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異世界転生2257  作者: 自彊 やまず
第一章 少年編
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第十四話 少年期の終わりに

 刺客は真っ先に、フード男の方へと狙いを定めた。

 飛び上がって両手の剣を振り下ろす。


 男は片手斧でそれを受けた。

 それと同時に響く、金属の噛み合う鈍い衝撃。


 アダムと呼ばれる男の腕を震わせた。


「――ッ!!」


 刺客はそのまま着地せず、空中で体を捻った。

 反動を利用し、アダムの頭上を越えるように跳ぶ。


 今度は初老の男が懐から銃を出した。

 3発の弾丸を女へと打ち込むが、ことごとく躱される。


 鍛錬された吸血族ともなれば、弾丸を避けることなど容易い。

 刺客はまるで舞うようにして銃弾を避けた。


「吸血族さんは弾も避けれんのかね」


 女は今度、初老の男の方へ狙いを定め、左手の剣を投擲してきた。

 咄嗟に男が身を仰け反らせて躱す――が、右肩を深く切られてしまった。


「グッ……!」


 コートに血が滲み始める。


 女はチャンスを逃さず追撃を掛けた。

 そのまま初老の男まで距離を詰めるが、横からアダムが斧を振り下ろしてきた。


 女はそれを避け、そこへハイキックをくらわす。


 ハイキックを受けた彼はその威力に腕が軋むが、何とか跳ね返す。


「この怪力女ァ!!」


 アダムは間を置かず、再び女へと斧を振るった。


 刃が走り、スカートが音を立てて裂ける。

 同時に、雪のように白い脚にも、確かに傷が――赤い裂け目ができたはずだった。


――だが。


 ほんの一瞬、視線を外したその隙だった。

 そこにあるべき血も、傷も、何もかもが消えた。


 まるで――最初から、斬られてなどいなかったかのように。


 女はニヤリと笑ってフード男を見ると、初老の男へもう一本の剣を投げ自身はアダムへと狙いを定める。


 初老の男は右肩を抑えて壁へもたれかかっているところ、もう一つの剣が飛んでくる。


 そのままずるずるとしゃがんで剣を避けた。

 銃を撃ち返す余裕もない。


 吸血族は壁を2、3歩上向きに蹴り、高く飛び上がって上空からアダムの頭にかかとを振り下ろす。

 これがまともに人間の体に当たれば、勿論体は真っ二つになるだろう。


 しかし彼は冷静だった。

 アダムはすぐさま斧をその場に捨てると、懐からピストルを出し、動じずに女の眉間へ銃口を向ける。


「じゃぁ、どっちが先に避けるかチキンレースといこう」


 刹那、刺客は悟った。


――照準の先は、自分の額。


 空中では退路がない、逃げられない。

 逃げ場のない標的を撃ち抜くなど、あまりにも簡単で、あまりにも確実。


 狙う先は、宙に晒された刺客。


 相打ちか。

 それとも、賭けに出て逃げるか。


――だが、考える余裕などなかった。


 空中で身を翻すことも叶わず、女は反射的に壁へ手を伸ばす。


 指先が石に触れる、その刹那――すでに、引き金は引かれていた。


「あばよ……チキンレースは俺の勝ちだぜ……」



♢



「これから二年だ。君たちには、死体の処理から裏金の資金洗浄まで――あらゆる“汚れ仕事”に手を染めてもらう」


 顔を黒い布で覆った男は、感情のない声でそう言い放った。


「はい。すべては、吸血族の皆様のために」


 クリスは即座に答え、吸血族の前で片膝をつく。

 ロランも一拍遅れて彼の隣に膝をつき、同じく忠誠を示した。


 勿論、心からの服従ではない。

 昨夜二人は事前に打ち合わせていた。




「これからの二年は、修行だ。ゼリクに近づくための下積みだぞ、ロラン」


「分かってる。できるだけ人を助けて、悪を抑えて、それでいて……組織のお気に入りにもなる」


 腕を組んでロランが言うと、クリスが肩をすくめる。


「難しいなァ。でも――」


 クリスの口角が上がる。


「ゴールが見えたのはクソでかいぜ」




 それから二人は、鍛錬に明け暮れる日々を送った。


 朝焼けの丘で木剣を振り、夕暮れの川辺で息を切らす。

 夜は仕事をこなし、昼になれば二人で技を鍛える。


 雨の日も、雪の日も、ただ黙って拳を振るい続けた。


 気づけば、季節は何度も巡っていた。

 少年だった二人の背は伸び、手には硬いタコができる。



♢



――そして、二年が経った。


 十六になった二人は、声こそ少し低くなったが――まだ少年の面影が残っている。

 それでも、ゼリクへの復讐を胸に鍛え上げた身体は、そこらの大人を軽くいなすほどに強靭になっていた。


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