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第6話 現実

『ログイン/ログアウト』をタップすると同時に目前の景色が、塗装の剝がれる様にしてリアルの光景に様変わりする。


 先程まで枯れた樹木だった物は現実では街灯になっている。

 ふむ、複合現実とは良く言ったものだな、と顎に手を当てて考える。


 そして


「これがサバス...」


 ぐるりと辺りを見渡す。

 優男の言っていた通り、この世界は日本に似ている。

 ファンタジー小説で目にする中世ヨーロッパの街並み...はGEFがその通りで、現実は高層ビルや電気自動車など、地球でも目にすることのあった物が実在しているし、地図も俺の知る範囲では地球と変わり無い。

 確かに、全く知らない世界よりかは幾分"生活しやすい"だろう。


 それはそうと...


「ログアウトしたは良いが、この世界に俺の住む家があるのか?」


 この世界に友達の一人でも居れば、泊まらせてもらえたかもしれないが、この世界には一人も友達と呼べる人間は居ない。

 それに俺は現在無一文だ。宿泊施設には泊まれない。


 どうしたものか...


 俺が悩んでいると、毎度の如くDBが震えた。


「何なに? ...DBとDGだけ起動させて、マップを見て。それで『響谷研究所』と言う施設を探して訪ねろ?」


 俺はメッセージを読むのと同時にDBとDGを起動させてGEF内でしたのと同じようにしてマップを展開する。

 そして『施設名検索』をタップして響谷研究所と入力する。

 すると"検索結果は一件です。案内を開始しますか?"と表示されたので適当に頷く。


 DGに映っていた画面が一瞬にして切り替わり、大きく展開していた3Dマップが小さな平面マップとなり視界の左上に移動する。と同時に現実の景色の上に赤いラインが現れる。

 このラインをたどって行くと研究所に到着するのだろう。

 俺は近未来的なナビゲーションに心を躍らせ、研究所を目指した。


 ◆◇◆◇


「ここが響谷研究所...」


 と意味深に呟いたが、ここは街中の雑居ビルの前だ。

 俺はフロアごとの施設名を確認する。響谷研究所は最上階である五階にあるみたいだ。


 俺は自動ドアをくぐり、エレベーターに乗る。雑居ビルのエレベーターと言っても中々の広さがある。

 俺はエレベーターが上へ上へ上がって行く感覚を懐かしむ。


 目的階に到着したことを告げる「ポン」と言う音がしてドアが開く。

 俺はエレベーターから一歩踏み出す。


 そして目に飛び込んできた『響谷研究所』の文字。


 "目的地に到着しました。これにてナビゲートを終了します"


 DGはそう告げると、元の透き通った伊達メガネに戻った。


「よし、行くか...」


 あの優男の紹介だからきっと研究所長も優しい筈だ、と高を括り響谷研究所のインターフォンを鳴らした。

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