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怠惰な僕の転生〜公爵家待望の子供って期待されても困ります〜  作者: はやな
第三章 編入試験

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第20話 光属性の回復魔法

 僕は、父とルクリスと共に、獣に襲撃された集落を目指していた。


「ルクリス、情報はなにかあるか?」


「警備していた者によると、まず獣が一体、ノーレストとシルスの境目にある森から、現れたそうです」


「いつも通りだな」


「えぇ。しかし、対処に向かおうとしたところ、更に、もう一体、もう一体と現れたようです」


「複数体か、骨が折れそうだ……。で集落の人達はどうしている?」


「動けるものたちが、怪我した人を担ぎ、隣の集落へと逃げたそうです」


「そうか。なら、オースはその集落で降りて、救護に回ってくれ」


「わかりました――」


 僕は、三十分ぐらい、馬車に身を任せた。


「――そろそろ隣の集落に着きそうだな。オース頑張れ」


「はい!精一杯頑張ります」


 集落が見えてきた。

 一つの家に人が集まっている。

 その家の前に馬車が止まった。

 

 !




「あ゛ぁ」

「うがぁぁぁ!痛い痛い痛い!」

「おがぁぁさぁん」

「死にたくねぇよ!」

「あ、足が!」

「あぁ…あぁ…ぁ」

「痛いぃ」




 !


 大きな悲痛な声が、聞こえてくる。


「オース大丈夫か?」


「大っ、丈夫……です」


「……逃げたりするなよ」


「……はい」


 ふぅ、落ち着け。

 今、僕ができることを。


「では、行って参ります」


「沢山人助けてこい」


 僕は集落へ足を踏み入れた。


 ♢


「怪我人は!?」


 中に入ると血の匂いが充満していた。

 悲痛な声がどこからも聞こえる。

 目を正面に向けると。

 僕にとっては、地獄絵図のような光景が広がっていた。

 

「……うっ。……くっ、落ち着け」


 血の生臭い匂いで、吐き気がする。

 冷静に、冷静に。


 とりあえず。

 ………。

 周りを見渡しても、治療師らしき人が見つからない。

 思わず近くにいた老人に声をかけた。


「すみません!治療師さんはどこですか?」


「どうした……治療師?襲われた集落の治療師は死んで、ここの治療師は高齢で、もう魔力が残っていないぞ」


 ま、まじかよ、やばいじゃないか。


「本当ですか!他に木属性や光属性の魔法が使える人は?」


「いないよ、いたら治療師になってるだろ。あと、そもそも光は――」


 そうだった、木属性は少ないんだったな。

 そして、光属性は木属性より多いと言っても、回復魔法を使いこなすには時間がかかるため、できない人のほうが多い。


「ところで、あんたはなにもんだ、見ない顔だが」


 どうしよう……。

 ここは――。


「僕は、光属性の回復魔法が使えます。なので少しは役に立てるかと――」


「そうか!でも、光属性か……。いや、いるだけマシだ。よろしく頼む」


「では、まずこの列の人から」


 見た感じ、全部で二十人ほどいる。

 

