ゲームセンターの女帝
二話完結ではありますが、全体的なストーリーの流れは作っていきます。肝心のそれが面白くないのであれば、アドバイスの一つでも貰えると嬉しいです。
「仕入れルートが『JACK』の可能性…?」
『ああ。先日のモールでのテロ事件の犯人だが、まあ動機事態は金目的の三流犯罪者だったが、使っていた装備や爆薬は一級品だ。日本でそれを手に入れるのは簡単じゃない。なので我々で捜査したところ、『JACK』が日本国内に大量の重火器や爆薬を輸入したと思われる情報が手に入った。恐らくだが、今後も君の周囲や、そこ以外でも大規模テロが起こる可能性が高い。注意してくれ。そして、可能であればルートを探して潰してほしい』
「あーまあ、そりゃ放置できない問題ではありますけども…ね?」
『なんだ?問題があるのか?』
「色々とありまして。こっちでも調べておくんで、期待しないで待っててくれ。それじゃ」
三条警部補との通話を切り、俺は思わずため息を付く。面倒ごとばかりが増えていくこの毎日、ヒーローに休日は無いと、ごく当たり前だったことを改めて突きつけられていた。
「和也?」
後ろから聞こえて来た声に、思わずビクっとする俺。
「何やってるの?もしかしてだけど、このまま逃げる気だった?」
「ちげーよ。昨日の件で、三条さんから連絡があったんだよ。で、終わったから戻ろうとしてたとこ」
「ふーん?そっか。じゃ、行こうよ」
逃がさないという意思表明か、ヒカリに腕を組まれた俺はどことなく不安な思いを抱えたまま駅前の大型のゲームセンターに向かう。日曜のテロ事件で助けに行かなかった埋め合わせとして、今週の放課後は毎日ヒカリに付き合うと約束してしまった訳で、初日の今日のメニューはまずは腹ごなしとしてファミレスに同行した後、このゲームセンターで一緒に遊ぶということらしい。
「ゲームセンターなんて初めて。どんなことするのかな?」
「知らないで行きたいっつったのかよ…」
「知らないから行ってみたかったんだよ。それでさ、何かお勧めはある?」
「残念だったな。俺も来ないから知らない」
「そっか」
また失望させたかな、と思いながらも言ってみたが、意外とヒカリは気にした様子もなく進んでいく。どうやら選択肢は間違えてなかったらしい。
内心ホッとしつつ、ヒカリに連れられて行くままゲームセンター内をうろつく。プリクラやらUFOキャッチャーやら、女子が喜びそうな機械には目もくれず奥へ奥へと突き進んでいくヒカリ。一応、チラチラ機械を見ているから吟味してはいるんだろうけど、こういう時って男の俺がセンスの良いお勧めゲームを紹介するべきなんだろうか。でも、そんなの知らないしな。精々あっちのアーケードゲームコーナーなら何とかなるけど、あっちは女子が近づくには色々と危険だしな。
「あ、これで遊ぼうよ」
「あ…こ、これか?」
「うん」
ヒカリのレーダーに引っかかったのは、ちょうど男二人組がプレイを終えたばかりのガンシューティングゲーム『ゾンビサバイバー』。全年齢対象のゲーセンで稼働するには少々グロ過ぎて一時期問題になったことでも有名な奴だ。間違っても、女の子が嬉々としてやりたがるゲームではない。
「本当にいいのか?これで…」
「いいの。ほら、私の言うこと聞くんでしょ?2Pの奴持って」
財布から百円玉を二枚入れ、ヒカリは空いてるほうのコントローラーを渡してくる。まあ、俺としてはちょっと興味あったし、別にいいか。
「レディー…ゴー!!」
「うおっ!?」
いきなり画面に広がるグロテスクなゾンビと、画面上に出る撃てと言う命令に驚き動けない俺をよそに、ヒカリは冷静にコントローラーを構え、手早く正確にゾンビの頭部にクリーンヒットさせていく。
「あ、これ、楽しい…」
「そうかい…!?」
どんどん出てくるゾンビたちを前に、何とか照準を合わせるので精いっぱいな俺の隣で、ヒカリは次々と出てくるゾンビを倒していく。出てくる場所は分かっていないからワンテンポあるが、出て来た次の瞬間には照準を合わせて引き金を引いている。
「レーザーガンの練習にもなるし、これって結構良いかも」
「センス有り余ってんなぁ…オイ…」
既にライフが残り半分以下になってる俺をよそに、ヒカリは自分の画面のゾンビを倒し終えて隣の画面の俺のゾンビを撃ち始める。
「すっげー…!!」
「あれ、最高難易度じゃね!?」
「隣のアレ、彼氏?全然ダメじゃね?」
次第にゲームセンターの客たちがヒカリのスーパープレイに魅せられて集まって来る。お蔭で隣の俺は針の筵状態だ。くそう。本当なら俺がヒカリを守ってる立場なのに…って、それが俺の不始末で出来なかった罰としてここに居るんだったっけ。
「ラスト…っ!!」
とうとうヒカリがほぼ一人で二人分のゲームをクリアして見せ、観客たちは大声で歓声を上げた。
「え?ええっ?これって、何…?」
「俺が聞きてえよ…ナニコレ」
そこでようやく自分が注目されていることに気づいたヒカリが困惑するも、俺としては観客たちの憐れみの籠った目つきが何とも居心地の悪さを感じさせてくれる。
