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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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三条警部補の推測

何とか一日で投稿出来た!!けどちょっと詰め込み過ぎました。次回から、もうちょっと気合の入ったバトルがあるので。

「ここにも例の連中が現れたぁ?」

 午後五時。旅館の部屋にて、俺はぐったりしている滝先生に『JACK』のイマジネーターと交戦したことを報告した。しかし、滝先生は相当疲れ切っているらしく、備え付けのリクライニングチェアに倒れ込むままで、まともな反応を示してくれなかった。

「その辺りは、俺はもう知らね。一教師としてどうにかできる話でもないしさ…それよりもだ。お前、俺に謝んないといけないことないか?」

「それよりもって…まあ、どんな目にあったかは想像つきますけどね」

「やっぱり知ってたんだな。くっそぉ…何なんだあいつら。一時間近くかけて、一言も娘の安否に関する言葉も無いし、おまけに内申点やら成績やらの問題やら、挙句の果てには世間体やらで入学したことそのものを無かったことにはできないか、とか…そう言う措置は出来ないっつったら婆さんと母親が金切り声で叫び出すし…水城が優等生だったから油断してたぜ…」

「この辺じゃ有名なモンスターペアレント…と言うか、モンスター一家らしいっすよ。あの家で彼女は十五年間耐えてたらしい。彼女の話だけじゃ、どうしても客観性が足りないから言わなかったですけども…」

「嘘つけ!!忘れてたんだろ!!」

「失礼な。それに、教師と言えど水城さんのプライバシーに関することですから。下手に教えたら、彼女に悪いじゃないですか」

 ま、嘘なんだけどね。滝先生もそれは分かっているけれども、だからと言って俺の反論に言い返せずに苦虫をかみつぶした顔でカップ酒を飲み干した。もう勤務中じゃないんだし、今まで散々からイマジネーター以上のモンスターと戦って来たのだから仕方ないか。

「でも、この街に『JACK』が来たことが気になるんですよね。ちょうど水城さんが騙されてイマジネーターにされてしまって、俺や天龍寺グループが保護して、事情を聴いてはるばる彼女の故郷に来たらこれですから。それに、彼女の剣道の師匠が連れ攫おうとしても居ましたし」

「まあそうだよな。だからっつってもわざわざお前の行く先を先回りまでして動くのか?その『JACK』とか言うのは。だとしたら随分とフットワークが軽いと言うか…」

 滝先生の言うことも分かる。確かに、俺は奴らの邪魔を何度もしてきた訳だが、だからと言ってそこまで狙われている訳でもないらしいことはここ一か月の間に感じて来た。どちらかと言うと、せいぜい新型のイマジネーターの性能テストのような扱いをされているような気分だ。

 多分、奴らの本来の活動は俺が関知出来ない場所で、関与出来ない様な状況で行われているんだろう。それはそれで問題だし、いつか潰すことも検討するべきなんだろうけども、だからと言って今の『JACK』に俺の行く先を気にする理由は無いのが事実。だったら、なぜ奴らは此処に現れたのか。

 理由が分からず、暫く唸っていると、部屋の扉を誰かがノックする音が聞こえて来た。

「んん?飯にはちと早いが…」

 怪訝そうに呟き、滝先生は目線で俺に様子を見て来い、と命令する。ちょうど今日一日の取材の成果を確認しようとスケッチブックを開いていた俺は思わず顔をしかめるも、滝先生は既にもう動かない体勢に入っている。ノックしてきた来客者も、焦れたように二度目のノックを始めているから、俺は諦めてため息を付きつつ扉を開いた。

「はいはい。何かありましたか?っと…」

「失礼。この部屋で間違いなかったみたいだな」

「アンタは…駅で会った…」

「三条慎吾警部補だ。奥に居るのは君の担任の滝教諭だね?上がらせてもらってもいいかな?」

「…令状が無いなら歓迎しましょうか。あるんなら締め出しますが」

「なら安心してくれ。まだ君に逮捕状は出ていない」

 いきなり現れた国家権力の狗こと三条警部補は、冗談の通じない真顔で部屋に入って来た。

「おいおい、何だ何だ?」

「滝教諭ですね?私は…」

「公安課の刑事さん。それで、何の用ですか?逮捕状は無いって話を信じて通したんですから、まさか駅での挨拶に来たなんてオチじゃないですよね?」

 いきなり現れた刑事にびっくりして腰を抜かす滝先生をよそに、三条警部補はスーツの懐から何枚かの写真と資料を取り出して机の上に置いた。

「君の事情は大体知っている。君の知り合いで私の友人の千葉刑事から聞いてね。我々公安が長年にかけて追跡しているテログループ『JACK』と、不本意ながら戦っていると」

「ええまあ。不本意ながら…って、警察も奴らを追ってたんですか?」

「当然だ。一部の国家や軍は彼らと繋がっているが、ICPOを中心とした世界中の警察機構は奴らを壊滅させるべく動いている…最も、一般市民には知られないよう情報統制はさせてもらっているが」

 初めて知った事実に唖然とする。まさか、警察が奴らを追っていたとは。まあだからと言って信用できるはずも無い。俺やヒカリは何度もどこかの国家機関から襲われてきた経験があるからには。

「現状、日本政府及び我々公安は君をどうこうするつもりはない。これでも君たちを狙い我が国に侵入してきた工作員の半数は事前に検挙してきた。まあ、アメリカのCIAやロシアのKGBなどの工作員は政府間協議で検挙出来ないので通さざるを得なかったが…」

