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異世界右手お祈りゲーミング  作者: ペリ一


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第17話:狂乱

「ローリス、打ち合えそうか!?」


「んー、杖がめんどくさいかなー」


 俺のせいじゃねぇか。

 あの杖さっさとぶっ壊さねぇと。


 コストは計9消費、竜頭蛇尾の効果で3戻ってきて合計4。

 そろそろ5になる。


「闇の守蜘蛛は少し待ちたい……」


 再臨の契約書は対象無しで使用不可。

 焦げた召喚鈴は……。


 コスト2:付与:焦げた召喚鈴

 付与中:対象を30秒間狂乱させる。


 コスト2で実質コスト3つ分の時間を稼げるカード……と思って入れてみたが、結局一度も試せていないカードだ。

 あと相手既にだいぶ狂乱してね?


「俺に使うといきなり頭おかしくなれるのおもろいな」


「右手くんなんか対策ないの!?」


 分かったよ。今切れるハンドはこいつだけ。

 ちょうど今コストが5貯まって、こいつを使った後のコストは3だから、最低限闇の守蜘蛛を壁として出すコストは残る。


「焦げた召喚鈴をプレイ。対象はそこの……えーと……獣骸装」


 突発に閃いてしまい、対象をあの獣武器化野郎——獣の転移者と呼称することにする——ではなく、武器そのものにしてみる。

 おら、竜頭蛇尾。もう一度暴れる時間だぜ。


「グ、うううう」


 効果はすぐに発揮された。

 獣の転移者が呻き声をあげながら杖を手放す。


 竜頭の杖が輝きを放った。

 まずいね。


「ローリス、退避だッ!」


 うっひょ身体が軽いぜぇ!

 普段では考えられない跳躍を繰り返しながら比較的頑丈そうな、アスファルト製っぽい建物の裏に転がり込む。

 

「これ全速力で逃走してコスト貯まってから帰ってきたらどうなるんかな」


『樹界通信中——回答受信——システムを維持できる時間には限りがあるため非推奨——』


 うお、レスポンスが良くなってる。

 結構カツカツな感じで運用してるんだな。

 でもほどほどに逃げるのは普通に最適解じゃないか?

 ガン逃げコントロール。どうよこれ。


「おいアンタ大丈夫か!?」


 ブレス音と獣の転移者の雄叫びを聞きながらハンドを確認していると、先ほど俺たちを呼び止めたおっさんがやってきた。


「大丈夫だよ。つーか死にたくなかったら避難してた方が良いぞ」


「そ、そうか。今回は転移者の派遣が早かったな……あんた、アレだろ? 奈落院所属の転移者だろ?」


 奈落院? えーと……うーん……。


「まぁ近いな! 候補生的なやつだ!」


「そ、そうか。そんなのがあるんだな。勝てそうか? 何か必要な物があるなら持ってくるが」


 おっさん、あんた良い奴だ。


 だが残念ながら俺が欲しいとすれば右手力だ。あとコスト。あとパックポイント。てかパックの引き運も欲しい。

 あと美麗なイラストのカードも欲しい。

 あと普通に金。

 まぁ、つまりは。


「お前に用意できるもんはねーよ。俺らに任せて家で寝とけ」


「家はさっき壊れたよ」


 そっか。どんまい。

 さて、コストが2追加されて合計5になった。

 つまり20秒が経過したってわけだ。

 このおっさんに飛び火すると寝覚めが悪いし、そろそろ顔を出すか。


 表通りは既に瓦礫の海になっていた。

 木造の建物や掘立小屋の類はことごとくが焼け落ち、時折焼き肉のような妙に良い匂いが漂ってくる。

 中心に立っているのは、斧を持った獣の転移者ひとりだ。

 傍には、両断された杖が転がっている。


「お、破壊してんじゃん。再臨の契約書、対象は竜頭蛇尾」


 カードの効果が発揮される。

 字の通りの魔物が飛び出し、獣の転移者の目が驚愕で見開く。


「もう一度武器にしてみろ、獣の転移者!」


 焦げた召喚鈴は引いていない。てか1枚しか入ってない。

 だがアイツにそんな事は分からない。

 ならブラフがきくはずだ。


 獣の転移者が激昂した様子で叫ぶ。


「邪魔をするなッ!」


 獣の転移者が斧を竜頭蛇尾に向けて振るう。

 自壊する10秒を待つまでもなく竜頭蛇尾が両断されるが、その前にアイツの右肩に噛みつき負傷させたようだ。


「獣骸……いや……クソ、貴様ァ!」


 流石にアレを見た後じゃ武器にはしないらしい。意外と冷静だな。


 というか何が貴様ァ、だよ。

 だいぶこっちのセリフだろ。

 杖にした挙句ぶっ壊しやがって。

 というか恨み晴らすって言いながら即斧捨てて便利そうな杖に持ち替えたよな?

