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黒豹王の物語 ◇第一部~序章~◇  作者: 種広交明
はじまり

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24/24

#024「国葬~世界の意志~」



何事もなく進行していたはずの国葬。


しかし・・・


そこに・・・


アリスが言った“くせもの”とおぼしき影が・・・



■ ■ ■ ■ ■



???「しっかしすっげーな!

 この国の国葬はよ!

 さすがはあのレイブンだよな!」


???「感心してないでよ~~く見張るんだよ!」


???「分かってるよ。

 ん? あの馬車の中・・・

 国王以外の人間はよく見えねーな・・・」


???「構いやしないよ。

 国王の顔さえ見えてれば

 遠距離から()()なんだからね!」


???「しかしよ、

 俺らはレイブンの全盛期なんて知らない世代だけどよ、

 先輩方は『奴は殺しても死なないような男だ』

 な~んて言ってたぜ?

 それがなんで急にぽっくり逝っちまったのさ?」


???「知らないね。

 老衰じゃないのかい?

 英雄でも歳には勝てないのさ。」


???「にしても陛下もよ、

 酷なこと言うよな~。

 『親父の国葬で自分も一緒に逝ければ本望だろ?』

 な~んてさ!

 陛下がレイブンを憎んでるのは知ってるけどよ・・・

 いくらなんでもやり過ぎじゃねえのか?」


???「あんた!!

 まさか陛下に異を唱えるつもりじゃないだろうね!」


???「いやはや滅相もござーーせん。

 わたくしは陛下の忠実なお犬でございますゆえ。」


???「ちっ!

 まっっっっったく信用ならない人間だよ!

 あんたは!」


???「ん?」



その時!!


馬車の中で・・・


アモン「ん?」


レイン「ん?

 アモン副団長殿、どうされた?」


アモン「やな視線を感じる・・・」


アモンの表情が急に険しくなった。


レイン「視線?」


アモン「気のせいかもしれないけどさ、

 なんかあってからじゃ遅いからね・・・。


 ちっ!

 うっとうしいな!

 せっかく楽しんでたのにさ!」


アモンの口調と声色が急変し、

他の3人にも

“闇アモン”になったことがはっきりと分かった。


アリス「ア、アモン様!

 まさか・・・」


王「“くせもの”・・・

 なのか!?

 アモン!!」


アモンはドアにかかっている鍵を開けた。


アモン「レイン!」


レイン「はいっ!」


もはや風格と威厳さえ漂わせる

『闇アモン様』に名を呼ばれ、

背筋が伸びた。


アモン「ほんの少しだけ離れるけど、

 その間陛下を頼んだよ!」


レイン「分かりました!

 副団長殿!」


黒豹王の加護はどこへやら?

思わず敬語になってしまうレイン。


そして闇アモンになると、

いつも『王様』と呼んでいたのが『陛下』と、

呼び方まで変わった。


アリス「アモン様、お気を付けて!」


王「アモン!

 あまり深追いはするな。」


アモンは軽くうなずくと・・・


アモン「ふっ!」



アモンが馬車の扉を開けて飛び出すまで一瞬だった。


常人では、

外から見ていても気付かないほどだったのは

間違いない。


しかし・・・



???「おいっ!!!」


???「なんだい急に! びっくりするだろ!」


???「あれはやべえ・・・

 逃げるぞ!!」


その“くせもの”は馬車から

自分たちに【死】をもたらしかねない

恐ろしい何かが飛び出てくるのを

視認していた!


そういう意味では、

このくせ者もただものではないのかもしれなかった。


これまた、

くせ者もアモンに負けず

常軌を逸した速さで

猛然と逃亡した!


???「おい待て!!

 逃げちまうのかい!?

 任務はどうするんだい!!」


???「言ってられっかー!!

 死んだり捕まったりしたら元も子もねーだろ!!

 とりあえずエイブンが『やべー護衛』を付けていることが

 分かっただけでも収穫だ!」


???「くっそー!

 これは陛下にどやされるぞー!」



一方・・・



アモン「ふっ!


 ・・・


 ・・・


 ん?


 っかしいなぁ・・・。


 確かにこの辺りだったんだけど・・・。


 どこにもいない。


 さっきまでの視線も消えた?」


アモンは周りをキョロキョロと見回した。

目星をつけていた場所に急行したが、

そこにくせ者らしき姿が見当たらない。


アモン「う~~~ん・・・」


頭をポリポリかきながら

首をひねる。


アモン「ま、いっか。

 思いちがい

 思いちがいーー」



一方、

馬車の中では・・・


レイン「それにしても・・・

 まるでアモン殿が二人いるかのようだ。」


王「うむ。

 普段のアモンならば不安になる気もするが、

 あのようにいわば『変身』してしまうと、

 これほど頼もしい戦士もおらぬ。

 まこと不思議な子よ・・・。」


アリス「やっぱり・・・

 あのアモン様はかっこよいですね。」


エイブン王に対しては

『いざとなれば黒豹王の力が発動する』

とは言ったものの・・・

アモンがいない今、

本当に守り切れるのか不安は尽きない。


国王の馬車の周りには

精鋭ぞろいの兵士がいて、

ケイラスはレイブン像に近い位置で

それほど遠くない距離にいる。


いくらなんでも、

この一団の中に飛び込んでくる

刺客がいるなら、

敵ながら

相当な度胸と言わざるを得ない。


となれば・・・

最大の懸念は遠距離からの攻撃である。


レイン「陛下。

 このような状況では

 窓から手を振るのは危険では?」


王「分かっておる。

 しかし、やらぬわけにはいかん。」


エイブン王にとっては、

自分の父親であり、

国の英雄の国葬であるからには、

民衆の声援に応える使命があった。

しかし、

そのためには

窓に顔を出さざるを得なかった。


王「だからこそのアモンよ。

 アモンが感じ取った視線が

 杞憂であればよいがの・・・」



すると・・・


コンコン


鍵は内側からしか解除できない

馬車の扉を叩く音がした。


見ると、

そこにいつの間にか帰還したアモンがいる!


