日本ズタズタ計画、開始
今回からちょっと長め。長編って言うか、中編かな?今までの流れを元にした日本ズタズタ計画編のラストです。これそのものはもうちょっと続けます。
『JACK』日本支部。支部長を任されたキャプテンZは部下の報告を受けて作戦室に駆け込む。
「プロフェッサーDは居るか!!」
作戦室に駆け込んで開口一番、怒りの形相で叫ぶ。その声と迫力に部下である一般の研究員や戦闘員は凍り付くものの、プロフェッサーDはのっそりと姿を現して不敵に笑う。
「何かご用ですかな?」
「貴様、葦原和也の行動を私に知らせなかったな!!実験場に彼が来ると知れば、支部全体で対策を練ると通達していただろう!!」
「その必要はないと私が判断いたしました。たかが旧型のイマジネーターだ。奴一人にそこまでの脅威は感じませんな。奴を倒した経験のある支部長殿もお分かりかと思いますが?」
「奴は独りではない!!貴様のせいで、日本ズタズタ計画の詳細が公安に漏れたのだぞ!!」
キャプテンZの言葉にようやく顔色を変えるプロフェッサーD。
「私の送ったスパイが確認したぞ!彼はグランドパークから詳細な計画書と、貴様から聞いたという計画の概要を公安に伝えたそうだ…この始末はどうつけるつもりだ!?」
「し、しかし…!!私はあくまで『JACK』全体の今後を考えて…!!」
「言い訳など聞かん!!こうなっては仕方ない、日本ズタズタ計画の実行を早める!!直ちに準備にかかれ!!処分はその後だ!!」
キャプテンZの号令で動き出す研究員や戦闘員たち。キャプテンZも部下たち同様、急きょ早めざるを得なくなった日本ズタズタ計画の実行の為に動き出し、プロフェッサーDも嫌々ながらも動き出したのだった。
私達が校外学習に訪れていた海映グランドパークは物々しい雰囲気に包まれていた。各所アトラクションに仕掛けられた危険すぎる罠や、一般客たちも含めて行方不明になっていた人々がシャインキャッスル地下で見つかったことがきっかけになり、三条警部補たち公安課の特別チームがグランドパークに踏み込んでいた。
何も知らないアルバイトから、明らかに怪しい従業員たちが確保された。そして、私達は他のお客さんたちと一緒に、直接の被害者を除いて早めに解放されることになった。だけど、解放される直前の簡単な取調べの際、三条警部補は私と和也にしっかりと、『後で連絡するので、天龍寺グループの本社で待っていてくれ』とだけ言い残していった。
そして帰りのバスの中。緊急事態と言うこともあって物々しい車内で、私は後部座席の五人掛けを和也と犬飼君の三人で独占しながら犬飼君の愚痴を聞いていた。
「あーあ。ったくよお…最近変な事件ばっかり起こるんだよなぁ。四月からテロなんてのも何回か起きてるし…」
「そんだけ物騒な奴らが現れる時代ってことだ。もう日本だからってテロと無関係じゃいられないのさ」
「だからってよぉ、俺達ばっかり巻き込まれるのは変じゃね?なあ?天龍寺さん」
「え?私…?」
ここ最近のテロ事件、全ての引き金を引いてきた自覚のある私と和也は思わず言葉を濁して明後日の方向を向く。
悪の組織と戦うヒーローが学校生活を送るのにはいろんな問題がある、と以前和也が語っていたのを思い出す。ヒーロー自身の社会的立場や経済的基盤が確立されておらず、また何をやって来るか分からない敵が居る以上は、周囲に迷惑をかけてしまう危険性とも隣りあわせだ。皆を守るべきヒーローが、個人的な都合で周囲の皆の安全を脅かしてしまえば本末転倒。最悪の場合はアメコミ世界みたいな一般人によるヒーロー排斥もあり得てしまうのではないか。
和也はその点からアメコミヒーロー物のリアリティとトンデモの入り混じった奇妙な作風を語っていたけど、やっぱり私には和也の抱く孤独を感じてしまった。内心、自分の居場所は此処じゃないとどこかで思っているから、そんな漠然とした不安をオタクトークで誤魔化しながら私に語ってくれたんじゃないだろうか。
「まあ、どこに危険があるか分からない世の中だ。お互い、後悔だけはしたく無いもんだな」
「いきなり年寄りじみたこと言うんだからさぁ。ま、そう言うことなら俺もちったぁ甲斐性って奴を見せるか」