「うわぁ…知りたくなかったその情報…漫画のネタにしてやる」

「国家機密だ。まあ、その程度の暴露など陰謀論で片付けられる問題ではあるが」

「…は、話についていけねー」

 ここで滝先生が脱落した。ふて腐れたように布団に潜り込み、一瞬会話の間が空いた。

「…話を戻そう。君は今から一時間前、剣道場を襲う『JACK』のイマジネーターを撃退したな?」

「まあ、隠したってしょうがないか。戦ったよ。倒しきれなかったけどさ」

「知っている。奴の目的は師範の神野龍一郎氏の誘拐。その理由は今の所不明と言う訳だな?」

「…盗聴してるんじゃないだろうな?」

「していない。組織犯罪に関与していない一般市民に対する盗聴は法律で禁じられている。それよりも、『JACK』の次の手は?次はだれを、どんな手段で襲うのか?それともに、誰かをではなく、どこを襲うのか?私達はそれを事前に察知し、最終的にはこの街に現れた幹部を確保しなくてはならない。可能であれば、君の協力を頼みたい」

 突然の提案に、思わず俺は自分を指差して首を傾げる。すると三条警部補はごく当たり前と言った顔で頷いて見せた。

 参ったな、まさか公安の刑事に頼られるとは。確かに日本の警察に追いかけられた経験は無いからそこまで悪印象を持ってる訳じゃないけど、だからと言って警察の狗になりたくはないし。

「まあ、今後の協力体制を築き上げたいと言うことなら天龍寺グループに依頼する。だが今回は、この街での事件を解決するための一時的な協力と言う形を取りたい。今回の事件が無事に解決し、今後も同じように活動したいと言うことなら、その様に天龍寺亨に進言してくれ」

「そう言うことなら別にいいけど…でもあの爺さん俺の言うことなんか聞かないんだよなぁ」

「それは私達は知らない。それよりも、今回の事件だ。新しい幹部、コードネーム『キャプテンZ』はこの街で何をするつもりなのか。なぜ神野龍一郎氏を狙ったのか。その資料以外で何か情報は無いのか?」

 渡された資料をパラパラめくりつつ、俺は改めて日本警察の調査能力に舌を巻いていた。こっちが知っている情報は大体揃っているし、水城さんにナノマシンを注射したらしい天本教授の顔写真と個人情報に至っては初めて知る事実だった。

「天本教授のコードネームは『プロフェッサーD』、か。任務は新型ナノマシンと新型イマジネーターの開発…この新型って奴は?」

「私達も知らない。何か知っていることはあるのか?」

「多分ですけど…最近戦った白鳥型のイマジネーターがそれだ。ただでさえ強力なのに、素体にされた人間の身体機能や強みを増幅させて、それを同型のイマジネーターにも反映させてるっぽい奴だ。お蔭でドンドン強くなっちまって困ってたんだが…主犯はこいつか。厄介なものつくりやがってまあ」

「そうか…新型の機能はそれか。だとすれば奴らが武術の達人を誘拐しようとしたことには説明がつくが…」

 俺の説明を聞いて頷く三条警部補。どうやら有益な情報だったらしい。それを小耳にはさみつつ、俺はその他の資料を流し読みしていく。動体視力と記憶力にはいささか自信があるので、一通り目を通しさえすれば必要な情報は確保できる。

 そんな中、ふと俺の手が止まった。

「こいつは…」

 写真に写っていたのは、紛れも無くあの駅で俺を助けてくれた胡散臭い外国人だった。

「キャプテンZ。私も駅でチラリと見たが、あの場で取り押さえる訳にはいかなかったからな。一般市民を巻き込みかねない」

 三条警部補の言い訳じみた解説を聞き流しつつ、俺はあの時見せたキャプテンZの鮮やかな手並みと異様な迫力、そして圧倒的だったパワーを思い出す。確かにとんでもない強さだったし、事態解決への最終手段であるべきはずの暴力に到るまでのハードルの低さは感じ取れたが、今思い返すと不思議なことも多かった。

「でも、あの時はナノマシンの気配は無かった…」

「奴は未だに無改造だと言うのか?あり得ないな。確認されているだけでも三度の紛争地帯を生身で生還した男だ。何らかの肉体改造を施されていると考えるべきだろう」

「…まあ、その辺りは俺の知ったことじゃ…」

 頭をかきながら答えたその時、俺はここに接近してくるナノマシンの気配に気づいた。目つきが変わった俺に三条警部補も気づき、ふて寝を決め込んでいた滝先生を無理矢理たたき起こす。

「な、なんだ!?」

「敵襲の可能性ありなので、避難して頂きます」

 三条警部補がそう言うと同時に、旅館の彼方此方から誰かが走り出す音が聞こえて来た。仲居さんたちに紛れて何人かの男女が主導している辺り、三条警部補の部下たちが居るのだろうか。

「な、何が何だか分からんが、葦原!ヤバくなったら即逃げろよ!!怪我することなんかないんだからな!!」

 滝先生はそれだけ言い残して三条警部補に誘導されるがまま避難していく。ありがたい助言を背中で聞き届けつつ、俺は机の上に置いてあった原稿用紙を掴み、炎と共にコミックマンに変身するのだった。

感想待ってます。

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