですか?」

「はい。さっき画面で注文したヤツで大丈夫です」

「了解しましたー。切りまーす」


といろは手際の良さに感服した。早いし、整え方も丁寧だった。


「はい!どうですかー?」

「うぉー!」


といろは目を輝かせた。

綺麗な自分のクセを活かしたボブヘア。白い髪も相まって少しオシャレに見える。


「すごい!ありがとうございます!」

「こちらこそ〜」


ヘアカットの女性は持ってきた荷物をそそくさ片付け、嵐のように去っていった。


「とっても素敵ですね」


机の上の小さなモニターの中からルリが声をかける。

といろは少し机から離れてしまった椅子を持ち上げ、机の元へと戻しながら、ルリにニカッと笑いかけた。


ピンポーン


またインターホンが鳴った。ヘアカットの女性が忘れ物でもしたのかと、といろは駆け足でドアへと赴いた。ドア穴を覗くと先程とは違う、大きなダンボールを持った女性が立っていた。


「といろさーん!その方は配達の方です!」


少し遠くからルリの声が聞こえた

といろはドアを開ける。


戸咲(とざき)といろさんで間違いないですか?」

「はい、戸咲といろです」

「こちら学校からの支給品になります。不備などございましたら、担当の研究員にお申し付けください」

「分かりました。ありがとうございます」


配達員はといろに配達物を渡し、会釈をした。といろも会釈をしながら扉を閉めた。


大きなダンボールを抱え、といろは机のある部屋へと戻る。


「といろさん、早速そのダンボール開けてみてください」

「はーい」


といろは床にダンボール箱を置き、ピンクのガムテープを剥がして、包装を取り出す。


「スマホと...制服?」

「とタブレット端末が底にあると思います」


といろは制服を手に取る。なんとも可愛らしいデザイン。ピンクのジャケットに紺色のネクタイ。そして紺色ギンガムチェックのスカート。もちろん丈は短い。そして、白いワイシャツ、黒のインナーパンツが2枚、膝下までの長さの靴下が3枚入っていた。

といろはピンクのジャケットを持ったまま、止まってしまう。


(これからこれを着るのか……!)

 

なかなか覚悟のいる代物(しろもの)である。

 

「といろさんはネクタイを選んだんですね」

「はい。ネクタイに憧れがあったので」

 

入学前に制服の採寸とオプションの選択があった。リボン二種類とネクタイの中から好きな物を選べる。といろはネクタイを選んだ。

ちなみに、スカート丈も選べる。しかし、他の入学予定の生徒がだいたい基本の丈を選んでいると聞いてといろも同様に基本の丈を選んだ。その時はよく考えていなかったし、この学校の言う基本の丈とはどのくらいの丈なのか確認していなかった。その結果のミニスカートである。

 

「うう……」

「大丈夫ですよ。短い丈が苦手でしたら、無料で新調してスカート作れますから。それにといろさんのお御足はお綺麗です」

「いやいや、ていうか第一私今ジーパンなんですけど」

「私はといろさんの制服の採寸日にいたのでたんとこの目に焼き付けましたよ。といろさんの綺麗な生足。自信持ってください」


(いたんだ……そしてなんていうか滲み出る変態感)


「まあミニスカートで大丈夫です。そこまで死ぬほど抵抗ある訳じゃないですし、みんな同じだって考えれば百歩譲れます」

「楽しみですね。その制服を着て入学式に出席するといろさんはさぞ輝きを放つでしょう」

「ちょっ、さっきからなんか恥ずかしいんですけど」 

 

といろはジャケットとスカートをハンガーに掛け、備え付けのクローゼットの中にしまった。残りの制服関係のものたちは後で箪笥(たんす)にしまうとしよう。

 

「といろさん、一度スマホを確認してもらってよろしいですか」

「よろしいです」

 

といろはダンボールの中に入っていたピンク色スマホを取り出す。


「電源をつけてみてください。どこのボタンを押せばいいのか分からないですが、とりあえず長押しです」

  

といろはスマホにに付いている電源がつきそうなボタンを長押しし、電源を付けてみた。

 

