表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/74

第三十九話 目には目を、歯には歯を。

【一方その頃。進一。】


 ギャルの先輩は、りんのすけの使用人が持って来たケーキやクッキーを次々に口の中に放り込む。

 ひゅうがの買って来たスポーツドリンクのペットボトルを、一気に半分飲み込むと僕の薬を口に入れ、残りのスポーツドリンクを飲み切った。

「なんか、今なら何でも出来そー!って感じ!!よし!!!ダメは元々だ!!!始めるぜ!!!」

 ギャルの先輩は、頬を叩いて気合を入れた。

 魔法陣の上には、お菓子のゴミや僕の薬の入った小さな袋が散乱と置かれていた。

「よろしくお願いします!」

ひゅうがは先輩に深々とお辞儀をした。

 僕とりんのすけとひゅうが、使用人は部屋の隅で大人しく座った。

 先輩は、魔法陣の真ん中に、指先から垂らした血を数滴垂らした。

 儀式が始まる。

 不思議な言葉を唱え始めた。手は前に組み、正座をする。

 魔法陣の中心から冷たい風が吹いている。どう言う仕組みなんだろ。凄く気になる。

 りんのすけを挟んで隣にいるひゅうがは、目を瞑り、手を組み、拝み始めた。

「生きて帰って来い!生きてさえいれば良いから!ずっと待ってるから!んむぐ。」

声が思い切り漏れている。りんのすけは、ひゅうがの口を押さえて黙らせる。

 先輩は目を瞑り、組んだ手を上に上げた。すると、先輩の様子がおかしくなった。

 立ち上がり、上を向き、目を開く。髪は逆立ち、白目を剥いていた。

「うぅぅ。うううう!!邪魔をするな小娘!!我を何方と心得る!!貴様諸共全て破壊してやる!!」

 先輩の声ではない。脳に直接入り込んでくる様な不気味な声だ。

「あらら。大変ですー。」

 使用人は急に立ち上がった。黒スーツの胸ポケットを探り、一枚のお札を取り出した。

「サソリさんから預かっていて良かったです。よいしょ。」

 使用人は少し背伸びをして、ギャルの先輩の頭にお札を貼る。

 先輩は、大人しくなった。

「な……何だ?何をした……?」

憑依している声の主は苦しそうに言う。

「わかんないです。何ですかね?これ。」

使用人は惚けているのか、本当に知らないのか、腕を組んで首を傾げた。

「干渉されている……。っく。神への冒涜だぞ。わかっているのか。」

 自称神様は静かな声で言う。

「うーん。わかってないです!」

使用人は笑顔で言った。この人、大丈夫なのか?

 しばらく、沈黙が続いた。長く留めて置けば、時間稼ぎになるらしい。

 とりあえず、潜在能力覚醒剤……、おっと。言い方が悪いか。パワーアップの薬が効いた様で僕は安心した。

 数十分程経ったところで、魔法陣の中に散乱しているゴミや薬が、カサカサカタカタと揺れ始めた。

 閃光。思わず目を瞑る。

 光が消え、目を開ける。先輩は正座で手を組む姿勢に戻っていた。魔法陣に散らばった物が全て消えている。

 ゆっくりと、組んでいた手を緩める。そのまま、パタリと床に倒れた。

「はぁ。はぁ。今日はもう一歩も動けん!」

 先輩は仰向けになりながら言った。

「お疲れ様でした。ありがとうございます。」

僕は先輩にお礼を言った。

 他の皆んなも先輩を労い、お礼を言う。

「進一くん。一回ハグさせて!」

 先輩は仰向けのまま、両手を広げた。

「……それは無理です。」少し気まずくなりながら、僕は小さい声で言った。

 ギャル、怖い。




【一方その頃。つかさ。】


 プールの結界内に入り、サソリさんを下ろし横にした。

 俺は着ていたワイシャツとネクタイを脱ぐ。ワイシャツを引き裂いた。

 先にネクタイで、自分の脚を縛り止血をする。サソリさんの血の出ている箇所に破ったワイシャツを押さえ、圧迫止血法を試みる。テレビで見た眉唾な知識だが、何とか止血が出来た。さらに傷口を縛って応急処置をする。

