ホーンデット・サバイバル
校外学習篇、ちょっと長くなるみたいです。書いてて何だか長くなっちゃって。でも、これで二十五話もやれないから長くても五・六話で終わると思います。
校外学習先である海映グランドパークに突如現れた『JACK』の影。テーマパーク中に仕掛けられた死の罠が俺たちを襲うと言う。
「どう?気配、する?」
「いや…ナノマシンの気配はまだないな。多分、どこかに隠れているんだろうが…」
「そっか…こっちも全然ダメ。やっぱりどこかアトラクションに入って調べないとダメなのかな」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず…それしかないな」
とりあえずテーマパーク中を一通り見て回り、敵がどれだけ居てどんな罠を仕掛けているのかだけでも知ろうとしたが、案の定外からでは何もわからない。ヒカリを連れている以上、出来るだけ危険は避けて行動したいんだが。
「ヒカリ、武器はあるか?」
俺の質問に、ヒカリは黙って制服をちょっとつまむ。下に着てるフライトスーツなら、ある程度はイマジネーターとも戦える。
「じゃあ行くぜ。まずはあのお化け屋敷だな」
お化け屋敷の列は不自然に進みが早かった。私達が並ぶと同時に係員が何やらひそひそ話を始めてるし、ずっと私達が最後尾のままだったりするし。
「これ、明らかに罠だよね?」
「ああ。気を付けろ。最悪、俺を見捨てていいからな」
「それだけはしないから。安心して」
よそ様から見れば何を訳の分からないことを言っているんだろう、という目で見られかねない会話だ。普通に考えても、校外学習でテンションが上がって脳内設定をぶちまけてる痛い二人組にしか見えないだろうけど、私達にしてみれば真剣なんだ。
そんなことを考えている間に順番が私達に回って来る。明らかに怪しい従業員に促され、私達はお化け屋敷の入り口に立つ。
「それではお二人共…ごゆっくりとお楽しみくださいませ…」
その言葉を聞きながらお化け屋敷に入る。眼鏡の機能で周囲を見渡すと、どうやら古い病院みたいな設定らしい。
「…へえ。こんな所は日本のも同じなんだ」
外見に思わず呟く私。昔は海外で遊園地に行くと、よくホーンデットハウスに挑戦して泣いて帰って来た思い出がある。そう言うときも、大体は古い病院とか学校っていう設定だった気がする。まあ、人が怖いって思うシチュエーションって大体決まってるんだろうなぁ。
「お化けが怖いってのは万国共通か?海外のホラー映画って、どうもスプラッター映画のイメージがな」
「そう?日本のホラー映画見たことないからあんまり分からないけど、こっちのお化けはどんな風に襲い掛かって来るの?」
「どうって…まあ、例えばだな。こう…テレビの中とかから…」
和也がどううまく説明しようか迷っているのを横目で見つつ、私は眼鏡のサーモグラフィと生命反応で隠れている人間の居所を特定する。
「あ、右から二人来るね」
私がそう言って指差すと、和也はちょっと呆然とした顔で私を見て来た。
「なに?」
「いや…今度、普通の遊園地行こうな。その眼鏡無しで」
「ほんと?嬉しい」
まさかのデートのお誘いに思わずガッツポーズを取っていると、和也は呆れかえった顔で私を見て来た。あれ?何か変なこと言ったのかな?
