第3話 検証
第1章 3/6 オリオンの力
遺跡任務から戻った夜。
寮の部屋で、オリオンは机に向かっていた。
ノートが開かれている。
そこにはびっしりと文字が書かれていた。
戦闘時間。
魔法発動の順序。
魔力の流れ。
オリオンはペンを止める。
「……やっぱり分からないな」
昨日の戦闘。
リシアの氷魔法が突然強くなった。
その瞬間、確かに感じた。
自分の魔力が流れ込んだ感覚。
だが、それをどう説明すればいいのか。
オリオンはため息をついた。
「共鳴、か……」
リシアが言った仮説。
魔力の同期。
他人の魔法の増幅。
もし本当なら――
「いや、ありえないだろ」
自分は攻撃魔法最低ランク。
そんな能力があるとは思えない。
だが。
ノートを閉じようとして、オリオンは手を止めた。
(もし本当だったら)
もう一度ペンを取る。
「明日、試してみるか」
小さく呟いた。
翌日。
学院の訓練場。
カインが腕を組んでいた。
「で?」
「今日は何するんだ」
オリオンはノートを見せる。
「実験」
シオンが笑う。
「急に研究者っぽいな」
リシアはノートを覗き込んだ。
「戦闘記録……」
オリオンは少し照れくさそうに言う。
「昨日の戦闘」
「共鳴の可能性」
「条件を整理してみた」
リシアは小さく頷いた。
「いい判断ね」
「仮説の検証は必要」
カインが肩をすくめる。
「で、どうやるの」
オリオンは言う。
「昨日と同じ状況を作る」
「魔法のタイミングを合わせる」
リシアが中央に立つ。
「まずは単純な氷魔法」
カインが笑う。
「俺じゃなくてリシアか」
「昨日の再現だから」
リシアは短く答えた。
魔法陣が浮かぶ。
氷の矢が生まれる。
「今」
オリオンも魔法を発動する。
光が重なる。
しかし――
氷の矢は普通の威力のままだった。
カインが肩をすくめる。
「ほらな」
シオンも笑う。
「偶然だったんじゃない?」
オリオンはノートを見る。
「タイミングは合ってた」
リシアは腕を組んだ。
「条件が足りない」
「昨日は危機状況だった」
「魔力の集中も違う」
カインが呟く。
「つまり?」
リシアは答える。
「まだ再現条件が分からない」
その時だった。
警報が鳴り響いた。
学院の塔から赤い光が上がる。
教師の声が響く。
「魔物接近!」
訓練場が騒然となる。
カインが笑った。
「実験の続きは実戦だな」
オリオンは空を見上げた。
黒い影が遠くを飛んでいる。
その瞬間。
胸の奥がざわついた。
理由は分からない。
だが確かに感じた。
何かが、近づいている。




