第四十一話 部活合同会議。
今日のホームルームでは、体育祭の競技に誰が出るのかを話し合った。
スポーツの日に体育があり、その翌月に文化祭だ。この時期は忙しくなるらしい。
クラス委員女子の笹木さんは、黒板を書く係でクラス委員男子の川島が進行を進める。
「うちの学校の体育祭は、赤・黄・青の三チームに分かれて闘う。昨日の放課後、クラス委員会議があった。そこでくじ引きをした結果、この一年六組は赤チームになった。一年二組も仲間の赤チームだ。クラス全員で参加する競技は一つだけで、『台風の目』をやるよ。」
「体育の時間を使って練習出来る。体育は一年五組と合同。ちなみに五組は黄チーム。」
笹木さんが補足した。
「そうそう。後は、クラスの足の速い奴を選抜して、色対抗の選抜リレーに出てもらう。先輩と混ざってやるんだけど、リレー練習は放課後、先輩達から連絡が来るよ。後は二人三脚と綱引き、玉入れは、出たい人が出られるって感じ。後は部活の先輩から聞いてるかもしれないけど、部活対抗リレーがあるよ。運動部と文化部で分かれて行うんだけど、文化部の方はおふざけ中心だからわからない事あったら個別に聞いてね。」
笹木さんは、黒板に競技名を書いた。
「選抜リレーはすぐ決められそうだから先に決めるね。廊下側に女子、窓側に男子で一回分かれて、脚が速い順に前から並んで!男女各五人ずつがリレーに出るよ。」
クラスメイトが動き始めた。俺も言われた通りに動く。
一番前はりんのすけだった。ひゅうがと勝負するくらいだから、かなり足が速いんだろう。
その後ろにまさかの進一。体育祭でもズルをするつもりだろうな。
後は運動部の男子が並んだ。俺は六番目だったため、ギリギリ選抜に選ばれずに済んだ。
「皆んなありがとう!前から五番目の人達は、選抜リレー出場決定!おめでとう!練習日は追って連絡するね。」
クラスメイトはまた自分の席に戻って座った。俺も自分の席に戻る。
「じゃあ次は順番に行こう。二人三脚出たい人挙手。」
りんのすけが後ろから俺の腕を掴んで上げる。
「バッカ!何やってんだよ!」
俺は腕を下げようとしたが、力が強すぎてビクともしない。
「僕はつかさと出るよ。」
「おー!珍しくやる気満々じゃん。ハハハ!」
川島に笑われた。
笹木さんは、黒板に俺とりんのすけの苗字を書いた。りんのすけの苗字、よく漢字で書けるな、と俺は感心した。いや、感心してる場合じゃ無い。
腕が自由になり、俺は振り返ってりんのすけに小声で言う。
「何で二人三脚なんだ?」
「僕達のチームワークを世間に晒すチャンスだぞ。」
「ムムム……。まあ、和田と組むよりは百倍良いよな。」
「何でそこで私の名前を出すんだ!」
和田がプンスカする。
「和田うるさいぞー。」川島が注意する。
注意された和田は無言でプンスカする。ゴリラの様になった顔と動きが面白くて、俺は笑いを堪えるのに必死だった。
他の競技も含め、全てのメンバーが決まった。俺は結局、二人三脚と綱引きをする事になる。りんのすけは、選抜リレーと二人三脚だ。
全員二種目は出る様に、上手くバランスを取っていた。川島のリーダーシップ力の高さが窺える。
以上でホームルームは終わった。
放課後、りんのすけは川島のところへ行き、部活対抗リレーについて聞いた。俺も同席する。
「運動部は本気でリレーバトルをやるらしいんだけど、文化部はその部活らしい服装やバトンを使って、バラエティー色の強いリレーをやるみたい。人数の少ない部活は、他の部活と合同でやるか、何回も走って調整するんだって。文化部は数が多いし人数が少ない所が多いから、六人チームと八人チームの前半後半に分かれて行うよ。」
りんのすけは顎に手を当てて考え込む。
「へえー、オカルトっぽいって何だろうな?」
俺は呟いた。
「お化けとか宇宙人とか、モンスターとか?」
川島はニコニコしながら言う。
りんのすけは考えながら口を開いた。
「オカルト研究部は、現在四人だがひゅうがを補欠部員として加えと五人。後一人か三人必要だな。」
「俺出ようか?足は速く無いけど。」
川島が笑顔で立候補した。
「いいのか?」俺は驚いた。
「あ、待って。」川島は誰かの視線を感じて冷や汗を垂らした。
