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異世界右手お祈りゲーミング  作者: ペリ一


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第8話:戦友

「マジごめんなー」


 帰路につく途中、ローリスが唐突にそんな事を口走った。

 ごめんな、か。


「何の謝罪か知らんが、俺はお前がいなきゃ取り巻きに殺されてた。良い働きだった」


「あー、ちょっと違うというか……」


 違うのか。どの話だ?


「ぶっちゃけアレ見た時、適当に右手くんの脚切るなりなんなりして囮にして逃げようと思ってて」


「……いや。お手柄かもな、それ」


「は?」


 これで色々と納得できた。

 俺の初期コストが異様に多かったのは、コイツが味方じゃなかった(・・・・・・・・)からだ。


 その条件下であれば、あのコストの量は納得できる。


 そして同時に思う。

 これは使えるのではないか、と。


 コイツは俺の味方にはならず、コストに影響しない。

 そうすると俺は若干有利な状況でスタートし、有利である限りコイツは一旦俺の援護をしてくれる。


 このシステムに合致した、完璧な相棒になってくれるかもしれない。


「不安そうにすんなよ〜。皆死んじゃったし、右手くんが唯一の戦友っつーか。こっから俺絶対裏切らねーから!」


 ローリスが馴れ馴れしく肩を組んでくる。

 白々しい言葉だ。これは期待できるな。


 さて。相棒が内定したところで今後のことを考えないとな。


「アルバートが拠点にしてた場所ってどこだ?」


「え? 知らねー」


 ダメか。


 正直あの機械兵はかなりヤバかった。

 幸運と一度限りの不正コンボで何とかしたが、あんなのを生み出すような事業を行なっている企業はまともではない。

 掃除屋に駆除させた上で口封じと節約も兼ねて俺らを殺して終わり……なんて考えを持っててもおかしくない。


 ローリスが共通の場所を拠点としていたならアルバートの資金を持ち出してトンズラこく択が取れたのにな。


「お前この仕事を依頼してきたのがどこの企業か知らされてるか? それとその企業から依頼受けるのが何回目かってのも教えてくれ」


「あー……スポーンテクノスってとこだったよ。3度目かな。前の2回はこんなじゃなかった」


 なんだその名前。

 英語混じりなあたり、転移者が設立したやつか?

 しっかし3度目か……。今回の件は、何か目的があっての事なのだろうか。

 単に不慮の事故ってだけなら、素知らぬ顔で報酬を受け取りに行けるんだが。


「いやいや……流石に無いな」


 あの死体の山は何だ? あの規模の機械兵が発生するまでどれだけ廃棄物を溜めれば良い?


 総合的に考えて、やはり今回の依頼は全員殺す予定でやった可能性が高い。

 とんでもねぇ殺人企業だ。一介の掃除屋の手には余る。


「この国の司法ってどのくらい信用できたっけ? 政府にチクれば助かるか?」


「わかんね。どこでどうチクんの?」


 それなんだよな。

 俺はこの世界における学がない。

 この国がどういう回り方をしてるのか知らないし、行政がどういう風に機能してるのかもよく知らない。


 警察のようなものがあり、その支部やら本部の場所くらいは分かる。

 だがいきなり押しかけて……こんな小汚い奴の言葉でまともに動いてくれるのか?


 というか、そもそもの話。


「俺らは脱税に加担すると分かった上で依頼に乗っかってんだよな」


「ええ……その通りです……」


 全身の毛が逆立つ。

 振り返ると、くたびれたスーツを着た黒髪の男が立っていた。


「まさか死人が出るとは。心が痛みますね」


 痩せ型で、背は俺より少し高いくらい。

 武器の類は見当たらない。

 それに俺のスキルが起動しない辺り、一旦敵意も無いと見て良い。


 俺はそれを加味した上で、慎重に口を開いた。

 

「今回の依頼主の方ですか? 助かりましたよ。リーダー格のアルバートが死んでしまって、どう仕事を進行すべきか悩んでいたんです」


「それはまた……お悔やみ申し上げます。私はスポーンテクノス営業部長のウエノと申します。貴方は?」


「掃除屋のミギテ・ピカライトです」


 ウエノが小首を傾げる。

 そして薄い笑みを貼り付けながら言った。


「素敵なお名前です」


 偽名使ってんじゃねーぞコラって顔だな。

 ハハ、それがこの世界においてはガチで本名なんすわ。

 転移前の記憶が穴だらけすぎて、本名すら覚えてねぇもんで。


「右手くんはマジで右手くんだから」


 ローリスがふらふらと俺の隣に立つ。

 いつでも武器を抜けるような構えだ。

 戦うつもりか?


