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水晶物語 ~運命の継承者~  作者: 御門屋運命
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第六章『運命の命じるままに』

    第六章『運命の命じるままに』


 カラト村。

 人口約三百人程度の小さな村。周囲は山に囲まれこれと言って娯楽のようなものは何一つ無く、施設は必要最低限の施設のみ。ただ人と自然が共にあるだけだった。

「(首都レブルスと比べる方がおかしいというものか)」

 カラト村に足を踏み入れたウィルはそんな景色を見て心の中でそう思う。

 何故レブルスと比較しようなどと考えたのかは自分でも解らないが、不思議とこの村に踏み入れた時にそう頭に浮かんだのだ。

「隊長」

 そんなウィルの下にデイズが姿を現す。

「どうだった?」

「はい、情報通り元宮廷呪法師のギガ・カストゥール殿がこの村に住まれているそうです」

「そうか、場所は解るか?」

「はい、確認済みです」

 その答えを聞き、ウィルはデイズと共にギガ・カストゥールの住まいへと向かう。



 扉の向こうから話し声が聞こえてくる。

 どうやら在宅しているようだ。その事を確認した上で

 コンコン……

 ギガ・カストゥールの住まいの扉を軽く叩く。

 ガチャ……

 程なくしてその扉が開かれた。そこにはウィルよりもやや背の低い、良く言えば思慮深く、悪く言えば思考の読めない中年男性が立っていた。

「おじさん、俺の質問に答え……」

 そんな男性に話し掛ける少年と視線が合う。

 空を思わせる青い髪に深く鮮やかな海の色の瞳の少年だった。少年は来客者である自分の邪魔をしないためか、言葉を止め一礼して再び奥へ戻っていってしまう。

「突然の訪問失礼致します。ギガ・カストゥール殿はご在宅でしょうか?」

「ええ、私がそのギガ・カストゥールです」

 そうではないかとの予想をしていたが、どうやら目の前の人物が件の元宮廷呪法師ギガ・カストゥールその人であるようだ。

「失礼しました。自分は……」

 ウィルは敬礼しながら自身の身分を明かそうとするが

「レブルス国の騎士団長ウィル・ワームズさん……ですね」

 ギガの言葉に驚きの表情を見せるウィル。

「……流石は、宮廷呪法師の肩書きは伊達ではありませんな。私の事をご存知でしたか」

 一瞬の驚きを見せたが、ウィルはすぐにその態度を改め礼儀正しい騎士の態度に戻る。

「ええ、ざっと二十年程前から貴方が来るのを待ち続けていました」

「面白いご冗談を言われる」

 元宮廷呪法師ギガ・カストゥールが変わり者だと言う話は聞いていたため、それを冗談だと受け止めるウィル。

「どうやら来客中にお邪魔してしまったようですが、我々の要件も急を要する事、失礼は承知しておりますが幾つか質問にお答え頂けませんか?」

「ええ、いいですよ。どうぞ」

「今日の午前中に空を裂く青い光をご覧になられましたか?」

「話は聞きましたが私は直接見ていません」

「調査の結果、その光がこの先の山々から発生したようでして、この先に怪しい場所、遺跡等がございましたら場所をお教え頂けませんでしょうか」

「遺跡が一つあります。えーっと、地図は持っていますか? 口で説明するのは難しいので」

「はい、ここに……」

 そう答え、ウィルはこの近辺の地形が描かれた地図を取り出す。

 ギガはそれを受け取ると山々の間に文字を記載していき、その地図をウィルに返す。

「ご協力感謝します。本来であれば正式な書状でお応えしたい所ですが、今は調査を優先したく、後日必ず礼をさせて頂きます。ご無礼をお許しください」

「いえいえ、気にしないでください」

 ウィルはギガのその返事を聞くと深く頭を下げ、ギガの住まいを後にする。



「隊長」

