第27話:連鎖
「いいか? 手加減をしているがどうかなんてシステムに関係ない。つまりは、初期コストはあいつの強さで決まるわけだ」
借りさせてもらっている物置。
ローリスと共にコドク戦の作戦会議を行う。
「まぁミギテくんの主張する通り、有利だったとして……そもそもなんで戦うわけ?」
「良い経験になる、ってのはもちろんある。だがそれだけじゃない」
ローリスが首を傾げる。
「良い経験になるかぁ?」
なる。お前の成長速度は凄まじい。
この歳まですっとろい機械兵を相手にしていたのが本当にもったいないレベルだ。
それはそれとして理由は他にある。
「このままBランクに間に合うと思うか? 間に合わせるにはもう1回ぐらい例外事項に巻き込まれてそいつを解決する、ぐらいの事をやらなきゃらないぜ」
俺はコドクに言われた時、Bくらいまでなら頑張ればギリいけると思っていた。
調べれば調べるほど厳しい。
今からでも条件を変えて欲しい。
「うん。やりゃ良くね?」
「そんなことは滅多に起こらないんだよ」
「起こるっしょ。右手くん、マジで引き運強いじゃん」
あのなぁ。
「言っちゃうけど俺は引き強くねーよ。そこそこだ。つーか引き運が安定してずっと強いやつとかいねーし」
引きで勝った成功体験に釣られて、そういう勝ち筋を追いに行く回数が多いだけの奴ならいる。
ダメだった時は「まぁこれが普通か」と言い、引けた時は「やっぱ俺は引きが強い」と言う。
そんだけ。
「えー。右手くん絶対引き強いって。いっつも酷い目にあってるし」
じゃあ引き弱いじゃねーか。
「つーかそういう話じゃなくてな。コドクと模擬戦的なのをやって、上手いこと力を示せたならCランクでも許してくれるんじゃないのか? って話だ」
「あー……んー、どうかな」
期限の延長でも良い。
引き運に任せるくらいなら俺の強みである、ある程度対等な条件に調整された上で戦えるという点を押し付けにいく。
確実に狙える戦果を狙おう。
「なんならあっちの油断の具合次第で倒せるとも思ってる」
「まぁ倒せたら面白そうだけど」
そう。ざまーみろ、カードおもしれーって思う。
動機の一つだな。
「だからな、今から作戦会議だ。俺が何をやるのか伝える。合わせろ。あとコドクの能力の推測もある程度してみたからお前の所感と合わせて……」
俺達は夜が更けるまで作戦を話し合った。
◇
模擬戦の場所は、奈落院の施設の一角とのことだった。
目の前を真っ暗にされ、案内された先にはアオバのいる場所を思い出すような白い空間に来ていた。
「このままじゃやりづらいだろう」
コドクがスマホを動かす。
すると、白い空間が一気に森林に変化した。
すげぇ。
通話とチャット機能しかないって言ったのめちゃくちゃ嘘じゃん。
「これハリボテっすか?」
「いいや? 実体があるぜ」
コドクが手を広げる。
ブブ、と羽音が耳元で鳴った。
『システム起動。初期コストは50【上限値】です』
いきなりかよ。
ハンドに見えた、あるカードを即座にプレイする。
「盾の召喚」
残りコスト45。
ガラスが割れるような音と共に盾が即座に割れた。
コドクが目を見開く。
「へぇ。一撃で終わりだと思ってたけど」
ハンドは。
“自由自在”ローリス。
コスト3:付与:牙無き者の為の杖
《付与中:10秒経過毎》
>サモンファングを1枚付与対象者の手札に加える。
コスト1:呪文:魔法陣
カードを1枚引く。
コストX:呪文:掘削の魔法陣
山札の上からX枚を見る。その内からカードを1枚選び、相手に見せてから手札に加え、その後山札をシャッフルする。(Xは1以上の任意の数値)
「ふむ、ダメだな」
ゴブレットが無い。即座にハンドを回す。
「牙無き者の為の杖。対象は俺」
残りコスト42。
俺の手元に杖が発生する。
真ん中の牙のような装飾で囲まれた宝玉には、10秒の表記。
牙無き者の為の杖。無限リソースを確保できるカードだ。
このカードの面白い部分は、おそらくローリスにサモンファングを渡せるという点。
まぁコストをどこから払うのか不明なんだけども。
流石に俺が代理で払うのかね。
「魔法陣。適応する魔槍。サンダーボール」
今引きを即叩きつける。
それぞれコスト1、4、3。
残りコスト34。
魔槍が命中、サンダーボールも同様に命中。
だがコドクはその場から微動だにしない。
腕に発生させた甲殻で完全に防いだようだ。
コドクが隙間から顔を出し、嘲るような表情を浮かべる。
「火力しょっぱいな。当てりゃ良いってもんじゃねぇぞ」
いいや。当てりゃいい。
特に魔槍は。
