【16】王女めくり~さらに遊ぶ
もう一話前世から持ち込んだ遊びの話ですがお付き合いください。次epは事件が起こりますよ!
ブランシュ先生の話では五目ならべの売れ行きがたいそういいらしい。実家からの手紙で子爵領の貴族や商店主がこぞって買いに来るので製作が間に合わず、納品待ちになっているそうだ。おそらく初期需要というやつだと思うけど、売れるうちに供給が間に合わないのは痛いかな。王都からやってきた人が持って帰ったら、さらに売れるかも知れないと言っていた。
第2弾のカルタも試作品で内々に近所の子どもたちを遊ばせたところ好評で売れそうだという感触を持ったらしい。そんなものだから、ブランシュ先生の鼻息が荒く、
「アラン君、他に隠している玩具のアイデアはございませんの?」
と激しく詰め寄られた。商売のこととなると夢中になるのは商売人の血のなせる業か。僕の物づくりへの意欲と似たり寄ったりかも。
僕はこの世界で文明開化を起こして、産業革命の祖になりたいのに、このままじゃ任〇堂の創始者みたいになっちゃうよ。まあこの世界に娯楽産業を興してもいいか。こうした遊びができるというのは、世の中が平和な証だから。
そこで、自分の子ども時代を思い起こしてみて、楽しかった遊びはなんだろうと考えた。福笑いやすごろくが浮かんだけれど、大判の紙がないとどちらも作れないかな。木の板で作るにしても遊べる大きさのものは製造が大変な上にコストもかかる。
そう言えば百人一首の坊主めくりが楽しかったなと正月に従妹たちと遊んだ記憶が蘇った。前世わが家では正月に父の親戚が熱海にある叔父の別荘に集まって新年会をするのが恒例となっていた。別荘は熱海駅から車で20分位の山の途中にある別荘地だ。ベランダから右手に山が左手に海が見える。日の出日の入りは奥の山影で見えないのが残念だった。夏には湾の花火大会も見える。
大人たちはおせち料理をつつきながらお酒を飲んでいたので、子どもたちはそこでトランプや人生ゲーム、そして坊主めくりで遊んだのだ。
後々は百人一首として遊んだが、幼児の頃はもっぱら坊主めくりだった。プレイする人間が順に場の裏返しの山札をめくっていき、手元に引いてくる。ふつうの歌人ならばそのままキープ。壇に載っている高貴な方ならもう1枚。坊主がでたら手持ちの札を全部場に出す。その後で最初に姫を引いた人が場の札を全部もらう。単純だが、最後の最後に坊主が出ることもあり、そうなると大逆転が起こる。麻雀でいう海底一発というやつ。黒ひげ危機〇髪ゲーム並みにハラハラする。坊主めくりならカルタと同じ大きさの木札で作れるから、新たな製造工程は不要だ。今ある技術を生かした新商品というコンセプトにぴったりだ。
ブランシュ先生に提案してみたら、
「それは面白そうですね。でも実際に遊んでみないとわからないですわ。」
と食いついてきた。そこでカルタ用の無地の木札に絵をかいて作ることにした。坊主・姫・壇ではこの世界で通用しないから、坊主=盗賊 姫=王女様 壇=貴族に置き換えて各5枚、残りの35枚は平民でカードを作った。坊主を僧侶にしなかったのは、なんとなく損な役回りを僧侶とするのは、この世界的にどうなのかわからなかったからだ。役札の割合は百人一首では姫が坊主の2倍くらいなのだが、同じにしてみた。プレイして調節すればいいだろう。
「アラン様、絵がお上手ですね。賢いうえに絵心があるなんてうらやましいです。」
と先生。
「いや素人仕事ですよ。商品化にあたってはプロに描いてもらってくださいね。」
「味があってこれも捨てがたいですけど、わかりました。」
前世では勉強しながらコミックも読んでキャラクターの模写をしたこともあるので、それなりではある。先生はほめすぎだと思うが。
さて、ブランシュ先生とクリステルにコレットも加えて4人で遊んでみた。
「待って、貴族だからもう1枚引きます。」
「あちゃー盗賊だ~。」
「王女様だから全部もらいます。」
などとワイワイいいながら遊んだ。みんなの感想は
「面白い!」
と同時にハモった。やっぱり坊主が出るまでのドキドキ感がいいらしい。またしばらくわが男爵家で流行りそう。
このゲームの呼び名だが、坊主めくりにちなんで盗賊めくりとしたら、
「それは品がよくありませんわ。王女めくりにしましょう!」
とブランシュ先生に決められてしまった。そうですか、そうですね、僕にはセンスがありませんよ。
次のエピソードではアランの身に事件が降りかかります。ちゃんと対処できるのでしょうか?
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つい3日ぐらい前から雨野六月様の『「彼を殺して私も死ぬわ!」と叫んだ瞬間、前世を思い出しました ~あれ、こんな人どうでも良くない?~』 を読み始めてはまってしまいました。ストーリー展開が早くて先が気になります。




