同行するメノア
「早くこの剣を実戦で使ってみたいよ~。この国でも依頼受けちゃおうかな~」
「え? でも、メノアさんは休暇中じゃなかったんですか?」
「確かにそうだけど、新しい武器を握ったものだから。冒険者の性って言えばいいのかな?」
「気持ちは分からなくもないですけど……」
メノアは新品の剣を構えたりして実践のイメージをする。
よっぽどそれが気に入っているようで、休暇を返上してでも依頼に向かおうとするくらいには熱心だ。
冒険者の鑑と言うべきか、それとも気分屋と言うべきか。
もちろん、メノアに誘われるようであれば依頼には同行するつもりである。
「うーん……やっぱり行きたいかも。巻藁で試すよりも実戦で試す方が確かだと思うし」
「それじゃあ同行します。メノアさんも仲間がいた方がやりやすいでしょうし」
「え? いいの!? もちろん仲間がいたら《旋律》も活かせるからやりやすいけど……」
「これくらいのお返しはさせてください。ライトも良いよね?」
「当然。レーナ以外のSランク冒険者と一緒に戦えるなんて滅多にないからな」
レーナもライトも、メノアとの同行に迷いはなかった。
同じSランク冒険者とはいえ、レーナもまだまだこの世界では新人と言える。
さらにライトはレーナより三か月も後輩。
そんな若輩者である自分たちが、ベテランのSランク冒険者と隣で戦えるなんて願ってもない機会。
それに、この機会を逃せばメノアはララノア国に帰ってしまう。
むしろ断る理由の方が見当たらなかった。
「ああ、私はこんな後輩に恵まれて幸せ者だよ~」
「何言ってるんですか。大袈裟ですよ」
メノアは神に感謝するように両手を組む。
そんなに同行してもらうことが嬉しかったのだろうか。
どちらかと言うと、自分たちからお願いして同行させてもらう――というような認識なのだが。
「ということは、また明日も一緒になっちゃうね。へへ」
「そうですね。集合はギルドにしますか?」
「うん! 何気にレーナと一緒に戦うのも初めてだし、邪龍を倒したライト君の実力も見てみたいし、アイラちゃんはかわいいし。明日が取っても楽しみ~」
「わ、私だけおかしくないですか……!」
最後の言葉にビックリしたアイラは、メノアにどういう意味でのセリフか聞く。
しかし、それも追加の「かわいいねぇ」という感想で躱された。
ちょっと不満そうにしながらも、頭を撫でられてなだめられている。
「よーし! 明日はいいとこ見せちゃうよ!」
「その前に、明日こそは寝坊しないようにですね」
「げげっ。き、気を付けまーす……」
メノアはしょぼんと肩を落としながら宣言する。
遅刻に関してはちゃんと反省しているようだ。
もしも受注と馬車に遅れると混雑に巻き込まれるため、メノアがしっかり起きてくれることを祈るしかない。
「あ、メノアさんの宿を教えてもらえれば、私たちがお迎えに行けますよ」
「いやいや。そんなことまでしてもらわなくても大丈夫大丈夫! ちょっとは私のことを信頼してくれてもいいんだよ?」
「アハハ、確かにそうですね」
「そうそう。明日は逆に私がレーナたちをお出迎えするくらいの勢いだよ♪」
「それなら安心です」
「大船に乗ったつもりでいたまえ~」
メノアはハッハッハと腕を腰に当てて高笑いした。
翌日。
メノアは五分の遅刻でギルドに集合することになる。




