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嘘吐き探偵の魔法戦記(エストラッテ)   作者: 篠風 錬矢
第3章 カムイ編
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月の誓い

こうして、アルカディア、シャンバラ、如月村を揺るがせた事件は幕を閉じた。

アリシアによってヴァールハイトの“死神(デス)”の力が消えた時、ゾンビ達やドラセナやフリードは消滅したらしい。

消滅しただけで、元には戻らなかった。

やはり、いくらアリシアの能力でも死んだ人が生き返る事は無いようだ。

彼ら(死者)への黙祷は、アルカディア総出で行われた。

その後、僕達は学園で開かれたパーティーに出席した。

『代表騎士団及び有志の者の活躍により、被害は最小限に留まったと言える。幸い、学生に死者はいない。皆はまず、生きてここにいる事を互いに祝って欲しい』

壇上でヴィロワールが演説している。

敢えてマイナスな事を言わないでいるのは、魔法学園に通っていながら戦えなかった学生達を慰めるためだろう。

「犠牲者が出なかった訳じゃないのに、良いんですかね?パーティーなんかやってしまって」

後ろから掛けられた声に、僕は振り返った。

「アリシア……って、何その格好!?」

アリシアはいつもの帽子を脱いで銀髪をおろしており、何より肩と胸元の開いた闇色のドレスを着ていた。

「その……どうですか……?」

顔を赤らめながら膝上までのスカートの裾を摘まむアリシアに、僕は頬が熱くなるのを感じた。

「……うん、凄く似合ってるよアリシア。とても綺麗だ」

と、僕は素直に褒める事にした。

「人前でお熱いねー」

レイが茶化しながら現れた。

「全くだわ」

エリンが溜息を吐いて僕を睨む。

二人もドレスを着ていた。

レイは明るい黄色で、エリンは淡い水色だ。

「マスミ、探したぜ」

「アレッド……って、君もか」

アレッドは赤いタキシードを身に纏っていた。

「何がだ?」

「皆制服なのに、何でドレスやタキシード着てるのかなって」

学生達は僕含めて皆制服なので、アリシア達四人が凄く目立っているを通り越して場違いに見えない事も無い。

「代表騎士団は折角だし目立つ為にも着飾れと学園長からの御達しだぜ?」

……マジですか。

「……僕タキシードとか持ってないよ」

「こっちで借りれるから、ついてこい!」

「ちょっと待ってよ!?」

僕はアレッドに半ば引きずられるように会場を出た。


…


僕は白いタキシードを選んだ。

「似合ってます」

「悪くないわね」

「無難過ぎてつまらないね」

「マスミらしいじゃねぇか」

「ちょっと待ってどういう事!?」

……好き放題言ってくれるじゃないかレイとアレッド。

『では、アルカディア代表騎士団は壇上へ!』

ヴィロワールに呼ばれた。

……やっば、全然聞いてなかった。

僕達は全校生徒の注目を浴びながら、壇上に立った。

「何でも良い、この場を締めろ」

「えええ……」

ヴィロワールに丸投げされたアリシアは流石に呆れていた。

「こほん」

アリシアは咳払いして前に進み出た。

『アルカディア代表騎士団・団長のアリシア・ライアータです。今回の事件はかつてなく大規模で、凶悪なものでした。それでも解決に至れたのは、そこにいた全ての人間の尽力あってこそだと思います。戦っていない方も逃げに徹する事で、犠牲者となりませんでした。大切なのは、自分に何が出来るかを見定め、そこに全力を尽くす事だと思います。さて、今回の事件の黒幕を打ち破った彼に締めて貰います』

そう言ってアリシアは、左隣にマイクを手渡した。

……僕!?いやまぁ倒したの僕だけど……ええ!?

『えっと、如月 真澄です。一部の方はご存知でしょうが、僕は記憶喪失になった人間として、この学園に来ました。今では記憶が戻っています。僕が記憶が戻るまで前を向いていられたのも、今回のように勝利を掴めたのも、ここにいる共に戦ってくれた仲間達のお陰だと思います。最後になりますが、失われた命は本来戻りません。犠牲となった方々の分まで精一杯生きることが、生き延びた僕達に課せられるべき使命だと思います。それでは、代表騎士団の挨拶を閉じさせていただきます』


