代償
「……また外れでしたか」
マリアはグリーズの死体を見つめながら、疲れを吐き出すように息をつく。
グリーズを含めて十人ほどに同じことを聞いたが、有益な情報はほとんど出てきていない。
拷問紛いの作業は、かなりの体力と時間を使う。
それでも、普通に質問するだけではまるで相手にされないため仕方がなかった。
多くの人間に聞き込みをして、犯人に自分の存在を悟られても本末転倒であり、かなり難しい状況だ。
「この国に来たばかりの女を探せばすぐに見つかると思っていましたが……なかなか上手くいきませんね」
チンピラたちの死体を片付けながら、マリアは愚痴にも似た言葉をこぼす。
今分かっている情報は、聖女を殺した犯人はこの国にいる女ということだけ。
これは祖父の《占い》の結果であるため間違いはない。
《占い》とは、体の一部を差し出すことで質問の答えが返ってくるスキルだ。
当然マリアは聖女の命を奪った犯人のことを聞き、その代償に片目を失った。
この国の女が犯人だという情報と、自分の片目が釣り合うのかは不明だが、代償を払ってしまったからには最後までやり遂げるしかない。
それに、《占い》で得た情報から推理するという手もある。
自国からミルド国に移動するような人間は、商人のようなものを除いて冒険者くらいしかいなかった。
確かに農民にも恨まれていたが、農民は国を移動できるほどの金を持っていない。
商人が聖女を殺すというのも考えにくいため、犯人は冒険者であると考えて問題ないだろう。
そうなると、犯人はミルド国に来たばかりの女冒険者。
数はそこそこ限られてくるはずだ。
「これならいっそギルドで張り込んだ方が……いや、それは非効率的でしょうか――」
「――おい! お前こんなところで何してんだ!」
「あいつ怪しいぞ! やっちまえ!」
悩んでいるマリアの耳に。
怒りのこもった男たちの声が届く。
普段からこの地下にたむろしているチンピラたちか。
それとも縄張り意識の強い浮浪者か。
どちらにせよ面倒な相手に変わりはない。
数も少し多いため、逃げるしか道が残されていなかった。
「治安が悪い国ですね――グッ!?」
マリアの足に走る痛み。
男の声に反応して、どこからか飛び出してきた犬が噛みついている。
犬を手懐けるスキルでも持っているのか。
失った片目の死角から襲ってきたため、反応することが遅れてしまった。
「これだから身分の低い人間たちは……」
マリアは悪態をつきながら、取り出したナイフで犬の首を刺す。
人間以外を殺すのは久しぶりであるが、特に気持ちに大きな変化はない。
かなり痛みは残るものの、とにかくここから出る必要があった。
顔までは見られていないため、ここを乗り切ればもう追われることはないはずだ。
外では雨が降っている。
外に出たら血の跡でバレることもないだろう。
地下からの出口を目指して、マリアは何とか走り出した。
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