【閑話2】学祭でアドと食べさせやっていたら礼儀作法の先生に見つかって注意されてしまいました
そして、学園祭当日が来た。
我がE組は今回も売上ナンバーワンを目指して頑張っているのだ。
場所はメインストリートの一角をコネと脅しとフェリシー先生の
「フランソワーズさんは目の届くとこにおいておかないと何をするかわかりませんから」
の一言で、本部席の真ん前のど真ん中に置いてくれた。
「うーん、これでは中々強引な売り込みも駆けられないんじゃないかな」
アルマンがいうが、
「強引な売り込みなんて駆けなくてもこのたこ焼き絶対に売れるって」
私は言ったのだが、
「横のクラーケン焼きって何だよ?」
アルマンの声にぎょっとした。
隣は一年E組がやっていて、なんでクラーケンなんて素材があるのよ。絶対に嘘っぽい。
「ジェド、これは何なのよ!」
私が隣で焼いているジェドに文句を言ったら
「姉上がギャオギャオに変な味覚えさせるからだろ。昨日も巨大なクラーケンを取ってきたみたいで、食いきれなかった分が庭に散乱していて、なんとか処分してくれって家令が泣きついてきたんだよ。で、急遽焼くことにしたんだ」
ジェドが文句を言ってきた。
「えっ、でもかぶるんじゃない!」
私が文句を言うと
「フラン、何言っているのよ。こちらは美味しいたこ焼きなんだから、ゲテモノとは勝負しないわよ」
メラニーが言い切ってくれた。
まあ、確かにたこ焼きは美味しいし。
「ちょっと、フラン何なのよこのたこ焼きは」
何故かピンク頭が一つ食べて、文句を言ってきたんだけど……
「普通たこ焼きは『外カリ、中フワ』なのよ」
ピンク頭がいかにも通なように言ってくれるんだけど、そう言えばこいつも転生者だった。
なんかこだわりがあるらしい。
「何言っているのよ。たこ焼きは大阪発祥で『フワフワとろとろ』が基本なのよ。東京のはゲテモノなの」
私は前世のおばちゃんから教わった言葉をそのまま言ってやった。
「何言っているのよ。違うわよ。たこ焼きは初芝のたこ焼き屋のおっちゃんが発明したんだから。大阪のがゲテモノよ。本当のたこ焼きは外がカリッとして中がふわふわなのが基本よ」
うーん、ピンク頭の前世の世界と私の前世の世界は違うんだろうか?
と考えだしたら、
「そういう勘違いするような事を言う人も東京人にはいたから、ピンク頭は騙されているのよ」
横からメラニーがボソリと言ってくれた。
そうか、ピンク頭は騙されやすいんだった。
ヴァンの渡した奴隷の首輪をネックレスと勘違いしていたし……今もしているけれど……
というか、2年A組のピンク頭がなんでここにいるのよ?
そう思ったら横からヴァンが出てきた。
「ローズ、何をさぼっている。お前もさっさと焼くんだ」
ヴァンが文句を言うと
「もう、ヴァンったら人使いが荒いんだから」
と赤くなってヴァンの横に歩いていくんだけど、あの二人は一体どうなっているんだろう?
「ちょっとフラン焦げているわ」
考え事をしていたら焦げたみたいで、
「もう、フラン。あんたは焼かなくていいから」
メラニーに戦力外宣言されてしまったんだけど。
「ええええ! 私もなにか手伝うわよ」
「あんたはクラーケンを取ってきたからもう十分戦力になったわよ。後は用心棒くらいしか用がないけど、先生らの前で変なことしてくる物好きなやつはいないから今日は大丈夫よ」
「そんな事言ったって……」
私が文句を言っている時だ。
「やあ、フラン。暇なら少し周りを見に行かないか」
アドが来て私を誘ってくれた。
「ほら、殿下がきたから、一緒にたこ焼き食べてきて。それが宣伝になるから」
「いやでも、私も焼きたいんだけど……」
理由のわからないことを言われて私はメラニーらに、たこ焼きを2ケース持たされて、外に押し出されたのだ。
「どうしたんだフラン?」
「だって屋台では邪魔だからって追い出された……んが」
そうブツブツ文句を言った私の口にアドがクレープを入れてくれたのだ。
私はそれを噛み切る。
「もう、何するのよ!」
「うまいだろ」
「美味しいけれど、それはアドのクラスのクレープなの?」
「いや、隣のクラスの。フランが甘いもの好きかなって思って」
「じゃあ、私はたこ焼き。はい、あーん」
そう言って今度は少し冷ましたたこ焼きをアドの口の中に入れた。
「まあ」
「なにあれ?」
「あなた知らないの?」
「学園きってのバカップルよ」
周りからなんか言われているんだけど……
「あの殿下の食べた丸いものは何?」
「また、2年E組が変なの作ったんじゃない」
「でも、殿下は美味しそうに食べたわよ」
「食べに行ってみる?」
女たちはたこ焼きに興味を持ってくれたみたいだ。
「でも、フラン様が食べているクレープも美味しそうよ」
「三年A組かしら?」
「三年A組はお化け屋敷なんじゃない」
「その横のB組みたいよ」
私が美味しそうに食べるものだからどちらかと言うとクレープのほうが人気があるみたいだ。
ここはメラニーらのためにも私が食べないといけないみたい。
「ああん。アド、たこ焼きも食べたい」
私が言うと
「えっ、そうか?」
少し、嬉しそうに、アドがたこ焼きを一個取ると私の口の中に入れてくれたのだ。
「うーん、美味しい」
私が満面の笑みで食べた。
皆生暖かい目で私達を見てくれるんだけど、私はここがまだ本部からそんなに離れていないことを忘れていた。
「フランソワーズさん!」
「はい!」
私は後ろを振り返るとそこには目を吊り上げたフェリシー先生が仁王立ちしていたのだ。
せっかくクラスの為にと思ってアドと食べさせやったのに、公衆の面前で破廉恥ですとフェリシー先生に怒られるはめになってしまったのだ。
ああん、アドの馬鹿! フェリシー先生がいるなら教えてよ!
そう思ったが、後の祭りだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございまます。
あまりにもフランの仕草が可愛くてその言われるがままに食べさせられたアドでした……
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