「はあ…で、誰が来んのかな?っと」
そう言って警戒心を強める和也。改めてここは敵地なんだと思い知った私も眼鏡で相手の情報を探ろうとするけど、ここに来て眼鏡が正常に動かない。
「あ、あれ?」
ついさっきまで探知できてた敵の姿が見えない。まるで、本物の幽霊みたいに。
「どうした?」
「眼鏡が動かなくなって…再起動した方が…」
「ねえ?」
「えっ…」
突然、聞いたことの無い女の子の声が聞こえて来た。いや、女の子なのか、それとも声変わり前の男の子の声なのかな。どっちなのか判別できない独特の声だ。
「ねえ?」
「な、何…?」
また聞こえて来た。声が反響して聞こえて、真後ろにも、横からにも、前からにも聞こえる。慌てて眼鏡を再起動する。だけどやっぱり敵の反応が無い。
「おい、どーした?誰と喋ってるんだ?」
和也が不思議そうな顔をしてこっちを見てくる。
「誰って、この声…」
「ねえ?」
「ほら!また聞こえた!もう、誰なのよ!!」
今度はハッキリ、真後ろから聞こえた。咄嗟に振り向いて叫ぶけど、そこには誰も居ない。
「こっちに来てくれる?」
「っ!?」
その時だった。私の首筋を冷たい手が掴み、凄まじい力で私の身体が持ち上げられる。
「ヒカリ!?」
「い、いや!!和也!!助けて…!!」
フライトスーツのパワーやジェットすら使う間もなく、私は天井裏へと引きずり込まれていく。
「待ってろ!今助けに…!!」
和也が慌てて手を伸ばしてくるけど、その後ろにもう一体の敵が。鍵爪を身に着け、帽子を被った大やけどを負った男。
「和也!後ろ!!」
「ちいっ…!!」
鍵爪の一撃を回避してカウンターキックを叩き込む和也。だけど私が見れたのはそこまでだった。
天井裏に引きずり込まれて意識が薄れていく。最後に想ったことは、日本のホラー映画も見ておけばよかった、ということだけだった。
「ヒカリ…!!くっそぉ!!」
襲い掛かって来るフレディモドキの鍵爪を回避すると、鍵爪は派手な金属音を立てておれの後ろの壁に突き刺さる。
「お前…やはりこのお化け屋敷の仕掛け人じゃないな!ヒカリをどうするつもりだ!!」
「くっくっく…最初にこのホーンデットハウスに来るとはな。ここがお前たち二人の墓場だ。嬲殺しにしてこのホーンデットハウスの新しい仕掛けに組み込ませてもらうぞ」
「…せめてフレディのキャラくらい演じろや!!」
新たな鍵爪を装備して襲い掛かって来たフレディモドキにキックを叩き込む。結構強烈な一撃だったはずだが、しかしフレディモドキは何事もなかったかのように普通に起き上がった。
「無駄だ。私たちは皆、想像力を糧に実体を得た虚像だ。ダメージでは消えない」
「イマジネーターの副産物って訳か?面倒だな…」
どうやらあのフレディモドキや、さっきヒカリを連れ去った悪霊っぽいのも、このお化け屋敷を支配するイマジネーターが想像力を元に零から生み出した存在、コミックマンのボードブレードと同じでいくらでも再生可能らしい。
「さあ死ね!」
「死ぬか!ヒーローは、どんな奴が相手でも負けねえんだよ!!」
鍵爪を避け、カウンターで上段回し蹴りを叩き込む。しかし、フレディモドキは首が高速で三百六十度回ってニヤリと笑った。
「珍しいな。ヒーローは負ける…フフフ。ウェルカムトゥ、プライムタイム!ビッチ!!」
首の骨など皮膚ごとねじ切れたはずなのに、一切気にかけることなく鍵爪で襲い掛かって来るフレディモドキ。あまりの光景に回避が遅れて微かに腹の辺りを斬りつけられてしまう。
「ぐうっ…!!」
「ほら死ね!!今日でヒーローは死んで最終回だ!!」
足が止まった所を何度も鍵爪で切り裂かれ、俺は防御しながら必死に後ずさる。ナノマシンの超再生があるとはいえ、こうも傷つけられては痛い。だからこそ、逆転の一手は確実に打たないとな。
「覚めない悪夢に閉じ込めてやるよ!そこであの彼女共々、永遠に悲鳴を上げて暮らせばいいさ!!」
ついに壁際まで追いつめられ、鍵爪が俺の頭目がけて突き出される。勝ち誇ったフレディモドキの口角が上がる。だが、こんな所で負けられないんだよな。
