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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
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ミッドナイト

このままだと、更新ペースは近いうちに落ちそうで怖いですね…。

 夜空を見上げてあの夜に思いをはせていると、既にかなり夜の遅い時間になってしまっていた。周囲を見渡せば、まだ人通りは多い方だけど、それでも油断はできない。と言うか、一人でこの状況はかなりヤバイ。

 時々忘れてしまうけど、私と和也は各国政府の諜報機関から身柄を狙われている身。いつもは和也と二人だから守ってもらえているけど、一人きりでこんな所に居たら狙われてしまうかもしれない。

 慌てて走り出そうとする私の肩を、誰かが叩いた。

「きゃっ!?」

「うおっ!?」

 咄嗟に反撃しようとビンタすると、そこに居たのは滝先生だった。左頬に私がつけちゃった紅葉を付けて顔をしかめている。

「ご、ごめんなさい!先生!!あの、その…不審者かと思って…!!」

「そりゃないぜ…声かけたってのに無視されたのによぉ…」

「え…?そ、そうだったんですか!?」

 和也との思い出に夢中で全然聞こえていなかった。何て言えるはずも無く、ただ顔が赤くなるのを感じつつ咳払いして話を誤魔化す。

「それよりも、どうかしたんですか?先生がこんな時間に」

「おう。実は夜の見回りでな。つまりお前みたいな奴を取り締まりに来たって訳だ」

「あ…そう言えば、もう九時半だった…夜を食べてたら時間かかっちゃった」

「どんだけ食べてたんだよ。それよりも、葦原は?こういう時には一緒に居るんじゃなったのか?」

「ズバット編集部に顔出さないといけないって言ってました。だから夕食作ってくれなくて…」

 自分で言っておきながら、それでもやっぱりがっかりしてしまう。思わずしょんぼりしながら答えると、滝先生は呆れかえった顔でため息を付いた。

「まあ、作り置きで満足出来る胃袋じゃないからな。お前は」

「その言い方は嫌です!」

「だからってほかに言い方無いだろ。全く…それよりも、だ。お前らの同棲を特別で認めてから一月だ。何か問題は起きていないよな?」

 デリカシーのない発言に頬を膨らませて抗議するけど、滝先生はそんな私の態度なんか知ったことじゃないと言わんばかりに小声で聞いて来る。まあ、あんまり外に聞かれたくはない話ではあるんだけど。

 滝先生は知らないけど、実はその問題自体は解決している。ただ、私としては少し複雑な気分だった。

「…実は、外国に行ってたおじいちゃんが帰って来ちゃって。だからもう二人暮らしじゃなくって…」

「ああ、そうなのか。ま、それならいいか」

 複雑な気分を思いっきり全面に出して言ってみたけど、当然ながら滝先生は満足げに頷くばかり。教師なんだから、同級生二人が保護者抜きで同棲なんて本当は許されて言い訳が無いんだから、これはこれでいいんだろう。

「ま、そう言うことなら。そうだ、その人って今家に居るのか?」

「多分…」

「じゃ、送っていくついでに挨拶させてもらうか。例の件とも関わってるんだろ?」

 天川学園の教師で唯一私達の事情を知っている滝先生。確かに、もっと早くからおじいちゃんには会ってもらったほうが良かったかも。

 それに、夜道を送ってもらえるのは助かるし。どこかの誰かが襲って来ても、滝先生なら返り討ちにしてくれそうだし。

 そんなことで滝先生に家まで送ってもらう。家に着けば、既にリビングルームの電気は付いているからおじいちゃんか和也のどっちかは居るみたいだ。

「ただいまー。おじいちゃん、帰って来て…」

「ううっ…寂しい寂しい。どっか食べに行くなら、ワシを誘ってくれるくらいのことはしてくれてもいいじゃろ…なのに、帰って来たワシを待っとるのはこの冷めた刺身か…」

 玄関からリビングルームの方を覗いてみて、そっと扉を閉める。何か独り言をブツブツ言いながら刺身を突いているその背中は哀愁を漂わせていたけど、こんな姿を滝先生に見せたくないと言う想いの方が大きくなってしまった。

