晩餐 七
山が動いた。
言葉にすればそれだけで、目の前の光景はそれ以外の言いようがなかった。
というか問答無用でそれだけを三太の頭の中に叩き込んできた。巨大な軍艦、巨大な化物。どれもこれまで三太が想像も出来なかった存在だったが、今、目の前にあるものはそれを容易く超えてきた。
それも、複数。というか視界に映るものは全て。
「すげえな。山っつーか島だな、ありゃ。あそこまで堂々と歩かれりゃ白昼夢でも見たなんてとても言えねえなぁ」
文七はにやにやとした笑みを浮かべている。血が湧き立っているのか、普段見せる穏やかなそれはとはまるで違っていた。何がそんなに楽しいのか三太にはまるで共感出来そうなかった。
「信じられない。本当に実在したとは…」
「え?」
見れば、なぜか使用人が言葉通りの表情を浮かべていた。
身を乗り出しすぎて斜面から転がり落ちそうなほど興奮している。その反応が三太には意外だった。なぜなら、
「なんで、というか、そもそも知らなかったんですか?」
「知ってはいました。けれど、その存在が在るとは考えたこともありませんでした。あれは私が知る限り伝承の中にしかあり得ない存在だったんです」
三太の疑問に使用人は一切視線を向けることなく答えた。
伝承の中にしかあり得ない存在。
言葉の意味はわかる。つまり、あれはこの世界の住人から見ても珍しい存在だということなんだろうか。
「通りで地図が定期的に書き換わるわけね。あのバカ親父が暴れたせいだと思ってたけど、それだけじゃなかったわけだ。ここまで馬鹿みたいなことが起きてるとは思わなかったけれど」
もう一人のこの世界を知る人間は冷静な言葉をこぼした。
市村ヨネ。
彼女は目の前の光景を冷静に見つめながら、呆れ果てているように見えた。
「それで? 燃やせばいいんですか?」
「やめろ」
三太は反射的に突っ込んだ。
瀬菜が澄ました顔で全身に炎を纏っている。明らかな臨戦体制。燃やしがいのある存在を前に完全にその気になっている。この間は否定したが、どうやら三太の方が間違っていたようだ。
【おい。流石に全部は無理だぞ】
ヨシツネが言った。
どうやら能力で動きを止めることに対する意見らしい。あの空から降る無数の軍艦全てに対して能力を駆使した彼女であっても目の前の存在は規格外らしい。
どうでもいいが、どうして彼女らは即座に臨戦体制になるんだろうか。いくらなんでも物騒すぎる。
「獲物は決まってる。でも、お前さんらの出番はまだ先だ」
文七はそう言って、なぜか三太を見た。
「初っ端はお前さんだ、三太」
なんで?
三太は驚きすぎて言葉を失うしかなかった。
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