「おい待て待て。依頼主だぞ。態度を改めろ」


「え? マジ? でもさぁ……」


『敵意を検知。システムを緊急起動』


「殺す気じゃん、明らか」


『初期コストは3です』


 カードが排出されると同時に金属同士が衝突する音が響いた。


「信用値が一定を下回りましたので、始末しようかと思いまして」


 ローリスの刀もどきと、ウエノの腕が鍔迫り合っている。

 そのまま睨み合いを続けながらウエノが続けた。


「ローリスさん貴方は我々の依頼を2度こなした実績があります。殺すつもりはありません……しかし、そこの右手何某とやらは信用できない」


 やや遅れてハンドを確認する。


コスト6:魔物:竜頭蛇尾

 竜の頭部に蛇の尻尾を持つキメラ。

《召喚時》

 >コスト3を得る。


コスト2:呪文:遺骸より湧き出る

 この呪文を行使した段階で場に存在している自分の召喚モンスターを1体選ぶ。その召喚モンスターは“破壊された時、闇の子蜘蛛を1体召喚する”を持つ。


コスト5:呪文:盾の召喚

 任意の目標を対象として発動する。

 その正面に盾を設置する。


コスト2:呪文:遺骸より湧き出る(2枚目)

 この呪文を行使した段階で場に存在している自分の召喚モンスターを1体選ぶ。その召喚モンスターは“破壊された時、闇の子蜘蛛を1体召喚する”を持つ。


 うっひょ〜! ゴミハンド!

 ピン刺しの竜頭蛇尾くんさぁ、君初期ハンドに来すぎね? しっかりしてくれよ。


 ざっと30秒は動けない。

 20秒あればコストが5になって盾の召喚が使えるが、その後にコストが軽いカードを引けるとは限らないからな。

 竜頭蛇尾を出せるまで待つべきだ。


 ただ問題が1つある。


「うーん。右手くんだけ?」


「ええ。そうです。もし手伝っていただければ追加の報酬も約束しましょう。無論、今回の依頼の報酬も貴方が独り占めです」


 初期コストの具合からして、コイツは味方判定で戦闘がスタートしている。

 そしてここから裏切られれば……最悪の展開だ。


 というわけで、情けない命乞いでもいいから30秒時間を稼がなきゃならん。


「ウエノさん、俺のことを勘違いしていますよ! ミギテ・ピカライトは本名です! 職場の方に確認とってもらえば分かると思うんですけども! 俺は口が堅いですし! 良いビジネスパートナーに——」


 頬がかっと熱くなる。


「え」


 思わず頬を抑えた手には……血がべっとりと付着していた。


「外しましたか。扱いが難しいですねぇ」


 おいこいつビーム出しやがった!?

 てか刃物とやりあえてる時点でまともな腕じゃねぇ! 魔導工学産の戦闘用義手か何かだ!


「それにしても……パートナー? はは、対等な立場のつもりですか。小汚い掃除屋風情が」


 職業差別かよ。脱税殺人企業がよぉ!

 今からもっと下手に出た命乞いしてやっから見てろ!


「えぇ、大変思い上がっておりまし——」


「もういいって。右手くん」


 ローリスに言葉を被せられ、思わず口を閉じる。

 何? もう死ねって?


「俺はもう裏切らないつったでしょ? んでこいつは右手くんを殺すつもりで一度攻撃してきたじゃんか」


 え? うん……うん? 

 何を言おうとしてる?


「だからさ。もうこいつ殺そうぜ」


 ローリスがそう言って心底愉快そうに笑った。

 おー。なるほど。


「っしゃいコスト溜まりましたぁ! 竜頭蛇尾を召喚ッ!」


 竜の頭部に蛇の尻尾を持つキメラが召喚される。

 直近10秒、コストのとこガン見してたから話なんも入ってきてねぇわ!

 

「うお、何こいつキモッ」


 召喚時効果でコストを3獲得しつつ、ドローしてきた札を見る。

 闇の母蜘蛛。コスト8。

 強いけど今じゃないっすわ!

 

「遺骸より湧き出る。対象は竜頭蛇尾」


「ああ、まんまと時間を稼がれたわけですねッ!」


 そうなんすよ。俺の能力って無駄話に付き合ってくれる自己顕示欲強めの相手に強くってさ。マジ感謝。


 ビームを避けながらウエノに噛みつきにいった竜頭蛇尾を尻目に次のドローを確認する。

 掘削の魔法陣。コスト可変。使用凍結中。


 うーん、やっぱ運営くんはカスやね。

 でもそれ以上に構築にも問題があるね。

 マジ家帰って組み直したい。イライラしてきた。

 降参ボタンがあったら押してるレベル。


 さて、と。

 刀を構えたまま、竜頭蛇尾をぼんやりと眺めているローリスに向けて叫ぶ。


「おいローリスてめぇマジで信用すっからな!? 良いんだな!?」


「おっけー。マジ信じて」


 絶妙にダメそうな言い回しやめてくれよ。

 一旦信じるけども。

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