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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
46/75

潜入!恐怖の秘密基地

やはり、25話メインで進めていくのは疲れる…次からは二・三話で終わる単発メインにしよう。

「どうした?」

「はっ!葦原和也の死体を確認しました!プロフェッサーDにご報告をと!!」

「よし、よくやったぞ!!入れ!!」

 白鳥怪人が見張りの戦闘員にそう言うと、戦闘員は何の疑いも持っていない感じで基地の扉を開けた。白鳥怪人は中に入って暫く歩くと、俺は懐に忍ばせた原稿用紙を取り出しながら呟いた。

「よおし。上手く潜り込めたぞ」

 『JACK』の秘密基地に潜入するべく、俺は気絶した男子高校生を拘束させてもらったのだが、その時彼の顔を出来る限り正確にスケッチさせてもらった。ついでに、何度も襲って来た白鳥怪人のデザインも一緒に原稿用紙に描き、それを元に俺はナノマシンの力で白鳥怪人に変身して基地に潜入した。そして今度は、あの男子高校生に変身して基地内を捜索中だ。

 俺のナノマシンは、俺が書いた直筆の原稿用紙を目で認識することで、そこに描かれたデザインの物に変身することが出来る。ならそこに描かれたのが人であれば、人に成りすますことも可能と言うことだ。

「さーてと。変装と潜入は男の美学ってな。グフフフ…」

 いつか読んだ大泥棒の漫画みたいに笑いつつ、俺は忍び足で基地を進んでいく。その間何人かの戦闘員や研究者とすれ違うも、完全に白鳥怪人に成りすました俺に気づく奴は居ない。このスリルは中々癖になるな。何なら本気で大泥棒を目指してもいいんじゃないかなって気にもなる。

 そんなことを考えつつ、プロフェッサーDの研究室の場所を探してあっちこっちを行ったり来たり。姿かたちは怪しまれる要素は無いんだから、胸を張って歩けば意外とバレないもんだ。

「おい!お前!!」

 その時、ふと通りすがった男に声をかけられた。

「な、なんダッ?」

 まず声をかけられたことにビックリ。そして、声をかけてきたのがあのキャプテンZだったことにも一つビックリ。つーか、アンタ何やってんだよこんな所で。

「んん?変な声だな。妙に裏返っているが…」

「そ、ソンナこと無いぞ。うん」

「…気のせいか」

 首を傾げつつも頷くキャプテンZ。危なかった。声まではコピー出来ないから焦ったが、考えてみれば昨日日本に来たばかりのこいつが怪人の元の声を知っているはずも無いと思いなおして元の声で喋る。

 キャプテンZもすぐに納得したように引き返していった。

(ふー。助かったぁ…)

 しかし、キャプテンZは急に振り返ってまた声をかけて来た。くっそ、アンタ何やってんだよ。早く行けよ頼むから。リベンジはまた今度にしてやるから。

「あ、そうだ!お前!!」

「な、何でっせろ!?」

「せろ…ニッポンのどこの方言だ…!?まあいい。プロフェッサーDが待ってる。早く南東の研究室に迎え。遅刻なんぞで役立たずと処分されたくはないだろ」

「りょ、了解!!」

「…」

「で、せろ…」

 不審げに見つめるキャプテンZに、満面の笑顔で返しつつ、俺は話に聞いた南東の研究室に走った。色々と危なかったが、これ以上あんなのに時間をかける訳にも行かない。早いとこ水城さんを助け出さないとな。

 基地はかなり広く、暫く走ってようやくプロフェッサーDの研究室にたどり着いた。手のひらに二枚の原稿用紙を隠し、身だしなみには一応気を配って研究室に入る。するとそこには、天本教授ことプロフェッサーDが水城さんの入っているカプセルを見つめながら立っていた。

「戻ったか。実験体第三号。して、奴の死体は確認したか?」

 プロフェッサーDの質問に、俺は取りあえず頷いて見せる。相手はこっちの声を知っている可能性があるからな。

 が、残念ながらプロフェッサーDは俺が頷くタイミングでこっちに背中を向けやがった。

「どうした。返事は?」

 今したっつーの。だけど、これが通用する訳も無い。ここは一か八か。この顔の男子高校生の声を知らないけれど、当てずっぽうで声真似するしかない。

「ハッ!確認しました!!奴の頭は崖から落下した衝撃で割れたスイカのようになっていました!!」

「…そうか」

 そう言って振り返るプロフェッサーD。その顔は怒りで歪んでいる。まさか、バレたのか。

 しかし、プロフェッサーDは一歩一歩近づきつつ、机の上に置いてあった皿を取り上げて見せつけて来た。

「…私の好物がスイカだと言わなかったか?」

「…存じ上げませんでした」

 知らねーよ。と言いたくなるのをこらえて答える。つーか、今スイカはまだ季節外れだろ。なんでカットされたスイカが皿に乗ってるんだよ。

 プロフェッサーDは怒りの表情でスイカを食べながら俺に背中を向ける。結局食うのかよ、と言うツッコミをこらえ、俺はヒカリと爺さんに渡されていた小型の機械を足元に落とす。超小型の自立行動可能なカメラで、これで奴の研究資料を分析するらしい。

