混乱
「え? じゃ、邪龍?」
「反応が確認されたって、この国に向かって来てるってこと?」
邪龍という単語に驚きを隠せないレーナとギルドマスター。
そして、聖女。
全員の動きが固まり、部屋に入ってきた従者に目を向けていた。
「間違いありません! あと一週間もしないうちに、この街に到着するようです!」
「ギルドマスター、それが本当なら大変なことに……!」
「そうだね。ギルドの戦力を集める必要があるけど……一週間で集まるかな」
「集まらなかったらどうなるんですか……?」
「そりゃあ……街が崩壊するだろうねぇ」
一週間という時間。
もうほとんど時間は残されていない。
このまま何も対策を打てなければ、確実にこの街は被害を受けることになる。
何よりも、アイラを助けるための木の実が、邪龍の影響で完成しなくなるかもしれないのだ。
「事態は急を要するみたいですね。仕事が増えましたので私はここで」
「あ、ちょっと――!」
レーナが引き留めようとしたところで。
聖女は振り返りもせずに部屋を出ていく。
あと一歩のところで逃げられてしまった。
もしギルドマスターが聖女に触れられてさえいれば、真相はハッキリと分かっていたはずだ。
悔しさ、焦り、邪龍に対しての驚き。
様々な感情がレーナの中で渦巻いている。
「ギルドマスター、質問の答えは……」
「残念だけど。聖女が邪龍に気を取られて、ボクの質問に集中してる状態じゃなくなってた。触れてたとしても意味なかっただろうね」
「そうですか……」
ギルドマスターは残念そうに首を振りながら結果を伝える。
心を見られるといっても、相手が質問に集中できていなければ効果を発揮しないようだ。
そういう意味では、今回は最悪のタイミングと言えた。
「これからどうすれば……」
「ちょっとマズいね。人間界に邪龍が直接来るなんて考えてなかったよ。時間も全然余裕がないし」
「そ、それじゃあ……」
「ギルドマスター! なんちゅうところにいるんですか! 探しましたぜ!」
二人に追い打ちをかけるように。
もう一度部屋の扉が勢いよく開かれ、何人かの大男がドシドシと入ってくる。
「あっ、やば……」
「何も言わずに仕事を抜け出したかと思ったら! こんなところで油を売っている暇はないっすよ! 今何が起こってるか知ってますか!」
「いや、邪龍の話は今聞いたけどさ……」
「知ってるなら今すぐ戻ってきてください! 会議は既に始まってますから!」
大男によって、ギルドマスターの小さな体は荷物のように担がれる。
これにはギルドマスターも抵抗することができず、簡単に確保されてしまった。
この対応からして、大男たちはギルドの職員なのだろう。
そして、どうやら邪龍の話も本当のことらしい。
「レーナ殿。ちょうどいい。貴女も会議に参加していただけないですかね? 邪龍と実際に対峙した人の意見が聞きたいので」
「あ、レーナは他に用事があるから――」
「……いえ、参加します」
「え? いいの?」
「……はい。今日だけですが」
そう言うと。
レーナは大男の背中とギルドマスターの尻に付いて行く。
今のレーナに、邪龍を無視することはできない。
今日だけ――という条件付きで、特別に会議の席に座ることになった。
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