 大勢で押し掛けては迷惑だろうと、離れた場所で待機していたデイズがウィルの下へ駆け寄る。

「如何でしたか?」

「快く協力して頂き目的地もこの通りご教授して貰った。すぐに出発するぞ」

「はっ!!」

 デイズと共に隊へと戻ろうとする途中で

「(それにしてもあの少年、どこかで会った事があるような気がするのだが……)」

 ふと、ギガの家に居た少年の事を思い出す。

 ウィルの決して記憶力は悪くない。寧ろ彼はどんな些細な事でも記憶に留めて置くほどの記憶力の持ち主だ。

 先程の青い髪の少年、あれ程の特徴がある人物をそうそう忘れるはずなど無いのだが、不思議とウィルはその少年との接点を思い出せないでいた。

「隊長、どうかなさいましたか?」

「いや、何でもない。急ぐぞ」

「はっ!!」

 今重要なのは御霊の捜索だ。思い出せない事に気を取られていても仕方が無い。

 そう思い、思考を切り替えるウィルだったが、それが彼の意思とは違う所で働き掛けるある力のためだと気付くのはこれよりずっと後の事となる。



 ギガに教えて貰った地図によれば、カラト村より西に数キロ、布土の森と呼ばれる森を進み、水晶山と呼ばれる山の麓に今は使われていない神殿があるとの事だった。

 騎士達が山に足を踏み入れ進む事三十分、確かに神殿は存在していた。

「情報通りだな」

「流石は噂に名高いギガ・カストゥール殿ですね。ほぼ位置に狂いはありません」

 ウィルの言葉にデイズは地図を開きながらそう述べる。

「馬車はここまでだな」

「石畳の道が使えただけでも幸運ですよ。でなければ背負って運ぶ事になっていたでしょう」

「ああ……」

 今は使われていない神殿と言う話だったが、どうやら相当大きな神殿であるらしく、道中で使用した今でも使える石畳の質から考えてもその見解は間違っていないだろう。

「だが、この先は手作業だ。荷を下ろせ、内部を探索するぞ」

『はっ!!』

 神殿内部の探索はウィルとデイズを含めた六人編成で行い。後の面々は馬車と荷を見張る留守番役となった。

 神殿に足を踏み入れ、奥へと進む探索メンバー達。すると

「隊長、奥に通路があります」

 騎士の一人が奥へと続く通路を発見する。

「この奥に遺跡があるのか……」

 ギガが地図に書き記した内容はそこで終わっていた。

「行くぞ」

 通路を進むこと約十分。

「これは……」

 通路の材質が途中を境に鉄へと変わる。

「間違いありません。施設級の遺跡です」

「電源もまだ生きているようです。見たところ劣化も少ないかと」

 その通路を調べるように騎士達は壁や天井を見渡す。

 過去に何度かこの手の遺跡を発掘した経験があるのだろうか、通路の鉄の壁を見ても彼等は特に驚いた様子を見せなかった。

「隊長、可能性が出てきましたね」

「ああ」

 そう答えるウィルの表情にも若干の希望や期待の色が浮かび始めていた。

 騎士達が更に奥に進むと、やがて通路は大きな鉄の壁に阻まれてしまう。

「行き止まりか?」

「いいえ、どうやら隔壁が降りているようです。お待ちください、すぐにロックを解除します」

 騎士の一人が何かの道具を壁に開いている穴へと差し込み操作をし始める。

 すると

 バシュゥ……

 隔壁は静かな音を立てながら開いていく。

 いよいよ核心に迫る事が出来る。騎士達は期待しながらその先の光景を待つが

『っ!?』

 隔壁の向こうの光景、広場を見て皆絶句する。

 先程までの通路とは打って変わって荒れた光景が待っていたからだ。いや、荒れていると言うのは少々言葉が悪い。何かがあった後と表現した方が正しいだろう。

 何かの爆発が起こったであろう跡がある床、床に巻き散らかされた金属やガラスの破片、切断された何かの下半身と思われる物体。そして、鉄の壁に空いた大きな穴。

 それらの痕跡がまだ新しい事は見て読み取れた。