「電源つきました」

「では、そのスマホの機能とスマホにインストールされているオリジナルの主要なアプリについて説明します」

 

あれやこれやとスマホについての長い説明を受たその後、同じく学校から支給されているタブレットについても説明され、途中で昼ご飯を注文し、さらに部屋の機能や学校の隣接されている学校関係者用の街、学校施設についてなど、諸々の説明を受けていたら、あっという間に夕方になっていた。

 

「長い時間お疲れ様でした。個人ガイダンスで説明するように言われた内容は以上です。全体を通して何か質問ありますか?」

「いや、特にないです」

「左様ですか」

 

といろはやっと終わった説明ラッシュに息をつく。多分半分も内容は覚えきれていないが、頭はとても使った。非日常的な内容ばかりで眠くはならなかったが、どっと疲れた。

 

「以上で今日の個別ガイダンスは終わりになります。ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 

配達が来てからずっと床に座って聞いていたといろは、正座になおり机の上の小さなモニターに向かってお辞儀をした。

 

「次回は3日後ですね」

「まだあるんですね」

「はい。次は勉強と入学式についての説明ですね」

「その次は…?」

「入学式後の夜に。ここでといろさんの課題開示ですね」

 

(そうか、課題があるんだった。じゃあ本当にゆっくりしてられるのは今のうちか)

 

「あの、終わりですので好きなことして大丈夫ですからね。私はもうといろさんの部屋のモニターと接続切っちゃいますけど、困ったことがあったり、話し相手が欲しかったりしたら、そのスマホでいつでも私に電話してください。ビデオ通話でもいいですよ」

 

少し前まで赤紫だった空はもう深い濃紺の空へと変わっていた。ふと部屋全体を見渡す。これから自分が住む部屋だろうに、朝から今この時までずっとここに居たはずなのに、なかなか慣れないものだ。

 といろは体育座りになって膝に顔を埋める。

 

(これから、これから……とりあえず夕飯をスマホで注文して届けてもらって、お風呂に入って……寝て……)

 

じわじわと新生活に足を踏み入れた実感が湧いてくる。実家が恋しい訳ではないが、なんとなく(むな)しくなってきた。無性に何かしたい気分である。今日は説明を受けて頭は疲れたが、体も心もまだまだ元気が有り余っているのだ。

といろは机の上のモニターをいる。スマホと同じくらいの大きさの画面から、あの眼鏡で白衣の研究員はまだ消えていなかった。

 

「あの、ルリさん」

 

といろはルリに話しかける。ルリはちょうどモニターとの接続を切るところだったようで、寸でのところで慌てて手を止める。

 

「何か御用(ごよう)ですか?」

 

といろはさっと立ち上がり、机に体重をかけ、モニターに顔を近づける。

 

「あの、私今、異様に何かしたくて......その、ここの寮って今から探検してきてもいいですか!」

 

といろは後悔した。自分の小学生のような発言に、後悔した。

 

(普通にこの寮の施設見て周っていいですか?って言えばよかった。高校生になろうものが探検はちょっと言葉が可愛らしすぎたかな)

  

しかし、素直に探検はしたい。というか最初からこの部屋を出て、寮を周って見る気は満々だった。

  

「大丈夫だと思いますよ。寮の中なら」

 

ルリはモニターの接続を切った。モニターの画面が突然真っ黒に変わる。

直後にスマホが鳴った。電話である。といろは電話に出た。

 

「私も連れてってください」

 

 スマホの中からルリの声が聞こえた。

 

 

といろとルリ(スマホ)は寮を周っていた。

 

 「やはり入学式前ですので、寮の施設はほとんど営業していませんね」 

 

といろは私服の上から、今日届いた制服のジャケットを着ている。左の胸ポケットにスマホが入っており、カメラの部分が顔を出していた。ルリとはそのカメラに写る景色を通して、ビデオ通話で会話することにした。

 

(ここは食堂か)

 

この寮は頼めば部屋まで料理を届けてくれるのだが、食堂に行って楽しくご飯を食べることもできる。といろは賑やかな食堂を想像する。今は人っ子一人いず、しんと静まり返っている。

 

といろは朝もらった館内図をポケットから出し広げる。

 