お、ピン差しのストーキングフライを引いたか。
とりあえず一旦出しておくか。
「ストーキングフライを召喚。逃げ回って生き残れ」
コスト1:魔物:ストーキングフライ
獲物に対して執拗に追跡を行う羽虫。
口器を突き刺して攻撃する。
残りコスト33。
羽虫がふいっとその場から離れる。
「おい、何だ今の雑魚そうなの」
次のドローは? おっ、鏡面か。良いね。
「鏡面の魔法陣。コスト8」
コストX:呪文:鏡面の魔法陣
コストXのカードを1枚選び、相手に見せてから手札に加え、その後山札をシャッフルする。(Xはデッキ内に存在するカードのコストの内、任意の数値。コストXのカードは指定できない)
即座に使用。サーチ先はもちろん——。
「闇の母蜘蛛を手札に加えるぜ」
残りコスト25。
「お、おう。よく分からんが、あんま見せない方が良いんじゃないか?」
「見せるのがマナーです」
ドローは魔力盗みのゴブレット。
即座に使用。
「魔力盗みのゴブレット。対象は俺」
コスト3:付与:魔力盗みのゴブレット
付与中:呪文カードでダメージを与えた時、コストを1得る。
残りコスト22。
次のドローはアクアウィップ。
「アクアウィップをプレイ」
コスト2消費。残りコスト20。
「おい濡らすなよめんどくせぇな」
コドクが鬱陶しそうに伸びた甲殻で水を打ち払う。
コストは増えていない。つまりは魔力盗みのゴブレットの効果は起動していない。
やっぱそうか。
魔力盗みのゴブレットのテキストには、ダメージを与えた時と書かれている。
なら、相手にまるでダメージが通らなかった時にコストが入らなくてもおかしくない。
まぁ0ダメージもダメージ判定になるカードゲームもあるにはあるが……少なくとも俺の能力は違うらしい。
「そろそろ動くか」
コドクが肩をぐるぐると回し、こちらを見据える。
うーん。保険用の札も入れてるしやっちまうか。
「闇の母蜘蛛を召喚」
コスト8:魔王:闇の母蜘蛛
《子喰らい》このカードの召喚コストをX支払う代わりに場に召喚されている闇の子蜘蛛X体を破壊しても良い。(Xは8以下の任意の数値)
《無尽の卵嚢》貴方がコストを1得る時、コストを得る代わりに闇の子蜘蛛を1体召喚する事を選んでも良い。
《闇の軍勢》貴方の手札にある、闇の子蜘蛛を召喚する効果、または闇の子蜘蛛の数を参照する効果を含んだカード全てのコストはその時召喚されている闇の子蜘蛛の数と同値分低下する。ただしその際、コストは0以下にならない。
残りコスト12。
コドクが咄嗟に飛び退く。
瞬間、その場所が糸で覆われた。
ちょうど10秒経ち、サモンファングがハンドに加わりつつコストが増える。
コストを得る代わりに闇の子蜘蛛を召喚っと。
「ほう。異界の者か。その身体に何匹宿している?」
「てめぇ……良い召喚獣持ってんじゃねぇかッ! さっきの羽虫は何だったんだよ!?」
別に。
後で使って使い終わったら自壊させるだけの奴だ。
だが1つ訂正させてもらおう。
「召喚獣じゃない。魔王様だ」
「あっそ!」
ローリスが斧を担いで突撃する。
それに合わせてサモンファングをプレイ。
対象はコドク……の後ろを飛んでいるストーキングフライ。
コドクが身を逸らす。
ストーキングフライを破壊。
残りコスト12を維持。
「2枚目が要るんだっての。掘削の魔法陣。コスト1で発動。魔法陣を手札に加える。共鳴の魔法陣をプレイ。対象は魔法陣。魔法陣を手札に加える。魔法陣をプレイ。次に魔法陣をプレイ……よし、引いたな。魔力盗みのゴブレットをプレイ。対象は俺」
残りコスト4。
「サモンファング。対象は闇の子蜘蛛」
闇の子蜘蛛に、半殺しになる程度のダメージ。
ゴブレット×2によりコストを2得るが、1得てもう1は得る代わりに闇の子蜘蛛の召喚に使う。
残りコスト4を維持。
「魔王様。闇の子蜘蛛はなるべく生き残らせる方向で」
「今自分で思いっきり攻撃していなかったか……?」
え? まぁそうっすけど。
「戦略的に必要なんで。お願いします。あーもうこれ使うか。魔導収集者の瓶入り脳をプレイ。対象はそこの闇の子蜘蛛」
コスト2:付与:魔導収集者の瓶入り脳
付与中:誰かが呪文を唱える度、山札の上から1枚を捨てる。それが呪文カードだった場合、次に呪文カードを使用した時にコストを1得る。
残りコスト2。
もうかれこれ48コスト以上消費したわけか。
「あの男、時折お前に蜂を飛ばしている。お前も気を付けろ」
「うっす」
俺を一度誘導した奴か?
もっと全力で数飛ばせば一瞬で俺の意識飛ばして勝ちだろうに。
手加減サンキューな、コドク先輩。