「広場を調査するぞ。何でもいい、情報を集めるのだ」

『はっ!!』

 数分後。

「隊長」

「何か解ったか?」

「はい、データベースが生きおり、そこからある程度の情報が引き出せました。当初の予測通り、この施設は御霊の保管を目的とした施設であったようです」

「御霊は?」

「あのカプセルに保管されていたようですが……」

 デイズの視線の先には粉々に砕かれたガラスの蓋の箱、カプセルがあった。

 その中身は無く、周囲にはガラス片とまだ乾ききっていない液体が散乱している。

 何があったのかはまだ解らないが、ここに御霊が保管されており、その御霊がすでに存在せず一足遅かった事だけは解った。

「……そうか」

 落胆の色は隠せない。

「あの切断された下半身はどうやら拠点防衛用のガーゴイルの物と思われます。施設内部でエラーが発生し、その対処のためガーゴイルが起動したところまでの記録が残っていました」

「ガーゴイルをあそこまで見事に切断するとなると相当の手練なのだろう」

 一見して、床に転がっているガーゴイルが鉄製である事が解る。

 その重量を考えれば出力やパワーも相当なものであったはずだ。

 それを両断してしまう程の実力の持ち主が御霊を持ち去った可能性がある。

「ここまで来て見す見す御霊を奪われてしまうとはな……」

 口惜しい。

 だが、結果を悔やんでも何も解決はしない。早々に次の手を打たねばならない。

「あの大穴に関する記録は残っていないのか?」

 広場に入ってまず目についたのが壁の大穴だった。

 山を貫通するように直径五メートルの円状の穴が開いており、その断面はまるで切り取ったように滑らかでどう見ても自然に出来た穴ではない事は確かなのだが、これを人が行ったとすればそれはそれで異常な事だった。

「記録には特に何も、おそらくこの惨状と何らかの関係があるとは思われますが……」

 そうデイズが述べていると

「隊長」

 壁からせり出している台の付近で何かの道具を操作していた騎士が声を上げる。

「どうした?」

「監視システムの一部が生きていました。映像が再生出来ます」

「本当か!?」

 騎士の言葉に皆が集まり、地面に置いてある一面だけがガラス張りの四角い箱を見る。

「はい、モニターに表示させます」

 騎士がそう述べると、箱のガラスに絵が表示される。

 絵は連続して代わる代わる繰り返し表示され、映像となって映し出されていく。

 映像には祭壇であるカプセルが映し出されており、映像のカプセルはまだ壊れておらず、中にはおそらく御霊と思われる青い水晶玉が見えた。

「何時の映像だ?」

「今日の午前十時頃の映像のようです」

 午前十時、それは自分達があの光を見た時間より少し前の時間帯だった。

「特に変化がないな」

 ガラスに映し出される映像にはこれと行った変化がなく、同じ景色ばかりが映し出されていた。

「待って下さい。少し早めます」

 騎士がそう述べ台の辺りを触ると映像の動きが速くなり

「止めろ」

 映像に新たな要素が映し出される。

 人間だ。二人の人間が映像に姿を現した。

 それほど鮮明な画像ではないため細かい容姿は解らなかったが、一人は青い髪、もう一人は赤い髪をしているようだった。体つきから見て男女、しかもまだ子供のようにも見えた。

「(この青い髪の少年……まさか)」

 映像は更に先に進み、少年がカプセルへと取り込まれていく。少女はカプセルを叩くが効果はなく、少しの間の後、少年は自らの力でカプセルを破り、内側から這い出てくる。

「……すごい」

 騎士の一人がそう呟く。

 広場を調査するに当たって当然カプセルもどのような代物かが調べられた。

 外壁は鉄で構成されており、蓋の部分はガラス張りだったが、ガラスと言っても厚さ数センチに及ぶ分厚いガラスであり、カプセルの中からとは言え並大抵の力で破れる代物ではないはずだ。