「おう。そうしろそうしろ」
スマホを取り出し、彼女のルリちゃんへメールを打ち始める犬飼君。だけどそんなことを言って、自分は甲斐性なんか見せるつもりは一切ないんだろうな、と思って和也を見てみると、ふと私の肩に彼の頭が乗った。
「おおうっ!?」
和也が私の肩に頭を乗せて眠り始めた。いきなりのことに私の心臓が爆発しそうになっていると、犬飼君が奇声を上げて私達の写真をスマホで撮った。
「な、何するの…!?」
「決まってんだろ…へへ。ルリが喜ぶいいネタが取れたぜ」
「消してよ、それ…!!」
「やだね。送信、と」
「あ…!!」
肩に和也を乗せているから変に動けず、抵抗も出来ないまま犬飼君がメールを送り終える。そのことに文句を言ってやろうと口を開いたその時、私のスマホにルリちゃんからメールが。
『キャーっ!!和也ったら珍しく大胆!!これはもう服従のポーズ取ったも同然ですよ!!このまま行ける所まで行っちゃえ!!』
「削除…!!」
指が勝手に削除の所に行っていた。そしてキッと犬飼君を睨みつける。
「和也は疲れてるの。休ませてあげて」
「お、おう…」
犬飼君が知っている訳がないけど、和也は今日だけでも既に三回も変身して強敵のイマジネーターと戦っていてクタクタなんだから。
でも、私がもっと頑張れば和也もこんな苦労しなくても済むのかな。おじいちゃんの作ってくれたフライトスーツのおかげで戦えてはいるし、何体かイマジネーターも倒して来た。だけどそれがどれだけ和也の負担を減らせているのか分からない。
もっと頑張らないと。そう心の中で誓ったその時、和也がふと目を開いた。
「和也…?どうしたの?」
「何か来る…」
「え?」
そう呟く和也が懐の原稿用紙に手を伸ばしたその時だった。バスの後方で爆発音が響いた。
「きゃあっ!?」
「な、なんだ…!!」
バスが急停止する。慌てて後ろを見ると、遥か後方に爆発炎上したバスと黒いヘルメットとライダースーツを着た謎のバイク集団が武器を持ってこっちに走って来ていた。
「不味い…!!」
和也が思わず呟いて変身しようとするけど、私は慌ててその手を止める。こんなところで変身したら、隠して来た意味が無くなっちゃう。
「前からも来る…!!」
「何!?」
誰かの言葉を聞いて前を見れば、同じような集団が高速道路の上下ともに手持ちの武器で制圧しながら接近してきていた。誰を狙っている訳でもなく、ただただ無差別に目に付いた相手を攻撃していく。以前倒した『ヘルズシーカー』とか言う奴らをさらに凶暴化させたような連中だった。
「仕方ないな…!!全員、バス降りて!!慌てるんじゃないぞ!!」
滝先生が自分自身が一番切羽詰まったような顔をしつつ、それでも口調だけは落ち着かせてそう叫ぶ。しかし、それでもただの学生がこの状況で落ち着けるはずも無く、一斉にパニックになったクラスの皆が一斉にバスを降りようと大パニックに陥ってしまう。
「ど、どうしよう…と、とにかく、警察に…!!」
「いやぁ…こいつはちょいとヤバくないですかねぇ…!!見ろよ!!」
「何!?」
犬飼君がパニックになり過ぎて笑ってしまいながらスマホを見せてくる。画面にはニュース速報で、日本中で謎の黒服暴走族が爆発物と思わしきものをばら撒きながら逃亡中、と書かれてあった。
「まさか、アイツら日本中で暴れてるの!?」
「マジで日本滅ぼすつもりじゃねえのかよぉ!?」
「日本ズタズタ計画…か。名前の割にはひどいことするじゃないか。っと、それよりバス降りるぞ!」
和也の言う通り、パニックになりつつも皆はバスを降りていっていた。今なら安全に降りられる、と三人で一緒にバスを降りた。見てみれば、同じように車から降りた人たちが固まっていて、私達も彼らと同じように高速道路の端による。
だけどこの時には既にあの黒服暴走族たちはすぐ傍まで来ていた。
「ヒカリ、何とか周囲の気を逸らせないか?」
「や、やってみるけど…でも、どうする気?こんな大勢の前で戦うの?」
「正体さえバレなきゃいい…」
「ああっ!!」
和也がそう言い切ったその時だった。誰かが指さし、それを全員が見ると、そこには何と停まった車の中で意識を失っている女の人が。