 サソリさんは俺の頬に手を当てて、笑顔を向けた。

「ありがとうございます。命の恩人ですね。」

「それはこっちの台詞ですよ!何回も助けてもらってるので、お互い様です!」

俺は頬に当たった手を、両手で握りしめた。

 少し離れた場所で、野崎先輩が儀式を行っていた。簡易な祭壇の前で、お経を唱えている。

 祭壇のローソクの火は、多分俺が職員室から借りてきたライターで付けたのだろう。

 先輩は最後に印を結び、指で空を切った。

「開いたぞ!」

 先輩が大声で呼んだ。

 俺はサソリさんを背負い、先輩の元へ急いで向かう。良かった。帰れるぞ。

 そう思った瞬間。空が光に包まれる。眩しい閃光に目が眩む。奴が戻って来た。

 俺の頭の上に、お菓子のゴミが降って来た。頭の上に何か乗り、片手でそれを取る。

「白い錠剤?袋に何か書いてある。ドーピング薬(潜在能力向上)。進一の字だ!」

 俺は上を見上げた。最悪。羅刹天が空に浮かんでる。

「逃げられると思うたか?」

 不気味な声が脳内に響く。

 俺は急いで距離を取り、手の上に錠剤を全て出した。

 一粒口の中に入れ飲み込む。

「野崎先輩、これ飲んで下さい!パワー増強剤です!」

 俺は先輩に向けて錠剤を投げる。ハンドボール投げの成績は微妙だったが、今は薬の効果で先輩の手の中に錠剤が届いた。

「わけわかンねえ!けど、飲む!!」

先輩は錠剤を飲み込んだ。

 背負っているサソリさんの重さが感じられないほど、力が強まっている。中学の時に飲んだ薬より効果が大きい。

 俺は全力で走って羅刹天から逃げる。速い。あ、スピード出過ぎ。

 俺は校舎に顔面をめり込ませ、そのまま気を失ってしまった。




【代わりまして。野崎先輩。】


 あのクソガキが渡した薬のおかげで、自分の中の霊能力が上がっているのがはっきりと分かる。

 涅哩底王ねいりていおうは結界を破れる。このまま出ちまったら、現世に破壊の鬼神を連れ帰る事になるよな。

 クソ親父に教わった涅哩底王ねいりていおうの事を思い出せ。獄卒。鬼神。毘沙門天の眷属。それで、眷属の仲間に夜叉が居て、えーと。

 夜叉…………!

 自分の中にある魂みてぇなモンが、今ドクンってしたぞ。何でだ?!

 手の甲の刺青が光ってる。五芒星が反応してるって事は……?何だ!何か思い付きそうなのに、後ちょっとが出て来ねぇぇぇ!!!イライラする!!!!

 あれ、クソガキが俊敏になってる。っておい!壁にぶつかって気絶してんじゃねえか!!!

 涅哩底王ねいりていおうめっちゃ狙ってンだけど?

 さっさとアイツを止めねえと!!

 ううううう……!!!ハッ!わかったぜ。クソ親父。そう言う事かよ!

「オイ!涅哩底王ねいりていおう!お前ェのお仲間連れて来てやンよ!!驚きやがれ!!!」

 こっち見たな。動き止めたな。行ける。

 腰のポーチから札を取り出す。指の先で分かる。出て来たがってンじゃねえか。

 舌を少しだけ噛み切る。イッテェェェ。少しでも痛え。血が口の中に広がる。

 札に血を吹き掛け、構え、印を組みながら唱える。

「唵弩弩麼里迦呬諦娑婆訶おん・どど・まーり・かーきてい・そわか・ヤクシャ!」

 顕現しやがれ。夜叉。お前に全てが掛かってる!

 札が光った。成功だ。俺様結構センスあるかも?

 龍の様な顔。民族衣装みたいな格好。男夜叉だ。あの涅哩底王も、流石に距離取ったか。

 今のうちに、クソガキと無鉄砲バカ拾いに行くぞ。後、一歩。何で、届かねェ……!

 調子コイて強い奴の口寄せやったせいだなァ。目の前が……見え……。





【代わりまして。つかさ。】


 地響き。金属のぶつかる音。瓦礫の崩れる音。

「ヤバい!!気絶してた!!」

 俺は咄嗟に立ち上がり、仰向けで倒れているサソリさんを背負った。

 学校敷地外のすぐ側で、羅刹天と何かが戦っている。両手に刀を持った何かは、羅刹天の槍攻撃を封じ、互角かそれ以上に戦えている。

「何だあれ……?そうだ、出口!今のうちに帰れる!」

 俺はプールの入り口を見る。あれ、野崎先輩が倒れてる!

「先輩!大丈夫ですか?」先輩の体を揺する。

「……。力が出ねェ……。……出口入れ。」

小さい声で呟いた。

「わかりました!出ます!」

 俺はサソリさんと野崎先輩を両肩に担いだ。

 そのまま走ってプールの入り口へ向かう。見た目は何も変わっていないが、俺は祭壇の奥へ飛び込んだ。

 空が青空に変わる。人の足音や話し声等の雑音が、耳を働かせた。

「戻って来れた……!」

 俺は二人をその場に下ろし、座り込んだ。安心して腰が抜けた。

 野崎先輩はうつ伏せになり、這いつくばって俺に近づいた。

「閉じるぞ。そこ退けクソガキ。」

先輩はシッシッと、払い退ける動作をする。

「そんな状態じゃ駄目ですよ。無理しないで下さい!」俺は心配でオロオロしてしまう。

「閉じるくらいどうって事ねェよ。開けるより閉じるほうが楽だ。」

 先輩は、フラフラと体を起こし胡座をかく。

 印を結び、お経を唱える。

 しばらく唱え続けた後、指で空を切った。

「これで、取り敢えず安心だ……。クソガキ。名前何だっけ?」

「◯◯つかさです。助かりました。本当にありがとうございました。」

「イーヤ。つーちゃんも良くやってくれた。偉かったぞ。」

 先輩はそう言うと俺の頭を軽く撫で、仰向けに倒れて気絶してしまった。

 まだ動ける俺は、倒れている二人のお兄さんを俵抱きし、保健室連れて行く事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