…


壇から下りた瞬間僕達は学生達に取り囲まれ、質問責めにされた。

答えられる事は全て答えたが、誰も黒幕がヴァールハイトとは言わなかった。

最強の魔導騎士としての彼に憧れている人間もいるかもしれないという配慮からだ。

「……ふぅ」

質問責めから解放された僕は、夜風に当たる為にバルコニーに出た。

「遅かったですね?」

先客がいた。

「……アリシア」

アリシアはバルコニーの柵にもたれながら、紫色の液体が入ったグラスを傾けていた。

「……ワイン(お酒)……じゃないよね?」

僕は恐る恐る訊いた。

「パーティーの時くらい良いじゃないですか」

あっけらかんと言い放つ。

「いや良くないからね!?」

「嘘です。グレープジュースです」

アリシアはグラスの中身を一気に煽った。

「……あー、びっくりした……」

……そもそも、学生中心のパーティーなんだからワインを置いてる筈が無いよね。

アリシアが柵にグラスを置いた時、ゆったりとした音楽が流れ始めた。

フォークダンスの為の音楽だろう。

「……マスミ、一曲どうですか?」

アリシアがスカートの裾を摘まみながら微笑んだ。

「喜んで……と言いたいところだけど、生憎僕はフォークダンスなんて踊れないよ?

……カムイ帝国にフォークダンスなんて無いんだよね。剣舞や能楽ならあるんだけど。

「じゃあ私がリードしますから」

そう言ってアリシアは、僕の手をとった。

「……分かったよ」

僕は見よう見まねでアリシアの背中に手を添え、アリシアに合わせて踊り始めた。

……長い髪で分からなかったけど、このドレス背中がむき出しじゃないか!

頬に熱を感じながらアリシアの顔を見ると、耳が真っ赤になっていた。

「……アリシア?」

「……あー、酔いが回ってきたかもしれません」

アリシアが突然ふらついた。

「ちょっと!?」

僕は慌てて抱き止めた。

その瞬間、僕の首にアリシアの腕が回された。

「……え?」

……あ、まさか。

「嘘です」

……やっぱりか。それで、この状況は何だろう。

「マスミ」

「何?」

「貴方は記憶を取り戻し、この戦いも終わりました。一応、貴方との契約は成立したのです」

「あ」

……そういえば、そうだった。アリシアは僕が記憶を取り戻す事に協力する代わりに僕はアリシアの助手になったんだ。

「貴方は自由です。もうカムイに戻るのですか?」

「それは……」

僕は本来、戻るべきなのだろう。

しかし、アリシアの不安げな紫の瞳は僕の本心すらも映しているような気がした。

……まぁ、結局はこうなると思ってたよ。

「いや、もう少しここにいるよ。後で学園長に正式に編入手続きを申し込もうと思ってる」

「!」

アリシアは眼を輝かせた。

「では、まだ私達と一緒に戦ってくれるのですね!?」

「そうなるね」

「では、月に誓って下さい」

「……月?」

空を見上げると、美しい満月が雲から顔を出していた。

「貴方の名前と、私の第二魔法体系(セカンドグリモワール)には両方“月”がつくでしょう?だから、月は私達の絆の証です。これはちょっとした運命かもしれません」

「……そう言えば、初めて出会った時も運命がどうとか言ってたっけ?」

僕は冗談交じりに言ったが、アリシアは顔を赤らめた。

「……あれは冗談だって言ったじゃないですか……」

「僕も冗談で言ったんだけど……」

「……」

「……」

顔が近いまま、気まずい沈黙が流れる。

「……そうだ、月に誓うってどうするの?」

僕が訊くと、アリシアはニッコリと笑った。

「え?」

アリシアは目を閉じた。

……あー、そういう……。でも、今思い返したら結構今更だよね、事務的なモノが多かったけど。

僕は内心苦笑してから決心し、アリシアを抱き寄せて唇を重ねた。


アリシアと、エリンと、レイと、アレッドと、これからも一緒にアルカディアの騎士として戦う事を、僕は心に決めた。

遂に走りきったぜ!

拙いながらも、自分に出来る精一杯で締めさせていただきました。

これまで読んで下さった皆様、本当にありがとうございました!

これにて、真澄とアリシアの英雄譚兼恋愛譚は一度幕を閉じます。

今作において、リア友やTwitterから「面白いけど読みにくい」との意見をいただきました。

次回作より、改行等を用いて改善していきたい所存です。

さて、次回作はいくらかのふわっとした企画があり、最初に固まったモノを投稿します。

恐らく、百合小説になると思います。

それでは、またお会いしましょう!

До свидания!

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