アリスが鍵を解除してアモンを迎え入れた。


アリス「アモン様、お帰りなさいませ。」


アモン「うん。」


アモンは通常営業に戻っていた。


レイン「無事で良かった。」


王「ご苦労だった、アモン。」


アモン「うーーん・・・

 もしかしたら気のせいだったかも?」


王「そうか。

 それならばそれでよい。」



この世界そのものが

コルニール王国を存続させようとする

意志でも持っているのだろうか?


この小国を揺るがすような事態が差し迫ると必ず、

まるであらかじめ用意されていたかのように、

飛び抜けた人物が現れる。


国が滅亡へ向かう未来を

力で無理矢理ねじ曲げてしまうような

超人的な存在。


この度・・・またしても、

コルニールという小国は

一人の英傑により救われた。


その英傑は一人の少女・・・

名を『アモン』。


国葬中に、

国王の馬車の中が凍りつくような空気に包まれ

肝を冷やした時間が存在したことを知るのは、

ごく限られた人間のみだった。


アモンはケイラスから託された役目を見事に果たしてみせたが、

本人は気のせいだと思い、

その報告を受けた人間もまた

気のせいだったのだろうと思った。


しかし実際は、気のせいなどではなかったのである。


そのことを知る者・・・


この国葬が悲劇に変わっていた

可能性を知る者も・・・

ごく限られていた。



くせ者が言うところの『やべー護衛』の判断により

難を逃れた一行は

その後、

何事もなく

国葬という一大行事を楽しみ、

各々の目と心に焼き付けた。


そして・・・

“我が家”である王城に帰還した。



レグス「ひょうへん。」


王「ふ~~。

 いっときはどうなることかと思ったが。

 無事に終えられたな。」


アモン「アモン様のおかげなのだ!

 感謝するのだ!」


レグス「うむ。

 素晴らしい仕事を見せてもらった。

 さすがは副団長殿だ。」


アリス「ありがとうございます。

 アモン様。」


と、

王城に着いた一行が馬車から降りると

ケイラスが駆け寄ってきた。


ケイラス「へ、陛下ーーー!」


王「どうした?

 そんなに慌てて。」


ケイラス「いや、

 自分は心配で心配で。

 全く・・・

 せっかくの国葬なのに気が気じゃありませんでした。

 ちょくちょく後ろを気にしてはいましたが・・・。

 それでアモンの仕事ぶりは?」


王「うむ。

 全く問題ない。」


ケイラス「そうでしたか。」


アモン「な~~んか途中さ・・・

 嫌な視線感じた気がして

 見に行ったんだけど・・・

 気のせいだったかも?」


ケイラス「!!!!」


ケイラスの表情が急に険しくなった。


王「ん? どうしたケイラス。」


ケイラス「・・・いや、なんでもございません。」


ケイラスはアモンを高く買っている。

アモンの特異な能力の一つが

もはや動物的とも言える

『野性の勘』である。


戦闘における勘は、

実践を積み重ねれば

ある程度のレベルまでは到達できる。


しかしながら、

アモンの異常なまでの危機察知能力は、

人が努力を積み重ねて得られる範疇には無い物だった。


そのアモンが察知した嫌な気配が

本当に気のせいだった・・・とは、

とてもケイラスには思えなかった。


更に、

アモンが自ら見に行ったのに

そこに何の痕跡もなく、

影も形もなく消えていた・・・

ということは、

アモンの動きに気付いただけでなく、

その強さを瞬時に見極めて、

任務を放棄してでも逃走を即断した

『凄腕』

ということになる。


・・・というのは憶測に過ぎないことは、

ケイラスも重々承知しているが、

王の警護が最優先任務である以上、

最悪のケースを考えるのは

もはや癖のようになってしまっていた。


その最悪のケースが、

アモンのおかげで阻止されたのかもしれない。

アモンを褒めるとすぐ調子に乗るため、

あまり気が進まなかったが、

今回ばかりは褒めることにした。


ケイラス「おっ、おほん。

 よくやってくれた、アモン。」


とアモンの肩をたたいた。


アモン「ふむふむ。

 ケイラス君も私に感謝しなさい。」


いつもなら「この馬鹿」と言って、

頭を小突くところだが、

この日ばかりは違った。


ケイラス「ああ。

 感謝するよ副団長殿。

 よく陛下をお守りしてくれた。」


このケイラスの反応に

逆にアモンがびっくりした!


アモン「あ、あら?

 どしたのケイラス様?

 具合悪い?」


ケイラス「お、お前という奴は・・・

 褒め言葉も受け取れんのか?

 この馬鹿!」


アモン「あいたっ!」


やっぱり小突くことにした。


レグス「うむ。

 二人とも息ぴったりで

 仲がよいのだな。

 まるで兄妹きょうだいのようだ。」


ケイラス「よして下さいレグス殿。」


アモン「きょうだい?

 それならば私が姉で、

 ケイラス君は弟なのだ!」


ケイラス「くっ!

 アモン!

 調子に乗り過ぎだぞ!


 これだから褒めたくなかったんだ。」


アモン「やだなー。

 ケイラス様すぐむきになるんだから。」


アリス「アモン様!

 今後は目上の方への礼儀についても

 厳しくしつけさせて頂きますよ!」


アモン「うっ!

 ご、ごめんなさい。」


なぜかアリスにだけは

頭が上がらないアモンであった・・・。





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