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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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43/75

キャプテンZ

二日ぶり。今後はこのペースが基本になります。

 コミックマンへと変身し、窓を開けて外へと出る。都会に慣れた目ではよく見えない夜の田舎町だが、ただでさえナノマシンで強化された視覚は変身したことでさらに強化されている。そこに百メートル先に落ちた針の音をも聞き取る聴覚が合わさり、俺は闇夜に擬態して襲い掛かって来たカミキリ野郎の喉笛をつかみ取った。

「おおっと、不意打ちするには相手を選ぶんだな」

「な、なぜだぁ!?なぜ俺の居場所が分かった!?」

 首根っこ掴まれていると言うのに、元気よく喚くカミキリ野郎を中庭に投げ飛ばす。俺には相手がイマジネーターだからって、このまま弄る趣味は無いからな。

「ええい!奇襲作戦は失敗かぁ!!ならお前たち、やれえ!!」

 カミキリ野郎の掛け声で、またしても闇夜に紛れていたあの覆面男たちが姿を現した。この中庭に居るだけでも十、二十。気配からして恐らく外には三十程。

「数で攻めようたってそうはいかんぜ。百人で来ようとも全員倒してやる」

 俺のセリフを合図に、覆面男たちが一斉に飛びかかって来る。俺はそれらを軽く回避し、近づいて来る敵をパンチやキックで倒していった。この程度、ボードブレードを使うまでも無い。

 次々と倒れて黒い靄に変っていく覆面男たち。最後に残った一体を蹴り飛ばすと、その覆面男は黒い靄に変わるよりも一瞬早く真っ二つに切り裂かれた。

「死ねぇ!!」

「ジェイソンかよお前は!!」

 覆面男の影に隠れ、カミキリカッターを高速回転させながら待機していたカミキリ野郎。流石に戦いながら相手の擬態を見破れなかった自分のうかつさを呪いつつ、何とかカミキリカッターを防ぐべくボードブレードを出現させようと左腕に手を置く。

 その時、俺の真後ろから放たれた強い熱を持った光のような物がカミキリカッターを撃ち抜いた。

「ギェエエエエエエ!?」

「効果確認!!一斉攻撃だ!!」

 振り向けばそこには三条警部補と、その部下と思しきサングラスを付けた黒いスーツの大人たちが。そしてその全員が、手に銃のような物を持っていたが、まさか今の光はあれから?

 俺の疑問はすぐに解決した。三条警部補の合図と共に、部下たちが引き金を引く。すると銃口から銃弾では無く強烈なレーザーが発射され、カミキリ野郎はその全身を焼かれて悲鳴を上げた。

「一体どこの世界の日本警察だよ、あんたら…」

「特注の新型ガン…まあ、SFに出てくるレーザーガンだ。今の所は一丁につき一発しか撃てないが」

 サングラスを外しつつ三条警部補が涼しげな顔で言い切ってみせた。よく見てみれば、三条警部補やその部下たちの銃は既に銃口の辺りが熔けかかっていて、二発目が撃てないのは良く分かった。

「ガガガ…危険。危険。日本警察がコこマでの戦力ヲ保持していルとは思わナかったゾ」

「ん?」

 まだやられていなかったらしいカミキリ野郎。しかし、声が今までとは微妙に違う。何というか、今までの若い男の声から老人みたいな嗄れ声になっていた。

「プロフェッサーD…!!」

「公安ノ若造め。お前タちが本格的に稼働を始めたのデアれば、我らも本気で動かセてもラおウ」

「なに!?」

 最早自我すら残っていないカミキリ野郎は、天本教授ことプロフェッサーDの出した命令の通り飛び上がって行く。俺はなんだか嫌な予感がして今度こそボードブレードを取り出した。

「悪いけど、外の奴らの掃除は任せていいか?」

「任された。我々は航空戦力は持っていないので、今後の作戦は君に全て任せる」

「勝手だなぁ。全く」

 ボードブレードを移送用にまで巨大化させ、その上に飛び乗る。そして一気に加速すると、カミキリ野郎がズタボロの羽根でありながら中々の速度でどこかへ向けて一直線に飛び続けているのが分かった。

「待て!!カミキリ野郎!!」

 更に加速し、カミキリ野郎の背中に飛び乗る。二人分の重量に耐えられるはずも無く、カミキリ野郎は羽ばたくのをやめて落下していく。

 二人一緒に落下していく中で、カミキリ野郎は右腕を再びカミキリカッターに変えて斬りかかって来る。

「再生は俺の専売特許じゃなかったのかよっ!」

 何とか上体を逸らして回避し、手元にボードブレードを呼び戻す。そして二度目のカミキリカッターが俺の体に当たるよりも先にキャッチし、ギリギリでカッターを防いだ。激しい金属音と火花が散り、俺は奥歯が浮くような感覚に思わず呻きながら逆に押し返した。

「あーもう!!この音嫌いなんだよっ!!馬鹿真面目にそんな音まで増幅して聞こえやがって!!」

 何度目かになる自身の強化された聴覚に愚痴りつつ、再び羽ばたいて加速したカミキリ野郎を追ってボードブレードに乗る。

 今度はそれ程距離を放された訳じゃなかったので、かなり早い段階で追いつくことが出来た。このままボードブレードを投げつけて背中に突き刺してやろうかとも思ったその時、強化された聴覚が近づいて来るジェットエンジンの音を聞きつけた。

「あ…?」

 マッハの速度で接近してくる戦闘機は、そのまま俺の体を真っ二つにしようと飛びかかって来た。

「うぉ!?」

 慌ててボードブレードを操作して回避するも、ジェット戦闘機は人間が乗っているとは思えない様な軌道で方向転換し、カミキリ野郎が操縦席に乗り込んだ。

「無人機があんだけ動けるのかよ…!?本当はタイムマシンも出来てるんじゃねえのか!?」

 カミキリ野郎が乗り込んだジェット戦闘機を前に、俺は自分の常識を疑いつつ突撃する。ジェット戦闘機相手じゃ速度じゃ間違いなく勝てない。なら、相手が加速するよりも先に行動不能にしてやる。