 あれ俺普通に引いてたから。


 俺は再び路地に入り込む。

 今度はおっさんはいなかった。流石に逃げたか。


「ちょこまかと、いざ己が狩られる側になったらそのザマか!」


 後方からそんな怒鳴り声が聞こえる。

 程々に距離取って戦うに決まってんだろうが。


 現在のハンドを見る。


コスト3:魔物:闇の守蜘蛛

 子蜘蛛達の子守を行う大型の蜘蛛。

 頑丈な顎を持ち、侵入者を執拗に追い回す。


コスト1:魔物:ストーキングフライ

 獲物に対して執拗に追跡を行う羽虫。

 口器を突き刺して攻撃する。


コスト1:魔物:スケルトン

 骨でできた脆弱なアンデッド。


「微妙だな……!」


 コスト1の魔物カードは、その存在自体が強いと思っている。

 だからある分は全部デッキに入れてある。


 その魔物が注意を引き付け、結果として俺が10秒以上時間を稼げたならコスト以上の仕事をしたことになるからな。

 攻撃系の呪文カードは瞬発性に優れるが、この手の戦いではコスト分の成果を出せるか怪しい。


 だが今は敵の能力を考えるとそうポンポンと魔物を出したくなかった。


「言ってられねぇから出すけどな。ストーキングフライを召喚。突撃すんなよ」


 ストーキングフライを召喚し、一旦俺の傍にいてもらう。

 いざって時の肉壁だな。


 さぁ、ドローは?


「魔界の運び屋か……」


コスト3:魔物:魔界の運び屋

 小柄だがかなりの馬力を持つ魔獣。

《召喚時》

 >カードを1枚引く。


 うーん魔物ばっかりだ。

 デッキ40枚中19枚がそうなので仕方ないといえば仕方ないが。


 てかローリスはどこにいった?

 

 周囲を見る。

 俺を追ってくる獣の転移者。

 そしてその更に後方からこちらに手を振る人影。

 いや手じゃないなアレ。斧か?

 あいつもしかして捨てた斧盗んだ?


「良い手癖してんなぁ」


 杖と獣の転移者がやり合ってる隙にって感じか。

 俺にはできない芸当だ。

 やっぱ転移者と現地人じゃ身体の作りが違うのか?


 所持コストが5になる。


「魔界の運び屋をプレイ」


 召喚時のドロー効果が発動。

 入ってきたのは闇の母蜘蛛と生贄の剣。


コスト8:魔王:闇の母蜘蛛

《子喰らい》このカードの召喚コストをX支払う代わりに場に召喚されている闇の子蜘蛛X体を破壊しても良い。(Xは8以下の任意の数値)

《無尽の卵嚢》貴方がコストを1得る時、コストを得る代わりに闇の子蜘蛛を1体召喚する事を選んでも良い。

《闇の軍勢》貴方の手札にある、闇の子蜘蛛を召喚する効果、または闇の子蜘蛛の数を参照する効果を含んだカード全てのコストはその時召喚されている闇の子蜘蛛の数と同値分低下する。ただしその際、コストは0以下にならない。


コスト8:付与:生贄の剣

付与時:付与された対象を除く全ての支配下にある魔物を破壊し、破壊した分、生贄の剣の攻撃力を上げる。


 うっひょ〜! いきなり1枚採用の重めカード2種でハンドが激詰まりだぜ!


「おら、運び屋とストーキングフライ! 一斉突撃だ!」

 

 獣の転移者が立ち止まり、その2匹に向け斧を構える。

 そしてその背後からローリスが飛びかかった。


「ぐぅうううう! アァ!! 獣骸装ッ!」


 ストーキングフライが殺され、長めの針になる。

 獣の転移者がそれを即座に俺に投擲した。


「うぇっ!?」


 刺さった瞬間に、針の逆側から血がだくだくと出始める。

 慌てて抜くが、傷口から出血が止まらない。


「だから元のカードより強いのやめろつってんだよッ!」


 抜いた針を獣の転移者に向けながら、思わずでけぇ声が出る。

 いい加減にしなさいよ本当に。


「右手くんヤバめ!?」


「やばくねぇ! さっさとそいつ殺すぞ!」


 魔界の運び屋は考え無しに突進するばかりで獣の転移者にはあっさりと避けられている。

 しかし、その回避の隙を淡々と狙い斧を振るうローリスにはかなり手を焼いているようだ。


「クソ、クソ、クソ……」


 一旦圧迫止血を試みてるが、どうにも止まる気配がない。

 あのブレスでぶっ壊れた広場まで戻って傷口焼いて無理やり塞ぐか?

 ああクソ、頭がくらくしてきた。


「ドロー回してアレ引いてくるのが1番丸いか?」


 ライトヒール。対象を選んで治癒するとしか書いてないゴミテキストの3コスト呪文カード。

 保険で1枚だけ入れている。

 頼むぜ、他のピン刺しは散々引いてきたじゃねーかよ。


 そろそろコストが3貯まる。

 闇の守蜘蛛を召喚しよう。そしてトップでライトヒール引いて解決。

 完璧な作戦だ。

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