 ……助けられるだろうか。


 いや。


 助けないと。


「では、……この人は腕が……うっ――」


 落ち着け落ち着け。


「ふぅ、『サンシャイン・ヒール』」


「――あっ、傷が!ありがとうございます!」


「お前さん、すごいな!」


「ありがとうございます。よしっ、次!」


「『サンシャイン・ヒール』」

「『サンシャイン・ヒール』」

「『サンシャイン・ヒール』」

「『サンシャイン・ヒール』」

「『サンシャイン・ヒール』――」


 僕は、魔法を使い続けていった。


「――この人の傷、すごい」


 今までの人と比べ物にならないぐらいの傷だ。

 腹の肉を削がれている。

 幸いふくよかな人ってことで助かっているみたいだが。


「もうやばい」


 出血量が半端じゃない。

 魔力はまだある。

 現在僕は、通常の魔法だったら三十回ぐらい連続で魔法を使えることができる。

 これでも、自分の器に追い付いていない。


 そして、今から使う魔法は、結構魔力を使う魔法だ。


「『エクストラ・サンシャイン・ヒール』」


 エクストラ、この言葉を詠唱に入れると、通常の魔法よりもより強力なものとなる。

 このエクストラは、魔力が多い人にしか使えない代物だ。


「やっぱり、魔力をごっそり持っていかれるな」


 あと五人ほど。

 全員傷は、浅めだ。

 よしっ、いけるな――。


「ふぅ、あともう少し」


「『サンシャイン・ヒール』」

「『サンシャイン・ヒール』」

「『サンシャイン・ヒール』」

「『サンシャイン・ヒール』」


「あと……、一人……」


 最後の一人の、足に手をかざして魔力を込める――。


「『サンシャイン・ヒール』!」


「あっ、ありがとう!」


 小さな女の子だった。


「ふふっ、良かった――」


 ――もう、流石に魔力が。


「お兄ちゃん!――」


 意識が――。


 ♢


「んっ、ここは?」


 板張りの天井が見える。

 うぅ、体が重い。


「あっ、お兄ちゃんが起きた!」


 小さな女の子。

 ――最後に助けた子か。


「おっ、起きたか」


 次に声をかけてきたのは、最初に声をかけた老人だ。


「ここは?」


「ここは、集落の端にある小屋じゃ」


「そうですか――」




「グォォォ」

「ぐぁぁぁ――あっ」





 小屋の外から、地鳴りのような鳴き声と、男の太い声の叫び声が聞こえた。


「なんですか!!」


「――実は獣が、この集落にやってきたんじゃ」


「え?」


 獣が来た?


「い、今はどういう状況ですか」


「今、若い男たちが戦っておる。女、子供は、また隣の町に行っておる」


「そうなんですね、……あなた達は?」


 女の子と老人。

 どうしたのだろうか――。

 もしかして


「僕のために!?」


「まぁ、そうじゃな」


「うん、そうだよ!」


「あ、ありがとうございます」


「感謝はいらないよ、だってお兄ちゃん、傷治してくれたんだもん」


 女の子の笑顔が眩しい。


「そういうことだ。ところでお前さん動けるか」


「動けますけど」


「なら、今すぐ逃げるぞ」


「えっ!……いや、はいっ、急いで逃げましょう」


 老人と子供だ。

 僕のために残ってくれたんだ。

 はやく、この人達を連れて逃げよう。


「じゃあ、扉を開けます」


 老人が扉を開いた。

 老人と女の子が外へ出る。

 それに続いて外へ踏み出した。


「うわっ……」


 視線を集落の中心へ向けると、そこには獣と思われるものがいた。


「あれが――」


「獣じゃな」


 僕の身長の三倍ぐらいある体躯に、鋭い牙、鋭い爪、頭に角が生えているのが見える。


「はやく、逃げよう」


 ……視線を逃げる方向に向けようとしたとき。


 


 ……目が


 ――あった。




 判断は一瞬。


「おじいさん、僕が引き付けます、その間に、集落へ!」


「お前さん!?」


「はやく!!!」


「―――わかった」


 老人は苦しい顔をしながら頷いた。


「お兄ちゃん!」


 女の子は、泣いている。


「大丈夫、絶対に。――さぁはやく!」


「行くぞ、嬢ちゃん」


「あっ、……うん……」


 老人と女の子は走り去っていった。


「さてと」


 僕は、こっちに向かってくる獣と目を合わせる。


 よし、魔力は、少しばかりだが回復している。


「ふぅ、よしっ」


 僕は、ポケットから杖を取り出し構えた。


 獣が近づいてくる――。



「『サンシャイン・アロー』!!」



 僕は、獣に向かって、十本程の光の矢を解き放った。


「――いけっ!!」


 それが、獣との戦いの始まりの合図だった。

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