 俺の作戦は大体合っていたと思う。が、カミキリ野郎はジェット戦闘機に搭載された機関銃をぶっ放してきた。

「くそぉ!!人相手に機関銃ぶっ放しちゃダメで習わなかったのかよ!?」

 所かまわず連射される機関銃の弾を避けるべく、上下左右ジグザグに飛び回る俺。何発かヒヤッとする所を弾が飛んでいったが、それでも相手の銃弾が尽きるまでは何とか避け切ってみせた。

 弾切れを悟って移動しようとするカミキリ野郎だったが、俺は弾が飛んでこなくなるとすぐさま飛びかかりボードブレードを操縦席を覆うガラスごと突き刺した。

「ガガガ…葦原和也…流石の戦闘力ダ。我らの元デもっと強くナル気は無いのか?」

「あるかよ。バーカ」

 ボードブレードを思いっきり上に切り上げ、体内のナノマシンがオーバーヒートを起こしたカミキリ野郎の怪人体は爆発。その爆発に連鎖してジェット戦闘機も爆発四散するが、その破片がこのままでは地上に落下しかねない。

 ギリギリで助け出したカミキリ野郎の元になった青年を抱きかかえつつ、俺は一番大きい破片にボードブレードを突き刺し、そのまま大気圏外まで打ち上げた。これなら何かあったってバレることも無いだろ。

 戻って来たボードブレードで次々と破片を宇宙に捨て、地上に落下する寸前に俺は何とか間に合ったボードブレードに乗り込む。そして見つけた採石場らしき場所に緩やかに着地すると、気絶している青年を地面に寝かせた。

「あー疲れた。っと、こいつはどーするのかね?この辺で拉致された一般市民だったらいいんだが…」

「それはどうかな?」

「何っ!?」

 その時、俺は強烈な一撃をくらって岩盤に背中から叩き付けられていた。

「がっ…!?」

「油断したな。ヒーロー」

 痛みとショックでかすむ目を凝らして敵を睨む。そこに居たのは、あの駅で出会った男。『JACK』の幹部キャプテンZだった。

「アンタは…」

「ああ、何も言うなよ。私自身少々困っているんだ。お互いこんな立場でなければ友人になれたかもしれない…そう思うと悲しくもあるし…激戦区である中東からわざわざ私をこんな平和な国に送り込んだ元上司のことをクソッタレと思いたくもある。君はどうかな?」

 岩盤から体を引き抜き、全身の痛みが回復していくのを感じながらボードブレードを構える。

「問答無用か。割り切りが速いのは良い戦士の素質アリだ。その点は好ましく思うよ。だが…」

「っ!?」

 次の瞬間、俺の腹に強烈なボディブローが叩き込まれていた。

「残念ながら未熟だな。戦いの資質事態無いんじゃないか?少年」

 その言葉の意味が理解できるよりも先に、キャプテンZの回し蹴りが俺の頭に叩き込まれる。嘘みたいに吹き飛ばされた俺をよそに、キャプテンZはまるで蚊でも追い払ったかのような様子でスーツを整えていた。

 馬鹿にされている、と感じた俺は咄嗟にボードブレードを地面に突き刺してブレーキをかけた。

「おや…?」

 そして全速力で飛びかかり、ボードブレードで斬りかかる。しかしキャプテンZは防ぐどころか最小限の動きで回避し、それでいて反撃は一切しないと言う舐めプっぷりを見せつけて来た。

「おらぁ!!」

 何度も斬りつけ、時には蹴りやパンチを織り交ぜた猛攻をキャプテンZは表情一つ変えることなく回避し続ける。

(くそ、なんで当たらないんだ!?)

「動きに無駄が多すぎるな…色々な格闘技やら喧嘩殺法やらの技術を見よう見まねで再現しただけ。肉体のスペックに頼り過ぎだ。元々のセンスも感じられない…やはり君は、本質的に戦いに向いていないよ」

「うるせえな!!喧嘩売って来てるのはお前らの方だろ!!」

「それもそうか…世の中、ままならないな」

「馬鹿にしてるのか!?」

 憐れむようなその言葉に激高し、俺は大振りの全力パンチをキャプテンZの顔目がけて叩き込む。

 しかし、次の瞬間俺の腹部に今までになかった鋭く重たい一撃が入った。

「馬鹿にしている訳じゃない。自分に合った仕事が出来ない不幸は、私にも実感できるものがあってね」

 此奴が何か言っている。痛みのショックでぼんやりする頭ではそれしか感じ取れなかった。

 意識が薄れ、変身が解ける。元の姿に戻り前に倒れ込みそうな俺をキャプテンZは受け止めようとする仕草を見せた。

(馬鹿に…して…!くそぉ…!!)

 せめて一発。その余裕しゃくしゃくの顔に叩き込んでやる。その一心で俺は足を踏み込み、倒れそうになる自分を支える。

「おっ?」

「うおらぁ!!」

 そして、予想外と言った顔をしているキャプテンZの顔面に全体重の籠ったパンチを叩き込んだ。

「っ!?」

 派手に吹き飛んだキャプテンZをよそに、肝心の俺はそのまま前のめりになって倒れてしまう。今の一撃が正真正銘最後の力だった。

「へへへ…ザマミロ」

 最初の俺と同様、キャプテンZが岩盤に叩き付けられた挙句、崩れ落ちて来た岩に呑み込まれていく光景を見届けた俺は、そのまま意識を失った。

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