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聖女の幸運


「聖女様。ギルドマスター様とレーナ様が面会を求めています。どうなされますか?」

「その二人がですか……?」

「その通りでございます」

「…………通してください」


 嫌な予感。

 仕事中の聖女の元へ、何の前触れもなく訪問者が現れる。

 そしてそれは、今ちょうど会いたくない二人だ。

 ギルドマスターとレーナがここに来る理由など、考えなくても分かるほどに限られていた。


 間違いなく刺客のことに感づいている。

 追い返すという選択肢も存在していたが、それはあまりに露骨であるため選ぶことはできない。

 この場面での最適解は、疑われないよう適当に振舞うことだろう。


 聖女はふぅと一息ついて、堂々と扉の向こうにいる二人を待ち構える。


「やあ。忙しいのに悪いね」

「構いません。何の用ですか?」

「実はレーナのことなんだけどさ――聞きたいことがあるらしいんだよね」


 ギルドマスターはスッと横にズレて、後ろにいるレーナを前に歩かせた。

 レーナはいつも以上に緊張している様子だ。

 頬には汗が伝っており、動きもどこか硬い。 


 それでも、聖女の目をまっすぐ見つめている。


「レーナさん、何か御用ですか? 私も暇ではありませんので、できれば手短にお願いします」


「……聖女さん。この前、私の仲間が何者かに襲われました。心当たりはありませんか?」


 レーナは振り絞るようにしてその言葉を吐き出す。

 やはり聖女の読みは当たっていた。

 レーナとギルドマスターは、自分のことを疑っている。


 証拠は残っていないはずだが、犯人に目星をつけた結果が自分なのであろう。

 当然、ここまでは想定内だ。


「申し訳ありませんが、全く心当たりがありませんね。力になれなくて残念です」

「そ、そんなわけ――!」

「いくら私でも、この街の出来事を全て把握しているわけではありません。他の機関を頼った方が賢明でしょう」

「くっ……」


 レーナの不満そうな顔。

 聖女の発言に納得がいっていないらしい。

 拳を握って、悔しそうな表情を隠し切れていなかった。


「それじゃあ、聖女はこの件に何も関与していないってことでいいんだね?」

「そう言っています」


「なら、今度はボクから質問。本当に聖女はこの件に関与していないの?」

「……何のつもりですか? ずっとそう言って――」

「あ、答えなくていいよ。分かるから」


 ギルドマスターは、聖女の言葉を遮って一歩前に出る。


「聖女は覚えてない? ボク、その人の心を少しだけ見ることができるんだよねー。体に触れる必要があるんだけど、ウソ発見器みたいな感じだから軽く協力してよ」

「……初めて聞きましたが」

「あれ? 言ってなかったっけ? ごめんごめん」


 ヘラヘラとギルドマスターは笑いながら。

 聖女の体に触れるため、一歩ずつ近付いてくる。


 いつまでたっても聖女はギルドマスターを好きになれない。

 まさかこの適当な性格に苦しまされるとは思ってもいなかった。


 拒否するべきか――いや、それは自分で嘘だと認めているようなものだ。

 数秒の間に必死で頭を回転させて、この状況を乗り切る策を探すが何も出てこない。


 そんな時。

 勢いよく部屋の扉が開かれる。


「聖女様! 邪龍の反応が確認されました!」



応援、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] えーーー 確かに聖女の幸運だけど
[一言] 目次の題名の「幸運」は聖女の幸運ね! 「幸運」(聖女視点)が良かったかも 「幸運」との目次で何か主人公に幸運がもたらされるのかと思って目次をクリックしたらウザイ聖女が幸運で追及を逃れる話…
[一言] この世界観でウソ発見機はあるのか?
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