俺は振り返る。可愛らしい女子が一人川島を睨みつけていた。
「文芸部のリレーと被らなかったら出るよ!文芸部は六人チームの方で出るからさ。」
川島は厳しい視線がなくなったのか、安堵の溜息を吐いた。
「後二人捕まえよう。魔術研究部をこちらに引き込む。今決定した。」
りんのすけ急に立ち上がった。
「正気か?逆に引き込まれるんじゃ……。」
俺は不安でソワソワする。
「僕がそんなヘマをしない。ほら、お出ましだぞ。」
りんのすけはニヤリと笑って、教室の後ろのドアを見た。
ドアの前にはヤンキーの野崎先輩とギャルの山河先輩が居た。
「「つーちゃーん!!」」
二人が同時に俺の名前を叫んだ。
俺は反射的に机の陰にしゃがんで隠れる。
ドタバタと足音がして、すぐに野崎先輩の手によって俺の首根っこは掴まれた。
「なぁに隠れてンだよ!!わざわざ俺様から部活対抗リレーの誘いに来たんだゼ?」
「すいません。情景反射というか、何と言うか。」
俺は項垂れながらボヤいた。
「先輩方。オカルト研究部として出場しないか?」りんのすけは仁王立ちして偉そうに言った。
「アタシは全然OK!魔法少女のコスプレ出来れば何でも良いよー!」
山河先輩はノリノリで言った。
「ちぃ、勝手に決めんな!!後から出てきたポッと出の奴らに合わせる義理なんざ無ェんだよ!」
野崎先輩は吐き捨てる様に言う。
「どっちにしても、走る時にコスプレをするなら、俺はどっちでも良いです。」
俺は小さく手を挙げた。
「だよねだよね!アタシもつーちゃんと同じ意見!」
「もうジャンケンで良くないですか?」
俺は速く首根っこを離して欲しくて投げやりに言った。
「良いじゃねェか!やってやンよ!」
野崎先輩は乗り気になり、手を離した。俺の首が自由になる。
「なら、僕はパーを出す。」
りんのすけは掌を前に突き出した。
「え、まさかの心理戦?」ついツッコミを入れる。
「いいぜェェ!かかって来いよ!」
ジャンケンポン。
先輩はチョキ、りんのすけはグーで勝った。
「おい!!パー出すって言ったじゃ無ェか!!」
「馬鹿正直にパーを出す訳が無いだろう。勝負は決した。明日オカルト研究部の部室で待つ。放課後に話し合いをしよう。」
りんのすけは勝ち誇った顔で言う。野崎先輩は舌打ちをして、諦めた顔をする。
「わーったよ。裏切って来ないとかは無しだかンな!」
「無論だ。」
野崎先輩と山河先輩は帰って行った。
「明日川島も来れそう?」
嵐が去り、俺は聞いた。
「明日は部活なんだよね。衣装は任せるよ!……つかさの大変さを目の当たりにする度に、俺はまだマシな方だったって思えるよ。」
俺は項垂れて苦笑いを浮かべた。
次の日の放課後、昼休みのうちに借りた部室の鍵を持って、オカ研四人と一緒に急薬品管理室へ向かった。
ひゅうがは、サッカー部の活動がある為不在だ。オカ研補欠要因との件は快諾してくれた。コスチューム用意してくれたら着るとの事だった。ひゅうがのノリの良さには毎回助けられている。
俺とりんのすけはいつもの定位置に座る。進一は俺の隣に、和田は俺の向かいの席に座った。
しばらく談笑しながら待っていると、先輩達がドカドカと喧しく入って来た。
「ごめごめー!待ったー?」
山河先輩は和田の隣に座る。和田は女性慣れしてないのか、ソワソワし始める。
おい、胸を見過ぎだぞ、変態和田。
野崎先輩はりんのすけと反対側のお誕生日席に座る。
「俺様は今年で卒業なンだから、ちゃんと先輩に花持たせろよ。テメェら。」
そう言って野崎先輩は机の上に足を乗せた。やっぱりこの人ガラが悪い。優しい時とのギャップで頭が焼かれそうになった。
「わかっている。アンカーは野崎先輩に任せたい。」りんのすけは腕を組み偉そうに言う。
「いーじゃん、おぼっちゃま君。ちゃんと考えてンだなァ!」
野崎先輩は顎を少し上げて言った。
山河先輩はスマホをいじりながら話を始めた。
「てかさー。オカ研って、文化祭の部活でやる出し物とか決めてんの?」
「文化祭で部活毎何かやるんですか?」
俺は初耳な情報に驚き聞いた。
「やってもやんなくても良ーけどぉ。もしやる事無いんでだったら、ウチのやりたい事手伝ってと思ってー。」