(ここから先は男女共有スペースか……)

 

自動ドアを通ると、大きなエントランスに繋がっていた。天井は透けガラスになっていて、空間がとても広く感じられる。明かりはついているが夜なのでほんのり暗い、天気のいい午前中なんかに来たら、気持ちのいい光を浴びることができそうだ。

といろは階段を上って色々な場所を周って見ることにした。

 

「さっき女子寮の方にいた時は色んな髪色の子とちらほらすれ違ったんですけど、ここは本当に誰もいませんね」

「そうですね。今は皆さんご飯食べたり、お風呂に入ったりしているんでしょうか。それに、まだ完全に全生徒が入寮にされていませんから、自ずと人が少ないのかもしれません」

 

静けさを感じながら、といろはぐるぐる見て周った。

 

「図書館も行ったし、共同スペースも行ったし、あとは……上の階のテラスか」

 

といろは館内地図を見て、道を確認する。そして角を曲がろうとした時、

 

「はっ!ストップ!ストップです!といろさん!」

「え?!」

 

ルリが叫び、といろは慌てて足を止める。

その時といろが止まった角のその向こうの角には一人の男子生徒が歩いていた。 

  

「ちょっ!ちょっと待ってー!止まってー!」


若い男性が全力で囁いた。どうやら男子生徒が持っているスマホから声が聞こえるようだ。

 

「なんでですか?」

 

 男子生徒が聞いた。

 

「ええっと……秘密!」

「え?」

「と、とりあえずさ、あそこの売店見に行こうよ!あ!こっちからのが近いかも!」

 

男子生徒は眉間に(しわ)を寄せ、首を傾けながらスマホを凝視し、引き返した。明るい茶髪がふわりとなびいた。

 

「あのー、いつまでストップしてればいいですか?」

「もう進んで大丈夫ですよ」

「どうしたんですか?急に」

「......ネタバレ防止です」

「ネタバレ防止?」

「これ以上は言えません」

 

といろは謎に思いながら、角を曲がり、階段を上る。

 

「すごい」

 

寮の共有スペースの屋上はテラスになっていて、それはもう綺麗な星の世界が広がっていた。

といろは誰もいないテラスに入り、空を見上げる。胸ポケットに入っていたスマホを取り出し、カメラを空へ向ける。

 

「ありがとうございます。綺麗ですね」

 

ルリもといろと一緒に空を見上げている。

 

これから、どんな生活が待っているのだろう。どんな出来事が起こるだろう。そんなワクワク感とドキドキ感をといろは空いっぱいに感じて、今日の幕は閉じた。

 

「ふぅー」

 

といろは自室の風呂から上がり、髪を乾かして、ベッドに入る。今日は色々あった。といろはニヤニヤとほくそ笑みながら深い眠りについた。

 

そして、といろは約1週間の寮生活を過ごした。

 

 

晴れた空に、桜が散っている。少しだけ風の強い。

入学式が待っている。といろの高校生活が始まろうとしている。

とても心地のいい日和だ。


初めまして、花時計たおる(はなどけいたおる)です。


読んでくださった方、本当ににありがとうございます。


突然ですが、皆さんは恋愛とはどんなものだと思いますか?

興味があったり、なかったり、恋愛で失敗した経験のある人や、恋愛を通して成長した人など、考えや経験は人によって様々だと思います。


この作品はそんな"恋愛"をテーマにして、戸咲といろと個性的で恋愛観の様々なキャラクターが面白楽しく高校生活を過ごしていく、そんな物語です。


読んでくださる皆さんが楽しい気持ちになれるよう日々願いを込めながら、連載していこうと思います。



〈投稿について〉

次回の投稿日は


6月15日の15:00


に投稿します。

(諸事情により投稿日を延ばす可能性があります。投稿日を延ばす場合は6月15日の15:00にその有無をお知らせいたします。よろしくお願いいたします。)



次回は!...


といろ、ついに入学式!その当日といろは驚きの課題をルリに提示されて......


第2話 ハニーミルクの妖精とフレッシュボーイズ


皆さんに素敵な出会いと幸せで溢れますように♪



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