ダブル
決着。次回のエピローグを書いたのち、少しの間内容の整理に入ります。ですので更新は少し遅れることになるかと思われますが、皆さまこの物語のことを忘れないでください。
タートルイマジネーターの砲撃で起きた爆発の中、俺はその炎の全てを吸収して再度ファイヤーコミックマンへと変身した。
「でやぁっ!!」
大爆発のエネルギーを吸収してパワーアップしたファイヤーコミックマン。その跳躍力で一気に飛びかかり、渾身の炎と力を込めた拳でタートルイマジネーターを殴りつける。隙の多い大技ゆえに敵はあっさりと背中の甲羅を盾にするが、俺はそれごとぶち抜くつもりで拳を叩き付けた。
「…!!」
この一発で、せめて甲羅にヒビか凹みのどっちかが出来ていて欲しかったけど、甲羅に目に見えたダメージは残らなかった。だがそれでもタートルイマジネーターは衝撃をこらえきれず前に足が出る。
チャンスだ。俺はその一心で二発目のパンチを同じ場所に叩き込み、あらん限りの炎とパワーでタートルイマジネーターを殴りつける。どんどん前に足が出て行くタートルイマジネーターに、俺は手ごたえを感じて回し蹴りを甲羅に叩き込む。この一撃でぶっ飛ばしてやるつもりだった。
しかし、俺のキックは急に振り向いたタートルイマジネーターによってあっさりと受け止められてしまった。
「何ッ!?」
急に動きの変わったタートルイマジネーターを前に動揺する。そんな隙を逃す敵ではなく、あっさりと足を掴まれて投げ飛ばされ、挙句の果てに空中で無防備状態になっていた俺のボディに強烈なキックをお見舞いされてしまった。
「ぐああああああああっ!?」
蹴り飛ばされて何かに背中をぶつけてしまう。しかしそれでも勢いは止まらず小さなビルの屋上にまでぶっ飛ばされてしまった。
「くっ…!!」
後ろを見れば一緒に飛ばされて来たと思われるひしゃげたコンビニの看板が落ちており、かなりの威力で蹴り飛ばされてしまったことを改めて自覚させてくれた。
「いきなりパワーアップした…?いや、まるで中身がごそっと入れ替わった様な…」
何の前触れも無い敵のパワーアップに違和感を感じる俺。漫画家としては敵のパワーアップイベント事態を否定する気はさらさらないが、こうして目の前で行われてしまうと不愉快だった。
「っ!?」
そんなことを考えていると、突如空から飛び降りて来たタートルイマジネーターが俺目がけて巨大な腕を振り下ろして来た。咄嗟に横っ飛びによけてボードブレードを構えるも、敵は既に両腕をガトリング砲に変えて俺に銃口を向けていた。
「不味いっ!!」
ボードブレードで身を守りつつビルの屋上を飛び下りる。タートルイマジネーターは両腕のガトリング砲と背中の砲台から全力斉射をしながら俺を追ってビルの屋上を駆けていく。そして飛び降りた俺に銃口を向けたその時、飛び降りたふりをしていた俺はボードブレードの急上昇に乗って姿を現し、そして渾身の飛び蹴りをタートルイマジネーターの顔面に叩き込んだ。
「まずは一発!!」
着地と同時にタックルを決め、怯んだ隙を突いて正拳突き。同時にファイヤーコミックマンの最後の炎を全て炸裂させる。
パンチの先から強烈な爆風が叩き込まれて吹き飛ぶタートルイマジネーター。ビルの屋上からコンクリートの地面まで大体ビル五階分の高さから突き落とされていたが、それでも油断は出来ない。
元のコミックマンに戻った俺はボードブレードを掲げて飛び降りる。そして全体重の籠った一刀両断でとどめを刺そうとした俺に、タートルイマジネーターは腕をバズーカに変えてカウンターのパンチを決め、そのままバズーカの弾をゼロ距離で叩き込まれてしまった。
「うわあああああああ!?」
強烈すぎるカウンターを叩き込まれて吹き飛び、背中からコンクリートの地面に叩き付けられる。大ダメージを負って転がる俺を前に、タートルイマジネーターはゆっくりと立ち上がった。
「…流石だな。葦原君。その土壇場での底力には恐れ入る」
「お前は…キャプテンZ!?」
「そうだ。最も、これが本体ではないがね。私はここから遥か遠くの基地の中に居る。このイマジネーターはいわば、我々幹部が現地に直接赴けない時に使う入れ物だ。多少は不便だが、使えないと言う訳ではない」
タートルイマジネーターから聞こえてくる声音は、間違いなくキャプテンZの声だった。それにこの類まれなる戦闘センスに容赦のない攻撃は奴の物だ。
「お前もあのプロフェッサーDとか言う馬鹿と同じ、相変わらずお前らはお天道様の下を歩けない生き方してるみたいだな」
「そりゃあそうさ。だが、プロフェッサーDは人生の先輩だ。例え敵とはいえ、敬意をもって接するべきじゃないか?」
「はっ!あの馬鹿にか?無理だろ」
「…そうか。残念だよ」
本気で残念そうに顔を伏せるタートルイマジネーター。まさか、キャプテンZはここまで大ポカやらかしまくってるプロフェッサーDに本気で敬意を払っているんだろうか。
「本当に、面白い人だよアンタは。こういう関係じゃ無けりゃ、漫画のキャラの造形について取材したいところなんだがなぁ」