「すげー!!最高難易度ダブルをほぼ一人でやり遂げやがった!!」
「しかも足手纏い抱えてだぜ!!」
「あれ彼氏?あんなのより、もうちょいイイの居るけど、どう?」
「ど、どうしよう…」
ゲーマーたちに詰め寄られ、思いっきりビビッてこっちに近づいて来るヒカリ。流石にこの状況は厳しいらしいけど、いまのこの俺の立場で静止したって聞いてくれるかどうか…。
それでも、一応ヒーローとしてヒカリを守ろうと詰め寄って来るゲーマーたちの前に立ちふさがる。その時、俺はゲーマーたちの間をすり抜けるようにして歩いて行く一人の男を見つける。その男は、明らかにゲーマーたちの懐や尻ポケットから財布を抜き取って自分のカバンに入れていた。
「チッ!そこの!!」
「え?」
「なんだ?」
懐に入れている消しゴムを投げつけ、スリをしている男の後頭部に当てる。
「ギャッ!?」
消しゴムとは言えそれなりのパワーで投げつけたお蔭で、男は思いっきり顔面から床に倒れ込んだ。しかも、その拍子にカバンを落として大量の財布を床にまき散らす。
「スリ確保だ!全員、財布確認しろ!!」
「あ、ああ!?」
「あれ、俺の財布だ!!」
「あの彼氏、肩は良いのか…」
ゲーマーたちに呼びかけると、案の定何人かのゲーマーが財布をスられていた。俺はヒカリと一緒にゲ人混みを掻き分けてスリ男の元に向かう。遠くを見れば、警備員らしき人影も近づいて来ている。
「くそっ…!!」
「諦めて財布を返しな。やけに手馴れてたみたいだけど、常習犯か?」
逃げ出そうとするスリ男。しかし警備員さんは既にすぐ傍まで来ていて逃げられそうもない。
「確保!ご協力感謝します。事情を聞きたいので店長室までお越し頂けますでしょうか?」
「まあ、そのくらいなら…」
「うん。そうね」
ゲーマーたちに囲まれているこの状況から一刻も早く立ち去りたい一心でうんうん頷いているヒカリ。ヒーローが悪党確保してそのまま事情聴取とはアメコミちっくだが、まあこの状況は別にいいか。
「くっそぉ…!!」
その時、スリ男から殺気に近い何かを感じて振り返る。警備員が取り押さえようと近づく中で、スリ男はやけに膨らんでいた服の内側から黒光りする物を取り出した。
「伏せろ!!」
咄嗟にヒカリと近くに居た警備員さんを床に伏せさせる。それと同時に、ゲームセンターの騒音すら掻き消すほどに、耳をつんざく銃声が轟いた。
「へ、へへへ…!!」
「銃!?」
「うわああああああっ!!」
「不味いな…!!」
銃声を聞いた客たちがパニックに陥り、出入り口の限られているゲームセンターの中は一瞬にして阿鼻叫喚の大パニックに陥ってしまった。
俺とヒカリは唖然としてる警備員をよそに、パニックに紛れて逃げ出そうとするスリ男を探す。
「ヒカリ!」
「うん!!」
俺の合図でヒカリは懐から小さな機械を取り出し、逃げ出そうとするスリ男に投げつける。そうとは気づかず、別のブロックで遊んでいたために何も知らない客たちに紛れてゲームセンターから逃げ出したスリ男はそのまま人気のない路地裏に逃げていく。
ヒカリがくっつけた発信機の反応で正確な位置を知った俺たちは、そのまま真っ直ぐスリ男の元に向かう。
「くっそ…!!なんで見つかるんだよ、畜生…!!」
来てみれば、そこには銃を片手に震えるスリ男の姿が。どうやら銃を撃ったのは初めてだったらしい。手も肩も震えている。
「で、でも、これのお蔭で逃げられたんだからよ…!!」
「結果オーライか?」
「なっ!?」
声をかけてみれば、当然ながらスリ男は驚愕と恐怖に染まった顔でこちらを振り向く。その顔は結構可哀想だった。
「何でお前らが…!!畜生ーっ!!」
スリ男は破れかぶれと言った面持ちで銃をぶっ放してくるけど、ナノマシンで強化された俺には届かない。飛んでくる銃弾を軽く空中でキャッチし、何が起きたか分からないという顔をしているスリ男にトドメを刺す。
「残念だけど、悪い事したら逃げらんないんだよな。ほれ」
「がっ…!!」
パンチ一発で吹き飛び、気絶するスリ男。
「あーあ。大丈夫かな?」
「生きてるよ。心音が聞こえる。それよりも、どこでこんな物騒なモン拾ったんだか…」
ぴくぴく痙攣しているスリ男の足元に転がる拳銃を靴で突きつつ、俺は三条警部補からの電話の内容を思い出す。
確か、この辺りに『JACK』が大量の重火器や爆弾を持ち込んだとか言っていたな。
「ちょいと失礼…」
ふと思い立ち、スリ男の服のポケットから彼の免許証を確認する。
「原田威次…年齢十八か。この年で大型二輪の免許持ちとは珍しいな。まさか…」
「どうしたの?」
「ちょっとな。俺の予想が正しけりゃ…あった」
スリ男の右腕の裾を捲りあげ、そこに刻まれた物を確認し、思わず顔をしかめた。
「バイクに絡みついた蛇のタトゥー。間違いない。この辺りで有名な暴走族、『ヘルズシーカー』のメンバーだ」
「暴走族…!?」
「ああ。毎晩あちこちで改造バイクをぶん回し、気に入らねえモンをぶっ壊して去っていく過激な奴らだ…しかし、こいつらがなぜ…?」
感想待ってます。




