第9話 激闘
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名 称:オーク・ジェネラル
タイプ:ユニット
種 族:オーク
属 性:火
レベル:-
ランク:5
コスト:5
攻撃力:5
防御力:4
魔法力:2
スキル:【剣術】レベル1
特殊能力:暴虐なる進軍 (対象:自軍パーティのユニットすべて)
・このユニットが戦場に存在する場合、常時発動する。
対象が【種族:オーク】の場合、
【攻撃力:+2】【速攻:+2】を付与する。
装備品:鋼鉄の大剣
レアリティ:SR
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柊さんが教えてくれた上位種オークことオーク・ジェネラルの能力がヤバい。
単純な戦闘能力なら篁さんの方が上っぽいけど、オーク限定とはいえパーティを強化する能力がヤバいし、自身もオークだから自己バフにもなるよね、これ。篁さんの【体術】スキルがどれくらいの効果があるのか不明な点を差し引いて考えても、ジェネラルの攻撃力『5+2=7』は猛烈に嫌な予感がする。
あと、【速攻:+2】って何?
ステータスに素早さ関連の表記なんてどこにも見当たらないぞ。
あれこれ考えているうちにジェネラルが突っ込んできて、その手に持った大剣を篁さんに叩きつけてきた。
風切り音が重い!
でも、当たっては――いない。
当たってはいないけれど、後ろから見ていると冷や冷やさせられる。
向かい合っている篁さんは剣を構えたまま慎重に間合いを取って――切り込んだ!
篁さんの斬撃をジェネラルは剣で受けた。一撃、二撃……両者の剣が何度となく打ち合わされて、耳障りな金属音が響く。火花が散る。
どっちも凄く強い。護道くんもこぶしを握り締めたまま動けない。とてもじゃないけど割り込めない。
――篁さん……
一発かすったら致命傷だろ、あれ。
治癒魔法のカードはあるけど、致命傷には効果ない。
離れて見ているだけで心臓が持たないのに、実際に相対している彼女の心境はいかに。
マンガでもアニメでもゲームでもない、これは現実で命懸けの戦いなのだと否応なく思い知らされる。
……なんて暢気に見惚れていられる状況じゃない。
ジェネラルが引き連れてきたオークは篁さんを無視してこちらに突っ込んできた。3匹。
「させるかよッ!」
護道くんが殴り掛かったけれど、さっきまでとは違って分が悪そう。ジェネラルのバフが効いているんだ。柊さんは残りの2匹に錬金爆弾を投げて――これも当たらない。
豚のクセに動きが鋭い。
あ、これが【速攻:+2】の効果か。
――どうする、どうする?
どうするもこうするもない。
僕は……バインダーを開いてカード購入をタップした。
僕にできることは、これしかない。
「強いカード、この状況をひっくり返せるカードは……」
カードは『ユニット』『魔法』『アイテム』『地形』の四種類。まだ引いていないのは地形だけど、カードゲーム準拠で考えるなら一発逆転的な効果は期待できない。
――ユニットか、魔法だ!
猫パンチを食らいながら選んだのは――魔法!
リュンクスを戻せばコストは4まで使える。でも……ジェネラルのコストは5だ。アイツを倒せるユニットを都合よく引いてくる可能性は低いと判断した。瞬間火力はきっと魔法の方が強い、はず。
なにか凄いカード、来い!
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名 称:瘴気の沼
タイプ:地形
ランク:3
コスト:0
効 果:瘴気の沼(対象:この地形のプレイヤー)
・闇属性のマナを1つ付与する。
レアリティ:R
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「なんでだよぉお!?」
地形?
なんで地形?
要らないって言ったじゃんんんん!?
あ、そうか。ピックアップだから確定じゃないのか。
なるほどなるほど、ひとつ勉強になった……じゃないよ! タイミングがカス!
「桧川!」
「クソッ、コスト0なら使い得だろ! 『瘴気の沼』起動!」
声とともにカードが輝きを放ち、僕の足元を中心にドス黒い沼が広がっていく。想像していたよりも広い。
教室一部屋分ぐらい?
いや、それどころじゃないぞ!
バスケットボールぐらいの漆黒の球体が沼から飛び出して、僕のまわりをフワフワと漂い始めた。闇属性のマナだ。使い道は【万象の書】の説明テキストにあった。 闇属性のカードを起動する際のコストになる。僕が持っている闇属性のカードと言えばエナジー・ボルトが2枚とゴブリンたちだ。ゴブリンを起動しても状況は好転しない。
――魔法で篁さんを援護するか?
ジェネラルを倒せばバフが切れる。
バフが切れればオークは護道くんが倒してくれる。
エナジー・ボルトではダメージが足りないだろうけど、篁さんが切り込む隙を作れれば……そう思って顔を上げた僕が目にしたのは予想外の光景だった。
「うおっ!?」
「む……これは……」
「ちょっと桧川、これ……何?」
三人とも沼に足を取られて動きにくそうにしている。
他人事じゃない。僕までずぶずぶと沈んでいる真っ最中だ。
――思ってたより本格的な地形ですね(白目)
単にマナが増えるだけじゃないのね……って、味方をデバフしてどーすんだとセルフツッコミしかけたが、オークの方はそれどころじゃなかった。沼は戦場全体を飲み込んでいた。雑魚オークは足を取られてズッコケてるし、ジェネラルの動きも目に見えて鈍っている。
おお、コスト0で足止めは美味しい――足止め?
「そうか、動きを止めたらいいんだ。『魔法のロープ』起動!」
あらかじめ引いていたアイテムカードを起動すると、光とともに出現したロープがジェネラルに絡みついて身体を拘束していく。
ジェネラルの鼻息が大気を震わせる。
牙が覗く口から咆哮が、唾がまき散らされる。
盛り上がった筋肉がギシギシとロープを軋ませる。嫌な音だ。
――引きちぎられたりしないよね、これ。
ルール上は大丈夫のはず。
でも、テキストと実際の効果に微妙にズレが見受けられるのが……
固唾をのんで見守る僕の前で、ロープとジェネラルの攻防は――ロープに軍配が上がった。ジェネラルが大剣を取り落として膝をつく。
「どうだ! 私の仲間は頼りになるだろう!」
篁さんのロングソードが一閃。ジェネラルの首が宙を舞う。
バフを失ったオークは護道くんと柊さんにあっけなく始末された。
あたり一帯が静けさを取り戻した。追いかけてくるオークはいないし、生徒たちも逃げ切れたっぽい。
「……後続は、来ないな」
「はぁ、乗り切った……死ぬかと思った」
「いきなり沼が出てきたときは焦ったが、助かったぜ」
沼をカードに戻すと、柊さんはガックリと膝をついた。
極度の緊張感と疲労で限界が来たらしい。
僕もそろそろヤバい。
でも、ここで座り込むのは良くない。
オークは退けたけど、どこから新手が来るかわかったもんじゃないからね。
「お疲れさま。とりあえず……僕らも体育館に行こうよ」
ここまでが第1章となります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
キャラクター紹介を挟んで第2章に進みます。
これからも、よろしくお願いいたします。