「ほう。何をする予定なんですかな?」
和田は興味津々で聞いた。
「アイドルライブ!前夜祭のパフォーマンス大会に出るよーん!野崎パイセンも一緒にねー!」
「あぁ?!聞いてねェぞ!!」
野崎先輩は山河先輩を睨む。
りんのすけが人差し指を挙げて発言した。
「文化祭の件はまた後で話そう。今は体育祭の部活対抗リレーに関して話し合いたい。」
「コスプレするのは良いんですけど、それぞれ何を着るのかと、バトンを何にするかを決めたいです。」
俺はまた脱線しないうちに進行に回る。
「アタシは魔法少女になるゥ!」
山河先輩はノリノリで行った
「俺様はアレで良いや。陰陽師の服。」
野崎先輩はやる気の無い声で言う。
「ねぇねぇ、進一君!猫耳つけてよ!絶対似合う!」
いきなり山河先輩に話を振られて、進一は見るからに嫌そうな表情になる。
「猫耳ってオカルトとか魔術と関係ないですよね?」進一が反論した。
「でも、魔女は黒猫連れてたし!全然ありでしょ?」山河先輩はりんのすけの方を見て言う。
「まあ、ありだとは思うね。猫耳を付けるだけなら、コスプレの難易度も低いから悪くない。」りんのすけは真面目に言う。
進一は不服そうだが、変な格好をする方がマシだと察し、「じゃあそれで。」と言った。
「和田はゾンビで良いんじゃない?似合いそう。」俺はテキトーに提案する。
「何でゾンビなんだね!もっと他にあるだろう!吸血鬼とか!狼男とか!」
「僕が吸血鬼をやる。」
りんのすけはドヤ顔で言う。
「じゃあ、俺は狼男。」
俺も便乗して言った。
「グヌヌヌ!人の意見を当然の様に盗んむじゃないよ!じゃあゾンビで我慢しよう。ふん。」
和田はプンスカしながら言う。
「ひゅうがと川島は何にするの?」進一が聞く。
「そうだな。宇宙人とキョンシーで良いだろう。」
りんのすけは今思い付いた事を自身満々にに言い、次の話を始める。
「衣装はこちらで用意する。希望のデザインがあれば提出してくれ。服のサイズもな。」
「はーい!!」山河先輩は嬉しそうに両手を挙げた。
その後走る順番を決まり、また文化祭の話に戻った。
「前夜祭のパフォーマンス大会では、勝ったら何か貰えるんですか?」俺は先輩方に聞いた。
「トロフィーが貰えるだけだ。俺様はまッッッッたく興味無ェけど。」
野崎先輩は机に頬杖を付きながら言う。
「何で?最後に思い出作りたいいーー!!絶対やるのーー!!やるやるやるやる!!やるーー!!!」山河先輩が駄々を捏ね始める。
「あーーー。わかったから、一回黙れ。」
野崎先輩は耳の穴を指で塞ぎながら、山河先輩に背を向ける。
「やったー!!黒桃の曲やりたい!!」
山河先輩は満面の笑みで言う。野崎先輩は無視した。
「それって四人組ですよね。僕はパスで。他の人がやります。」進一淡々と言い切った。
「仕方ない、私がやろう!」和田が立ち上がった。
「ほんとー?うれしー!四人だけど、何人でも良いんだけど?ね?進一君もやろ?」
「嫌です。断固拒否です。僕の代わりでひゅうがにお願いします。」
進一は無責任に言い切った。
「ひゅうが君ビジュ良いじゃん!ありあり!じゃあ、りんちゃんつーちゃんも参加で六人で出よう!」
「あ、ちょっと待って下さい。俺人前に出るの苦手なんですけど。」
俺の言葉を遮って、山河先輩が言う。
「ちょー楽しみになって来た!とりま、衣装案今度持ってくるね!じゃあねぇ!」
教室を出て行ってしまった。取り残された野崎先輩は、ゆっくり立ち上がって言った。
「ちぃは幼馴染で、小さい頃から俺にくっついてた。俺の卒業がアホみてぇに寂しンだろうな。嫌だったら断っても良いゾ。まぁー、出てくれンなら助かる。じゃな。」
野崎先輩も教室を出て言った。
「先輩達の最後かもしれない頼みなのだよ!断る選択肢はないのでは?」
和田に言われて、俺は完全に断れなくなった。
りんのすけはため息を吐いて言う。
「あの先輩達はつかさの命を救ってくれた恩人だからな。やるからには優勝を目指す。貴様ら覚悟しろよ。」
変なやる気スイッチが入っているのは気になるが、恩返しをしたい気持ちには同感だ。
今は先のイベント、体育祭の心配をまずしよう。足の怪我が治ったら、練習を始めないと。




