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44.TS

 残りの道中は、王城で見せて貰った魔術の魔法陣を解析し、部品化することに努めた。

 系統が同じ術式は重複する部分が多く、効果や目的を同じくする術式もまた重複する部分が多かった。それでも、まだ見たことがない術式も多く、特に対象を拡大させるやり方や威力を上げるやり方は他の術にも応用できることが多かった。もっとも、低威力の術に威力強化を付加したものが、上位の術と大差がなかったりと、必ずしも有用とは限らないため、試してみないことには何とも言えない。俺はともかく、レイルやアンリに使わせるなら詠唱時間や消費魔力も考慮しないと有用性が測れない。


 ***


 途中大雨で遅滞したため、伯爵領に辿り着いたのは十日後だった。

 全員揃って、伯爵の執務室に通される。

 戻りが遅くなることはあの事件の当日に王城から連絡してあったが、その内容には詳しく触れられていなかったにも関わらず、伯爵は大凡のことを既に知っているみたいだった。王都に独自の情報網を持っているのだろう。

 なので、俺たちからは簡単なあらましを語るに止め、後はアルシャークに任せて今日は家に戻ることになった。


 家に戻ると、ケリーが出迎えてくれた。

 ケリーも伯爵から簡単にだが事情を聞いているらしい。勿論、他言無用と念押しされているみたいだが。その内容が、何やらケリーに決意させたみたいだ。夜になって、そろそろ寝ようとしているとこで、ケリーが部屋に訪ねて来た。それも、何故かネグリジェ姿で。──ケリーは男なんだけどなぁ。

 夜這い、ではないだろう。部屋にはレイルもいるし。

 レイルは面白そうにケリーを眺めていた。

 ケリーは俺の前まで来て。暫く迷っていたみたいだが、意を決した様子で、

 「アフロス様、お願いします。私を──女にしてください」

 などと言い出した。

 聞いた瞬間、脳内では『アッー!』って叫んでいた。

 ……は?

 お前は何を言っているんだ?

 脳内で何故か格闘家らしい画像がカットインしてきた。……それも意味不明だ。

 レイルも、ポカンとした表情で固まっている。

 「えっと……、その、意味が判らないんだが」

 俺の返事に、自分の発言が何を想像させるか理解したらしく、ケリーが赤面して慌てた。

 「い、いえ、そういう話ではなくてですね。……アフロス様は、王城で大勢の方の呪いを解いたという話を伺ったもので」

 呪い、ね。王子が施した誘導系の状態異常は、《隷属》と同じく呪縛系に分類されるだろうから、間違ってはいないか。

 「ああ。で、それが?」

 「私の──呪いを解いて欲しいのです」

 ケリーが呪われている? そんな話、初耳なんだが。

 「私は、普通の人族ではありません。古代、人里に降りた天使の末裔なのです。天使は元々、完全な両性具有だったらしいのですが、末裔である我らは、不安定な両性具有なのです。肉体が成長しきってしまえば、どちらかの性で固定されるのですが、それまではどちらにでもなれる状態にあるのです」

 なんかどこかで聞いたことがあるような。脳内でも何か言っている。不死者漫画?

 「それで、ケリーの呪いとは?」

 「跡取りに男子を欲しがった父が、私の性別を男に固定する呪いを掛けたのです。ですが、私は女になりたいのです。私の心は、女なのです……」

 今の状態だと、性同一性障害みたいなものか。

 ついでに、うちに仕える様になった経緯も聞いてみた。

 呪いを掛けられ、家出して遠くまで逃げて来たらしい。当時はまだ十歳、身体能力は高くとも生活していくのは難しく、行き倒れたところを母さんに拾われたらしい。以降、うちに仕えているとのこと。

 「判った。ケリーの望み、俺に叶えられるか試してみよう」

 ケリーに近づき、額に手を翳して常駐プロセスを調べる。

 《加護》と、もう一つ何かがあった。判りやすくて助かる。

 「……いくぞ」

 俺の言葉に、ケリーは小さく頷いた。

 認識したそれを、強制終了させた。

 すると。

 ケリーの体が淡く光りだした。ネグリジェの内側から光が漏れてくる。

 「……あ、あっ……」

 ケリーの声が漏れる。ケリーの体が、徐々に変化を始めた。

 髪の長さは変わらなかったが、身長が少し伸びて。

 やせ細った体が、すこしふっくらとしてきて。

 胸が大きく膨らんだ。

 腰回りも、さっきより大きくなっている。

 光が治まったとき。ケリーの姿はどう見ても女の子だった。

 ……ネグリジェが透けて、色々と目の毒だ。

 「あ……ありがとうございます!」

 ケリーは自分の姿を見て。望みが叶ったことが嬉しかったらしく、俺に抱き付いて来た。

 大きくなったケリーの胸に埋もれる俺を見て、レイルがショボーンAA見たいな顔で、自分の胸を見下ろしていた。


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