胃カメラ
自宅の一コマ。
博美 健康診断行ってみいひん?
無限 は? なんで?
博美 受けてみたいから。
無限 そりゃそうやけど、、 なんの結果も出やんやん。
博美 診断そのものに興味あんねん。
無限 ふ〜ん。 学校で受けられるんちゃうの?
博美 来年までないし。
無限 そうなんや。 では行ってらっしゃい。
博美 うん。 おーーい! なんか言えや〜
無限 だから、行ってらっしゃい。
博美 私はあなたを誘っている。
無限 オレは興味がないので断っている。
博美 私は一人で行きたくないと思っている。
無限 オレは巻き込まれたくないと思っている。
博美 「あなたのものは私のもの」ではないのか?
無限 「自分のものは自分のもの」だろう?
博美 古来より神は理不尽なもの、、、 なぜ何も言わない?
無限 何なん、このやり取り?
博美 やり取りになること自体おかしい。
無限 ほんまそれ。 「行かん」っていう意思示してんのに。
博美 そや。 いやアカン。 ねぇ〜 行こうよ〜
無限 めんどいやつやな〜 行かんっちゅうねん。
博美 なんでなん?
無限 理由いる? 拒否してるやつにそれ聞くの最低やぞ。
博美 私が小さいみたいに言うな!
無限 一人で行ったらいいやん?
博美 いや、 それは、、 そ、 それこそ最悪な答えや!
無限 一人やと心細いんやろ? 何、自分側だけ「気遣った答え」を求めてんねん。
博美 そ、それはあれや、、 ほら、 そう、古来よ
無限 よくも、「適切な表現に行き着いた」みたいに続けられるな。
博美 あぁ〜 おちょくるな〜
無限 はいはい。 いいかな、 オレはなんの結果も出んのに、わざわざしんどいことしたないねん。
博美 くっ、、、 ねぇ? 凄いと思わん? 自分の体を調べられるんやで?
無限 もちろん凄いことや。
博美 医術ってさ、まさに「毒を以て毒を制す」やん。 限りある人間は、自然の摂理に抗うように、いろんなものを生み出してきたけど、医術ってマジでクレイジー。 体に刃を入れたり、毒になるかもしれんものを飲んだり、、 そういう積み重ねを通じて人間にとって素晴らしい、大切なものにした。 でも、結局は終りが来るのに、、 嗚呼、無常。
無限 ところで、今度お酒でも飲みに行けへん?
博美 話が移ろい行く〜 って、おい!
無限 「無常」だけにな。
博美 美しい言葉を台無しにすな。 無情な奴め。
無限 プッ
博美 おぃぃー!
無限 ははは、 でも、今あることが「普通ではない」って考えることは良いと思うで!
博美 なんか負けた気がする。 いやいや、そこやないな。 とにかくね、いろんなことを経験したいんよ。
無限 いいね!
博美 なっ?
無限 どうぞ!
博美 どうぞ?
無限 おひとりで。
博美 おひとり?
無限 さっきからそう言ってるけど?
博美 話が戻ってるで?
無限 戻してるんやろ?
博美 なぜ移ろわない?
無限 「無常」株大暴落やな。 あのさ、一人やと心細いんは分かったけど、仲間をつくってやることではないってのも受け入れてくれへん?
博美 うぐっ、、 そんなに嫌なん?
無限 そやね、 何もないの分かってんのに、身体触ったり、異物になるもん入れたないわ。
博美 人間の力を体感しようぜ!
無限 どこで爽やかに呼びかけてんねん!
博美 自分の胃の中とか見たない?
無限 え? よりによって胃カメラもすんの?
博美 ちょっと、 そ、そんな驚かんでも。
無限 マゾやな。 並の苦しさちゃうで?
博美 え、 えっと、、 ま、まぁ、しんどいとは思ってるよ。
無限 無知って凄いね。
博美 仮にも神をつかまえて無知とか言わんといてくれる。
無限 ほんまや! ハハ―ッ 神やったわ〜 ププッ ホグゥッ
博美 これより苦しいんか?
無限 この流れでボディブローするか? クソが、、
博美 胃の医について考察中やからな。
無限 なんもおもんないわ。
博美 胃は重たなったやろ?
無限 気が重たなったんや!
博美 うまいこと言うねぇ〜
無限 うまくねぇわ! なんのしたり顔やねん!
博美 「我が意を至り」ってやつや。 これからカメラも胃に至るだけにな。
無限 胃よりも脳をどうにかしろよ! まぁ、良い経験ちゃうか。 人体の神秘を体感できるし。
博美 何たいそうなこと言ってんの?
無限 どこで意外な顔してんねん! さっき自分で「人間の力を体感しようぜ」とか言ってたやろ? まぁ、やってみたら分かるわ。 カメラなんて異物やからな。 空気を吸うのを無意識でするように、自分の意思とは無関係に異物を排除しようとするから。 脳が教えてくれるんよ、「しんどいやろ? 早く出しや」ってね。
博美 脅してんの? 独特な切り口やめてくれへん?
無限 いやいや、とりあえず自分の常識は超えてくると思といた方がいいで。 おっと、これはアドバイスにならんな。 とにかくめっちゃしんどいから覚悟しときや。
博美 「オエッ」ってなるだけやないの? 硬いうどんを食べるような、、
無限 モニターなんて見てる余裕ないやろな。
博美 そ、、 そこまでは、、
無限 だからね、わざわざやらんでいいやん。
博美 い、 いや、 私は、 自分に勝つ!
無限 ダッサ〜 覚悟を決める言葉って、ここまでダサく響くんや。
博美 な? だから一緒に!
無限 いや、そこも勝てよ! さっきから何も変わってないがな。 まぁ、 そやな、、 中に居といたるわ。
博美 くっ、、 まぁ、しゃあないか。 ほな行くで。
無限 フフフ、
(病院の一コマ、声だけが聞こえる)
先生 若いのに胃カメラするんですね。
博美 やっぱ身体は大切なんで、不調があれば早く見つけないと。 さっきの麻酔、凄く苦いですね。 「オエッ」ってなっちゃいました。
先生 そうですね。 では、これを加えて横になって下さい。
博美 あ! モニター見たいんですが?
先生 前にありますよ。 始めますね。
博美 ふぐっ、 オエエエエエエエエエエエ
先生 そこしんどいところです。
博美 オエエエエエエエエエエエ オエエエエエエエエエエエ
無限 ウオオー これは開拓しそうやわ! ププ 「古来より理不尽な存在」が理不尽な思いしとるで! どうやお姉ちゃん? ハハハ、 聞こえるわけないか〜
博美 ウグッ、ウグッ、ウグッ、、
無限 ほらほら、目閉じたらモニター見えへんぞ〜
博美 グオオ、 ぐおっ、 ウグッ、 んんん
無限 これは凄いな! 逃げたい気持ち、迷惑かけたらアカンという責任感、気を失いそうなのを必死に止めようとする意識。 マウスピース割れそうなぐらい噛んでるし。
博美 ンンンンンンンンンンンン
先生 はい、終わりです。 とても綺麗でしたよ! 唾はそこに出して下さいね。
博美 は、はい、、 こ、こんななんですか?
助手 そうですね。 とても順調でしたよ。
博美 あ、ありがとうございました。
無限 どうやった?
博美 よ、黄泉の反対側まで行ったわ、、
無限 どこも行ってないで。
博美 そやな、、
無限 涙拭いて。
博美 そやな、、