 やがて場面は次へと進む。

 体長四メートルのガーゴイルの出現、そのガーゴイルと闘う二人。

 それは信じられない光景だった。

 ガーゴイルのスペックは普通に考えても通常のガーゴイルより遥かに高く、おそらく自分達レブルスの騎士であっても一対一で勝つのは至難の業だ。

 それだと言うのに、映像に映る二人はそんなガーゴイルに一歩も引く事なく闘っていた。

 それだけでも十分に驚くべき光景だったのだが、騎士達は更に驚くべき光景を目にする。

 光だ。

 ガーゴイルの攻撃によって倒れた少年が立ちあがり、青い光を身に纏い始めたのだ。

 その光には見覚えがある。先刻、天を引き裂き貫いたあの青い光だ。

 そして、その光は少年に操られる様に一点に集まると

 カッ……

 件の光の線となってガーゴイルを消し去ってしまう。

 映像はそこで終わる。

 まるで、少年が放った光により映像すらも掻き消されてしまったかのようだった。

「た、隊長。これは一体……」

「解らん。何が起こったと言うんだ」

 何が起こったのか理解出来なかった。

 ただ、自分達が何十年、いや一生を掛けて修練を積もうともあんな真似は不可能だろう。

 それを映像の少年はいとも容易く成し遂げてしまったのだ。

『……』

 その事実を前に、騎士達は言葉を失う。

「おそらく……」

 そんな中ウィルが口を開く。ウィルとて決して動揺していない訳ではなかったが、それ以上に彼には思うところがあったのだ。

「あれこそが御霊の力なのだろう。でなければ説明が付かない」

 それは色々な意味で願望に近い言葉だったが、騎士達はウィルの言葉に賛同する。

「他に情報が無いか手分けして探すぞ。些細な情報でも構わん」

「はっ!!」

 再び、広場を調査し始める騎士達。そんな中

「(ここに、御霊があった……)」

 ウィルはカプセルに近寄り、思う。

「(あの光は御霊が生み出した光だったのか、御霊とは……御霊とはああも強大な力を与えてくれるものなのか)」

 あれが御霊の力だとするならば、あれこそがウィルが望んだ力だ。

「(何としても、御霊を手に入れなければ……)」

 そのためにどうすれば良いかを考える。

 この時、彼は自分の思考にある変化が生じている事を自覚してはいなかった。

 ある変化、それは……野心である。

 いや、それはまだ野心と呼ぶには極々小さな欲でしかなかった。

 現にウィルはまだランクのために御霊を持ち帰ろうと思っており、そのための手段を考えていた。だから、実際は言葉の上のほんの僅かな変化でしかない。「持ち帰らなければ」と考えるところを「手に入れなければ」と考えたと言ったほんの僅かな変化。

