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二度目のリロード


 マッドリバー家の始祖の魔導師が建てたというこの工房には、いくつもの部屋が存在している。

 俺はそのうちのひとつ、「儀式場」へとやってきた。

 魔法陣を描くための広いスペースに、ヘレンがゴーレムの体を寝かせる。


「それじゃ、いっちょやりますか!」


 俺は新しい体の横に寝転んで、憑依魔法を起動した。

 数秒の浮遊感の後に、体内を巡っていた魔力の感覚が切り替わる。

 当然、憑依は成功だ。さすがは大天才のエルシー。

 俺は床から起き上がり、新しい体の出来を確かめた。


「ンォ、ヴォオオ⋯⋯? んん、なんが⋯⋯ノドがガザガザじでんなァ⋯⋯」


 材料に岩トカゲの鱗を混ぜたのは、失敗だったかもしれない。

 無理に低い声を出そうとしている時のような、喉の深いところがグッと詰まる感じがある。

 声質もなんか濁っていて、少し耳障りだ。

 これじゃあ、人外のカワイコちゃん達を上手く口説けねぇよ⋯⋯。

 うーん。無口でカッコイイ系を目指すか⋯⋯。


「ベレン。オデ、森に行っでぐる。エート、魔物、倒す練習」

「ええと⋯⋯。そのお姿で、ですか?」

「ヴン」

「昨今は、未熟なエクソシスト達による旅芸人の誤認退治も起こっております。せめて、トカゲの肌は隠したほうがよろしいかと⋯⋯」


 黒鱗で覆われた手足を指差しながら、ヘレンが言った。

 なるほど。確かに一理ある。

 旅芸人の中には、人目を引くために人外の仮装をしている者も珍しくないが、俺は目立ちたいワケではないのだ。

 町を出る前に、また牢獄へぶち込まれては意味が無い。

 俺はミストドレスの魔法を唱えて、旅人風のマントを作った。


「貴族街に旅人がいるのもおかしいでしょうし、私も門の辺りまで同行いたします。

 お嬢様は観光中に迷子になった振りでもしておいてください。

 ⋯⋯お帰りの際は、自分に似たゴーレムに憑依してくださればと思います」

「ヴン。ありがど、ベレン」


 医者、もといカーラ様による嘘の診断があるとはいえ、ここまで協力してくれるのか。

 正直、「護衛もつけずに町から出るなど、いけません!」って邪魔されそうだなと思ってたんだが⋯⋯。

 サクサクと話が進んでくれて、ありがたい。

 さすがの俺も、保護者を連れてナンパはしたくないからな。

 ヘレンに魅了魔法を掛けずに済んだのは僥倖だ。


 俺はマントのフードを被って、インキュバスの顔を隠した。

 これでようやく、人外娘を探しに行けるぞ!


「では、参りましょうか、お嬢様」

「ヴン!」


 俺はぴょこぴょこと尻尾の先を揺らしながら、ヘレンと共に外へ出た。



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