「その点については同意しよう。君は本当に面白い。偶然にもナノマシンによる改造を施され、そしてこれまた偶然にも適合率が普通よりもはるかに高かったと言うだけのただの学生が、この私とここまでやれるとはね」
入れ物の身体で戦っておきながらぬけぬけと言い出すキャプテンZ。嫌味か何かかと思ったが、まあそんなことはどうでもいいか。
「ここで手を引いて、普通の人間に紛れて暮らせと言っても聞きはしないだろう?それが一番利口で幸せな人生だというのに」
「当たり前だ。お前らが俺の目の前で誰かを泣かせ続ける限りは、永遠にその喉笛に喰らい付き続けてやる。だから――――」
「この私に勝つつもりだろう?だが、そうは上手くいくかな?」
その言葉と共にタートルイマジネーターは先ほどまでとは比べものにならない速度で殴りかかって来た。咄嗟にボードブレードで受け止める物の、次の瞬間には回し蹴りが脇腹に入っていた。
「があっ!?」
まるで身体が真横に引き裂かれるかのような激痛に見舞われる。だがそれでも倒れる訳にはいかない。左脚を踏み込み、何とか衝撃をこらえるとタートルイマジネーターの足を掴んでジャイアントスイングで投げ飛ばす。
「コンボ技だ!禁じ手だなんて言うなよ!?」
ボードブレードを投げて吹き飛ぶタートルイマジネーターの行き先に刃が来るように固定すると、そのまま飛んでいくタートルイマジネーターに向けて飛び蹴りを放つ。このまま空中で何もせずに頭からボードブレードでざっくり行くか、それとも俺の飛び蹴りをくらってからボードブレードに切り刻まれるか。
どちらかに一つしかない筈だった。しかしタートルイマジネーターは空中で身体を捻り、何と地面に突き刺さっていたボードブレードを蹴り飛ばして回避してみせる。
「なっ!?」
「本当のコンボ技を見せてあげよう。ゲームセンター出禁になっても知らないがね」
そのまま地面に着地したタートルイマジネーターは、飛び蹴りの体勢のままの俺にかかと落としを叩き込んできた。派手に地面に叩き付けられた俺は背中のダメージで呼吸が止まる思いをするが、奴はそんなことなどお構いなしにバウンドした俺の腹に二発目のかかと落としを叩き込んできた。
「があっ!?」
「嵌め技はルール違反だが、元々私は勝つためにはルールなど気にしない質でね!!」
「ぐああああああああ!!」
何度も何度も地面に叩き付けられた挙句、サッカーのボールのように蹴り飛ばされて背中からマンションの外壁に叩き付けられてしまう。
コンクリートの壁にめり込まされ、身動きの取れないまま呻く俺に、タートルイマジネーターは何の感情も見せない様子で全身の彼方此方から生えたバズーカの銃口を向けた。
「サヨナラだ。言い残すことはあるか?」
「残しゃしねーよ…!!」
渾身の力で壁から腕を引き抜くと同時に奴がバズーカを撃つ。そして弾が俺に当たるよりも早く、空から放たれたレーザーがバズーカの弾を撃ち落とした。
「和也!!」
「ヒカリ!!サンキュー!!本当に頼りになるぜ!!」
引き抜いた手を伸ばし、広がっていく爆炎を吸収する。そして今一度ファイヤーコミックマンへと変身すると、有り余る熱で周囲のコンクリを溶かして脱出する。
「…成程。いざというときに助けてくれる仲間がいる強さ。君にピッタリな力じゃないか」
「お褒めにあずかり恐悦至極…!!だが…!!」
「このイマジネーターは炎の力を得た君でも突破できない盾を持つ。果たして彼女の力を借りただけで突破できるかな?」
背中の甲羅に触れつつ呟くキャプテンZ。確かにあの甲羅は厄介だ。ファイヤーコミックマンの力でもヒビ一つ、凹み一つとして出来なかった。サムライモードの刃なら何とか微かに歯を立てることくらいは出来るが、それでもすぐに再生してしまう。
見ればヒカリも空から最大出力のレーザーで狙っているが、恐らくあの甲羅を突破することは難しいだろう。以前言っていた近接形態になれば少しは違うかもしれないが、あの化け物相手じゃ自殺行為だ。上から援護してくれるのならそれでいい。
しかし、これではまずいな。こちらには突破口が無さすぎる。ファイヤーコミックマンでは鋭さが、サムライモードでは威力が足りない。
「だったら、一緒に!!」
俺はファイヤーコミックマンの姿のままボードブレードを掲げ、サムライモードに変身するときと同じように神経を研ぎ澄ます。すると炎に包まれていたコミックマンの装甲が研ぎ澄まされ、燃え盛っていたボードブレードが光り輝く灼熱の光剣へと姿を変えた。やりゃあできるもんだ。
「今ならやれる!ヒカリ、頼めるか!?」
「任せて!!」
ヒカリがまず牽制の一発。相手も分かっているのか背中の甲羅を向けて防御の体勢に入り、レーザーが弾かれた所に接近した俺が光剣を振り下ろした。
「はあっ!!」
一瞬だった。何の抵抗もなく振り下ろされた光剣はタートルイマジネーターの甲羅を真っ二つにし、そしてその直後にヒカリが放った最大出力のレーザーが再生する前の頭を撃ち抜いた。
「…見事だ。出来る事なら、君たちを部下に欲しかったものだよ」
「寝言は寝て言え…」
真一文字に切り払った光剣がタートルイマジネーターを真っ二つに切り裂き、背を向けた俺の後ろで奴は派手に爆散するのだった。
感想待ってます。