「あ、あんな所に…!!」
「もうヤツらが来るぞ!?」
「ど、どうすればいいんだ…!!」
爆弾を片手に狙いを澄ましている黒服暴走族たち。後一分もすれば私たちを射程範囲内に収めるけど、それよりも先にあの車に取り残された女の人が狙われるだろう。現に先頭の一台が女の人の乗った車に視線を向けていた。
「ちっ!!」
「あ、和也!!」
「おい!どうする気だよぉ!!」
誰も動けない中で、和也が独りだけ走り出した。あの女の人を助けるつもりだ。
「ま、待って…!!」
「お前が待てよ!!行ったってどうにも…!!」
追いかけようとするけど、ミノタウロスとの戦いで破損したフライトスーツが本来の機能を発揮してくれないから私を止める犬飼君を振り払うことも出来ない。
「な、なんだあいつは!?」
「葦原…!?」
見ているだけだった一般人やクラスのみんなが口ぐちに走る和也の背中を見て呟く。だけど和也はそんな人たちなんか気にせず女の人が乗る車のドアを開けてその手を掴んだ。
「…!!」
その時、先頭を走っていた黒服暴走族が爆弾を車に向けて投げる。そして、それと同時に和也が女の人を投げ飛ばした。
「和也!!」
慌てて飛び出し、投げられた女の人をキャッチする私。そしてキャッチ出来て顔を上げると、ついさっきまで和也が居た車の辺りが爆発を起こしていた。
「あ…」
爆弾だけでなく、周囲の車のガソリンにも引火して大爆発を起こしていく。
「か、和也ーっ!!」
黒い爆炎が空に伸びる。犬飼君たちの絶叫が後ろに聞こえる。だけど私は力が抜けて動けないままだった。
消えた。消えちゃった。私の目の前から、また大事な人が。ずっと一緒に居たいと思える人が。
放心状態で座り込む私の前に、黒服暴走族たちが集まって来る。
「フン…ヒーロー気取りは死んだか。まあいい。どの道、全員殺せが命令だからな」
リーダーらしき男が冷酷に呟き、暴走族たちは集まった一般人たちやクラスの皆に銃を向ける。そして最後にリーダーが私に銃を突きつけた。
「さて、次はだれがヒーロー気取りになって死にたい?一人くらいならチャンスをやってもいいぞ?」
銃を突きつけられ、指一本たりとも動かせない人質たちをあざ笑う暴走族たち。だけどその時、私の耳にはヒーローの声が聞こえて来た。
「ならば、この俺がそのチャンスをいただこうか!!」
「何…!?」
どこからともなく聞こえて来た声に驚く暴走族たち。人質たちも茫然と声のした方を探すけど、私にはもう誰だか分かっていた。
「来てくれた…!!」
私の声と一緒に、目に見えない何かが次々と暴走族たちの足や腕を次々と貫きながら飛んでいく。人質たちに銃を突き付けていた奴らは一人残らず無力化され、リーダーは驚きのあまり私に銃を突きつけることすら忘れて後ずさる。
「な、なんだと!?」
見えない何か、いや小さいボードブレードはそのままリーダーの足を貫く。足を貫かれてリーダーは転び、それを見届けたボードブレードは私達の乗っていたバスの車体の上に乗っていたコミックマンの左腕に収まった。
「お、お前は何だ!?」
「貴様ら悪党が苦しめるすべての人の味方、コミックマン!!この俺の前でこれ以上の破壊は許さん!!」
漫画や特撮ヒーローのようにそう宣言し、コミックマンはバスの上から飛び降りる。
「ヒカリ、派手にやったから皆へのフォロー任せていいか?」
「もう。少しはこっちの心境とか考えてよ…」
私は和也が死んじゃったかと思って死にそうな思いだったのに。だけど和也は悪びれもせずに肩を竦めて見せるばかりだった。
「…そうか。お前がそうか。ならぁ!!」
「やっぱり…」
私達の会話を聞いていたのか、リーダーは貫かれたはずの足を即座に回復させて立ち上がる。そしてヘルメットを外すと、金髪に染めたと思わしき青年の顔が現れたかと思うと、すぐさま新しい顔に変わった。
「ハハハハァー!!殺してやるよぉ!!」
顔や身体が異常なほど膨れ上がり、顔は縦に伸びて鼻と口が大きく前に出る。そして足や腕が太くなり、そのほかも赤茶色の装甲で包まれた、馬のイマジネーターへと変身してみせた。
「やってみろ。返り討ちって言葉を、嫌ってほど思い知らせてやるぜ!!」
感想待ってます。