 こいつをばら撒けたお蔭で、俺のミッションの半分は終わった。後は水城さんや他の被害者たちを助け出すのみ。

 さて、ここいらで正体を明かしてもいいんだが、今暴れればカメラたちがバレる可能性もある。こいつが離れるのを待つか、一度俺が離れるか…。

 どちらにしようか迷っていたその時、基地にアラームが鳴り響いた。

「侵入者か!!探せぇ!!」

 侵入者の俺に命令するプロフェッサーD。何となく釈然としない思いを抱きながら研究室を出ようとすると、何とまあ既に研究室の外は敵に包囲されていた。

「…バレたか」

「やはりお前か。葦原和也!!」

 出会い頭に強烈なキックを放つキャプテンZ。俺は何とか回避するものの、今の衝撃で変身が解けて本来の姿に戻ってしまった。

「あ、お前!!」

「気づいていなかったとはな、プロフェッサーD!幹部にしては間抜けじゃないの!!」

「ええい!!騙された!!」

 本気で悔しそうに地団太を踏むプロフェッサーD。子供みたいなやつだな、と思いながらキャプテンZとその部下たちを見渡す。

「なぜバレた?姿形は完璧だった自信があるんだが」

「…本物の実験体第三号が帰還したのだ。縛り上げられていた所を親切な中年男性に助けられたそうだ」

 そう言って姿を消す男子高校生。その姿と、親切な中年男性と言う言葉に引っかかるものを感じてしまう。

「あの人かなぁ…」

 助けてくれたあの中年男性かも。そうだとしたらかなり因果な話になってしまうが、もう今更どうでもいい話だ。

「ええい!!やれぇ!!」

 プロフェッサーDの掛け声と共に、大勢の戦闘員が襲い掛かって来る。俺は戦闘員らをキックやパンチで蹴散らしつつ、水城さんの眠るカプセルの所に向かう。

「しまった!奴の狙いは実験体第一号か!!」

 そしてカプセルのガラス部分を思いっきり殴りつけ、力づくで水城さんを助け出す。

「水城さんは返してもらう!!お前ら悪党に、この人は渡さん!!」

 水城さんを小脇に抱えつつ宣言する。しかしその時、俺の脇腹を何かが貫いた。

「馬鹿め。第一号のナノマシン移植は既に完了しているわ。休眠が少ないのは予想外だが、既に自我など残っておらん」

 プロフェッサーDの言葉通り、俺の脇腹を貫いたのは水城さん右手が変化した刀だった。感情を見せない虚ろな表情を浮かべ、水城さんは俺の手から離れて刀を突きつけて来た。

「くっそ…」

 脇腹の傷を抑えながら距離を取る。その間に他の白鳥怪人たちも集合し、洗脳された水城さんに十二体の白鳥怪人と二人の幹部に囲まれると言う最悪の事態に。

「こうなったからには仕方ない…むん!!」

 俺は咄嗟に目の前の机を蹴り上げ、敵の視界を奪った一瞬のすきに原稿用紙を広げて変身する。

「場所を変える!!ボッコボコにされて負けたい奴からついて来やがれ!!」

 ボードブレードを取り出し、基地の天井をぶち破って外に出る。そして少し開けた場所に着地すると、水城さんを筆頭に十二体の白鳥怪人が俺を取り囲むように着地した。

「…早めのリベンジと行くか」

 リーダーと思わしき水城さんが上げた手を振り下ろす。すると一斉に白鳥怪人たちが俺に襲い掛かって来た。

 俺はそれを何とか凌いでいく。刀をボードブレードで弾き、銃弾をジャンプで回避する。しかし奴らの完璧なコンビネーションと、攻撃するたびに強化されていくパワーに次第に追いつめられていく。

「くそぉ…なんてモン作ってんだよ、あのスイカジジイ!!」

 愚痴ってる隙に強烈なパンチが叩き込まれて吹き飛ばされてしまう。背中から木にぶつかって追加ダメージを負うものの、それに反応する時間は無い。三体の白鳥怪人が同時に刀を振り下ろし、俺はボードブレードで何とか防ぐ。しかし三対一のパワー勝負で勝ち目は無く、次第に刀の切っ先がコミックマンの顔先に近づいて来る。

 ヤバイ。このままじゃ、この刀が俺の顔の仮面を貫いて脳まで届いてしまう。

「死ね…!!」

「死ぬか…!!」

 最後の力を振り絞り、何とか三体の白鳥怪人を押し返す。そして追撃の一撃をくらわしてやろうとボードブレードを振りかざしたその時、目の前の白鳥怪人の胸板をレーザー光線が貫いた。

「あ…!?」

 なんだ、まさか三条警部補たち公安の特殊チームか?でも、あの人らはレーザーガンの在庫を切らしたから来れないって言っていたのに?

「和也ーっ!!」

「この声…ヒカリか!?」

 どこからともなく聞こえて来たヒカリの声。でも一体どこから?そして今の一撃は?

 その疑問が解決するよりも前に、次々とレーザー光線が白鳥怪人たちを貫いていく。大ダメージを負った白鳥怪人たちが足を止める。

 そして、ジェットエンジンの轟音が聞こえて来た。

「和也、お待たせ!!」

 そして空から着地してきたのは、何と足から炎を出したヒカリだった。

「…あ?え?何だよそれ?え?ヒカリ、いつの間に改造されたんだ?」

「違うわよ。これ、和也と一緒に戦うために…おじいちゃんに頼んで作って貰ったフライトスーツと…」

 ヒカリの背中に背負ったバカデカいバッグを見る。よく見ると、バッグに偽装されたレーザーガンだ。

「警察の人から貰ったレーザーガンの技術を、天龍寺グループ総出で改良したバッグ型スーパーレーザーガン!!これで一緒に戦おう、和也!!」

「…色々と釈然とはしねーけど、まあ今は猫の手も借りて―んだ。背中を任せる!!」

「了解!!」

 ヒカリが靴裏のジェットエンジンを吹かして飛び上がる。俺はボードブレードを構えて突撃する。その奥で、危機を感じ取った水城さんが白鳥怪人に変身し、十三対二のラストバトルが始まった。

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