 だが、それこそが彼の運命を変える大きな切欠になる変化だった。

「隊長っ!!」

「どうした?」

 騎士の大きな声に振り返るウィル。

「ガーゴイルのストックが見つかりました」

 騎士の一人が壁の台を操作すると広場の床が開き、新しく三体のガーゴイルが姿を現す。

「如何致しましょうか?」

「起動可能な状態なのか?」

 ガーゴイルの一体に近寄り、ウィルはその状態を確かめる。

 見たところ破損もなく、ほぼ完全に近い状態であるように思えた。

「はい、保存状態は良好のようです」

「これほどの品を放置するのは惜しい。運び出してレブルスに持ち帰りたい所ではあるが……」

 その性能は先の映像を見れば一目瞭然。

 研究対象としても、うまく行けば戦力としても、レブルスのためになるだろう。だが

「現状の我々の装備では運び出す事は不可能です」

「……仕方あるまい。後日部隊を派遣する事にしよう」

 ガーゴイルはガーゴイルで実に魅力的な存在ではあるが、今は御霊が優先である。

「とりあえず制御系の部品を解体し、起動出来ないようにしておくぞ」

『はっ!!』

 ウィルの言葉に騎士達はすぐに解体作業へ入る。

 ウィルも一体のガーゴイルの背後に回り、制御部分であると思われる頭部を探る。その時

「(……む、何……だ?)」

 意識が霞む。

 意識が遠退いたり無くなったりするのではなく、意識が霞む。頭がぼんやりとした状態となり、手が勝手に動いたかのように思えた瞬間

 ピッ……

 小さく、ウィルにしか聞こえない程度のそんな高い音が聞こえた。そして

 ブゥン……

「(な……!?)」

 低い響きと共に、ガーゴイルの目が赤い光を放つ。それが起動の合図である事はすぐに解った。

「うわぁっ!!」

「そんな、システムは落としていたはずなのに!?」

 動き出すガーゴイルを前に騎士達の動揺は明らかだった。だがそれ以上に

「(何だ、私は、私は今何を……!?)」

 動揺するウィル。

 霞む意識の中でガーゴイルに触れる指の感触と高い音が確かに聞こえ、その直後にガーゴイルが動きだした。間違いなく、自分がこのガーゴイルを動かしてしまったのだ。

 いや、その一体だけではない。見れば他のガーゴイル達も起動し始めていた。

「隊長っ!!」

「っ!?」

 デイズの大きな声が聞こえ、我に返る。

 気付けば、目の前でガーゴイルが腕を振り上げているではないか

 ブゥンッ!!

「くっ!!」

 間一髪、ガーゴイルの拳を避けるウィル。

 考えるのは後だ。そう思い、目前の脅威に備える。

「散開しろ、ガーゴイルを各個撃破する!!」

『はっ!!』

 騎士達が散開すると同時にガーゴイル達も素早い動きを見せる。

 自分達の近くに居る騎士のみを払い退け

 ゴゥッ!!

 背部より光を放ち、高速で壁に開いた穴に飛び込んでいく。

「何っ!?」

 穴は山を貫き外へと繋がっており、ガーゴイル達はあっという間に姿を消してしまう。

「皆、無事か?」

「はい、負傷者はおりません」

 ウィルの問いにデイズが答える。

「よし、すぐに追跡するぞ」

「ですがガーゴイルがどこへ向かったのかが解りません」

 ガーゴイルの姿はすでに見えず、追跡するのは困難だった。

「おそらくはカラト村だ」

「カラト村?」

「映像に映っていた少年、私はあの少年に良く似た少年をギガ・カストゥール殿の家で見掛けた」

「本当ですか!?」

「確証は無いが、あのガーゴイルが御霊を守護する事が目的として造られた存在であるならば、奴らが向かうのはおそらく御霊のある場所……」

「つまりはカラト村……ですか」

「そうだ。あんな物が人里に下りたらどれだけの被害が出るか解らん。急ぐぞっ!!」

『はっ!!』

 ウィルの言葉に騎士達は声を上げ走りだす。ウィルも騎士達と共に走り出すが

「(私は、私はあの時何を……)」

 先程の事を思い出しゾッとする。

 あの瞬間、ガーゴイルの頭部、制御回路に触れたあの時

「(これをうまく使えば、御霊を手に入れる事が出来るのではないか……)」

 意識は霞んでいたが、ウィルは確かそう考え……笑っていた。

 自分がそんな事を考えるなど信じられなかった。そして、同時に思う。

「(あれは、私の意思では断じてなかった。私の体に一体何が起こったと言うのだ……)」

 それが何であるかを彼は知らなかった。

 そして、すぐに知る事となる。自分に課せられた、抗う事の出来ない定めと言うものを。

 今、全ての事柄は運命と言う名のプログラムの示す通りに進んでいた。


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