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23.侵入者

 武術を学ぶ前段階として、半年ほど運動の基礎訓練を行った。もちろん、平行してアンリと一緒に魔術の勉強も続けている。ちなみに、運動訓練にアンリは滅多に参加しない。

 《負荷》の効果もあり、身体能力も少しずつ伸びていて。今では《負荷》レベルを二に上げていた。

 その後、まずは格闘術を学び始めた。といっても、まだ体が小さいので、当面は体捌きと歩法だけだが。

 剣や盾を持つのはもっと先になりそうだ。

 呪文の即時発動については、発動待機プロセスとして設計したのだが、対象選択に体の状態を組み込む方法が判らず苦労した。勉強中に、そういう対象指定をする呪文の話があったので、教育係の人に実演して貰い、その魔法陣を利用させて貰うことでなんとか完成に漕ぎつけた。当面は、間違って発動しても問題にならないような低威力の呪文だけにしておく。


 ***


 いつもの様に、アンリと一緒に魔術の勉強をした後。アンリが気になることを言い出した。

 最近、この屋敷に外部から侵入している者がいるらしい。

 実害は出ておらず、初めのうちは警備の者も気のせいだと思っていたらしいのだが、怪しい気配を感じると証言した者が何人も出たため、アルシャークさんから気を付ける様に言われたらしい。

 そんな面白そうなことを言われておとなしくしているアンリではなく。自ら捕まえようと言い出した。セーナの魔力感知で捕捉しようと考えたらしい。

 そして、その捕り物に、俺も強制参加させられることになった。


 証言をもとに侵入者の狙いを予想。遺跡からの出土品や古文書などの歴史的資料が保管されている場所付近での証言がいくつかあったので、そのあたりで網を張ることにした。

 数日の空振りの後。

 セーナが何者かの魔力を捉えた。然程大きな魔力量ではなかったが、人がいない筈の場所を移動していたのだ。

 建物の中から様子をうかがっていたのだが、侵入者は中にいる俺たちを避けるように移動を続けて。中から先回りをするように移動していたら、相手は諦めたらしく敷地の外に出て行ってしまった。

 「向こうも何らかの探知能力があるみたいだな」

 「そう……ですね、その可能性は高いと思います」

 俺の呟きに、セーナが答える。

 「逃げちゃったじゃない。どうするのよ?」

 アンリは残念そう。

 「向こうにも、こちらに探知できる手段があるとバレた可能性がある。ひょっとしたら、もう来ないかもしれないけど……罠を仕掛けるってのはどうかな?」


 警備の人員が増えすぎても警戒されるので、俺たちが見つけた侵入者については報告せず。既存の警備の穴(といっても、内側から見たら若干手薄だと判る程度のもの)を、俺たち三人で部分的に埋めて、侵入し易そうな経路を二か所意図的に残すことにした。向こうが設備を無視してこちらの人的配置のみで経路を決めるのなら、俺たちもいるだけで役に立つだろうという判断だ。

 片方には、魔術を使った罠を、もう片方には魔術を使わない原始的な罠を設置しておいた。


 夜。

 俺には侵入者が来たかどうか判らなかった。

 俺の『魔術感知』ではあまり遠くまでは知覚出来ない上、発動中の魔術しか認識出来ない。相手の探知能力が、随意発動の通常呪文ならともかく常駐プロセスでは認識し辛いし、ましてやスキルではそもそも認識出来ない。

 暫く待機していると、セーナが呼びに来た。

 「アフロス様、獲物が掛かりました」


 侵入者が掛かったのは、魔術を使わない罠の方だった。おそらく、人と魔術の感知スキル二つ、もしくはセーナの『魔力感知』の上位版を持っているのだろう。セーナの『魔力感知』では、物に込められた微量の魔力では感知し難いらしい。そっちはむしろ俺の『魔術感知』の方が上だと思う。

 侵入者のところに向かうと、ロープでぐるぐる巻きにされた女の子を足蹴にしているアンリがいた。……何気に人を足蹴にするのが好きだなこいつ。

 セーナが侵入者を担ぎ上げ、アンリの部屋まで運んで行った。……力強いな、セーナ。担がれている女の子は、セーナより大きそうなのだが、セーナは平気そうにしている。セーナが特別なのか獣人種全般がそうなのか俺には判らないが。


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