「残念だったな…お前は悪夢はここで終わりだ」
「なにっ!?」
俺は自分自身の右手が激しく燃える光景を想像し、実際に燃え上がらせてフレディモドキにボディブローを叩き込む。俺くらいのイマジネーターには、これくらいの芸当は朝飯前だ。実際に手が燃えるから使いたくはなかったけど。
「ああっ…!?も、燃える!!燃やされるぅ!?」
「テメエの弱点なんざ、2003年の映画でもハッキリしてるんだよ。消えな」
「いやだああああああああああ!!」
パンチの威力で腹部を貫き、そのまま右手の炎を最大火力で燃え上がらせる。フレディモドキは弱点の炎で燃やし尽くされ、やがて居たと言う痕跡すら残さずに消えていった。
「ちっ…ホラーはやっぱり映画に限るな」
黒焦げになった右手が再生していく様子を眺め、自分でも思わず吐き気がするのをこらえて歩き出す。まずはヒカリを見つけて、ここのイマジネーターを倒す。そのためにも、まずはイマジネーターの居場所を探らないとな。
俺は本来の脅かし用の仕掛けの死体をどかして椅子に座って意識を集中させ、周囲にナノマシンの気配がないか探る。さっきは見つけられなかったが、向こうが力を使ったせいか、今度は微かにだが気配が感じられる。後はヒカリの居場所だが、ノイズが多くて音では判別できそうにない。
「しゃーねえ。イマジネーターぶっ倒して居場所を聞き出すか」
すっかり治った右手を確認し、お化け屋敷の通路を走る。途中で自動対応らしき大量の腕や死体の人形を無視して走る中、俺はようやくイマジネーターの気配のある手術室に足を踏み入れる。
しかしその瞬間、顔目がけて鉈が横薙ぎに振られて俺は慌ててバックステップで回避する。
「鉈ぁ…?こんどはジェイソンか?」
「正解だ。馬鹿は鉈でジェイソンを連想しないが、君は違うようだな」
「…だからホラー映画好きならジェイソンのキャラを演じろよ」
血塗れのホッケーマスクの向こうから聞こえる紳士的で知的な声に思わずがっくりくる。しかし、ジェイソンモドキは不思議そうに首を傾げていた。
「残念だが、そのジェイソンは喋らないよ。今喋ったのは私だ」
その言葉と共に、車いすに乗った青白い顔の青年がジェイソンモドキの後ろから姿を現した。
「アンタがイマジネーターか?」
「そうさ。私はホラー・イマジネーター。その名の通り、私のホラー映画への愛と想像力を糧にして戦うイマジネーターだ」
「そうか。だったらここでお前を倒せば全部解決だな」
ジェイソンモドキを無視して本体の青年に飛びかかろうとするが、予想以上に反応の素早いジェイソンモドキのパンチに邪魔されて吹き飛ばされる。
「まあそう急ぐな。洋画ホラーの怪物対日本のヒーローと言うスペシャルマッチに、ゲストもなしでは寂しいじゃないか」
「あ…!?」
青年はそう言うと、暗かった奥の電気を付ける。そこには、意識を失ったヒカリが立てられた手術台に拘束されていた。
「ヒカリ!!」
「和也…ごめん…捕まっちゃった…」
助けに走ろうとするものの、ジェイソンモドキが鉈を振り下ろして俺を牽制する。
「どけよ。お前の趣味に付き合ってやる余裕はねーんだ」
「趣味じゃない。これは…私の生きがいだよ」
そう言って彼は車椅子から立ち上がり、一瞬にして映画『スクリーム』の殺人鬼の格好に変わり、更に俺の背後には映画『テキサスチェーンソー』のレザーフェイスが。
「三対一…はっ!本物ならともかく、偽物に負けるかよ」
洋画ホラーの中でも特にヤバイパワータイプの殺人鬼たちに囲まれる。ここで『チャイルドプレイ』や『シャイニング』と言った別の意味で厄介な奴らを呼ばない辺りはまだマシかもしれないけども、だからと言って容赦する気は無い。俺は原稿用紙を取り出し、コミックマンへと変身する。
「私たちは偽物ではないよ。正真正銘、本物の殺人鬼たちさ」
「バーカ。本物は映画の中に居るから本物なんだよ」
ボードブレードを引き抜き、三体を順に睨みつけながら構えた。
「来いよ。全員地獄に送り返してやる」
感想・評価・批評・アドヴァイス待ってます。




