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32.リスク

 「たしかにチート臭い能力ではあるけど、そもそも俺にはスキルを魔法陣として読み取ることなんて出来ない。俺が力を得るには、レイルの協力が必要な訳だが」

 俺の言葉に、レイルが目を輝かせた。

 「ふっ。これでチーレム内での私の地位は確固たるものに──あうっ」

 また変なこと言い出したから途中でデコピンの刑に処す。

 「ぐぬぬ……」

 アンリが妙に悔しがっていた。そんなに力が欲しかったのか?

 「アンリ様。我々も、お二方の能力の恩恵に与れるかと」

 セーナがアンリを宥めるが、機嫌は直りそうになかった。

 ここで更に追い打ちを掛けるのも気が引けるのだが、説明しない訳にもいかないか。

 「俺の能力で付与する効果なんだけど、ひょっとしたら俺しか止められないかも知れないんだよ。そうなると、気軽に付与するのもまずいんだ」

 「……どういう意味?」

 「今、俺の能力で俺自身を常時鍛えている訳なんだけどな。身体能力を下げている《負荷》なら、解除出来なくてもあまり支障はないかもしれないけど、魔力と魔術領域を鍛えている《拡張》は色々とまずい。《拡張》が魔術領域を圧迫することで領域の広さと処理能力を向上させているんだけど、これを実行している間は、他の魔術が使えなくなる」

 呪文の詠唱でも、処理に一時プロセスとして実装される。なので、空き領域を占有する《拡張》実行中

は魔術が使えない。

 アンリと魔術の勉強をしているときは、毎回《拡張》を止めている。《負荷》を実装する際に《領域保護》も併せて実装した理由でもある。《拡張》を止めている間に外部からの干渉を防ぐためだ。

 この肉体は、若いせいもあってか頭脳も優秀らしく、今のところ使ったことがある魔法陣を忘れることはなかったので毎回一から実装していた。だけど、回数が多くなってきて面倒に感じてきたところなんだよね。領域サイズにも余裕がありそうだから、今度、プロセスを実装するためのランチャーでも作ってみようかな。

 「アフロスの正妻である私ならいつでも一緒にいるから──あぅっ」

 また変なこと言い出したのでデコピン。いつの間にか正妻に格上げしてやがるし。

 「……ここで一緒に勉強されている間なら問題ないのでは?」

 セーナに問われるが、

 「俺が突然倒れたらどうする?」

 《拡張》を実装した後、俺が解除出来なくなったら、二度と魔術が使えなくなる可能性もあるのだ。

 それを指摘され、セーナも黙ってしまう。

 「だからさ。少なくとも止めることが出来る様にならないと、うかつに付与出来ないんだ」

 「私なら平気。元々、魔力は少ないし魔術もたいして勉強してない。将来的に使えなくても困らない」

 「いや、スキル獲得補助の呪文も使えなくなるから」

 「む……。いえ、それでもいい。チートのためならリスクを負って当然」

 そこまで言われると、俺も反論し辛い。

 レイルの言葉に、アンリが感銘を受けた様な顔をしていた。

 「そうよ……大昔の錬金術師の中には、力を得るために自らの肉体を改造する者もいたと聞いたことがあるわ。あたしもそのリスクを負うから、恩恵を授けて頂戴!」

 いや、そのレベルの人たちがやっていることと比較されたくは無いんだが。

 「……もちろん、アンリ様だけにリスクを負わせる訳にはまいりません。私もお付き合いいたします」

 なし崩し的に、皆に《拡張》を実装することになった。

 《負荷》はアンリが嫌がったので他の二人だけ実装した。


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