「滝先生…明日にしてもらえませんかー」

「いやぁ。そう言う訳にもいかんだろう。とりあえず、可哀想だから話しかけてやれよ」

「だって。和也が今日は夕食作れないから私と二人で外で食べてって連絡したのに無視してるんです」

 あの哀愁漂う背中も、元はと言えば自業自得なのに、なぜここでこっちが悪いような言われ方をされなくてはいけないの。

 それも、今おじいちゃんが食べている刺身は、特注で仕入れて来たものを和也がわざわざ捌いて作った物。本当なら私が食べたかったのに。

「とりあえず、今日はもう帰ってください。おじいちゃんには、私から色々と言いたいことが…」

「あっ!ヒカリぃ!!帰って来とったのかぁ…って誰じゃ貴様!!」

 何とか滝先生を帰そうとした所でおじいちゃんが私達に気づいて走って来た。そして滝先生を見て当然のように騒ぎ出した。

「え、ええと…」

「またヒカリが男を連れて来たぁ!?これで二人目じゃぞ!!許せん!!貴様、名を…」

「担任の先生だから…!!」

 咄嗟にビリビリネットを改造したスタンバトンでおじいちゃんを黙らせる。恍惚の表情を浮かべるおじいちゃんを前に、滝先生が本気で嫌悪感を見せてきた。もう、本当に恥ずかしい…。

「はぁ。もう、いい。滝先生、後はもうお願い…私はお風呂入って来るから、和也が帰ってきたらそう伝えて下さいね」

「あ、ああ…大変だな。お前」

「ええ。本当に」

 私は全身全霊で滝先生の言葉に同意した。



「ほれ、着いたぞ。お前さんたちの家に」

「ん…」

 いつの間にか眠ってしまっていた俺が目を開けると、既に立花さんの車は俺たちの家の前だった。次回作の打ち合わせに時間がかかってしまったので夜も遅かったので立花さんに送ってもらうことになった訳だが、おかげで変なことに巻き込まれることも無いのは正直嬉しい。ただでさえ夜の街は治安が悪いのに、どこの誰とも知らない奴らに狙われているのだから。

「遅くなっちまったな。次からは何とか努力しよう」

「いつも言ってますけどね。じゃ、また今度」

「ああ。出来たら連絡してくれ」

 それだけ言い残して車を走らせていく立花さん。ナンバープレートが見えなくなるまで見送った後、玄関の扉を開ける。すると、玄関に見知らぬ靴が脱いであるのが視界に入った。誰か客が来ているらしい。

 珍しいこともあるもんだ、とリビングルームを覗く。するとそこには、酒瓶を抱えてぐでんぐでんに酔っぱらった爺さんと滝先生が。

「うおーい。小僧、どーこほっつき歩いとったぁ!?さっさとつまみを作らんかぁ!!」

 俺の顔を見た爺さんがいきなり命令してくる。なんか腹立つな。

「葦原ぁ?この爺さん何なんだよ?これでもう酒瓶三つは空にしてるぞ?」

「そりゃ、天龍寺一族ですからね。それより、教師が生徒の家で酔いつぶれるなんて良いんですか?」

「ああ。不味いなぁ。何とかしてくれ」

「知らんがな」

 酒臭い滝先生から逃げるように洗面所に向かう。とりあえず、二人に水でもぶっかけて目を覚まさせるか。

「洗面器…一つしかねえか。しょうがない。片方はバケツでいいか…はあ、全く…」

 呆れかえったため息しか出せない。大人としてどうなんだよ、と小声で愚痴りながらバケツを探そうと立ち上がると、ちょうどヒカリが目の前に立っていた。

 風呂上り、しかもバスタオル姿で。

「きゃああああっ!?」

「うぉっ!?わ、悪いっ!!」

「ななななな、なんで居るの!?た、滝先生に伝言頼んだのに!?」

 必死にバスタオルで体を隠すヒカリ。薄らと透けて見える体のラインから何とか目を逸らしつつ、俺は片手で水の入った洗面器を引っ掴む。

「二人共酔いつぶれてるんだよ!とにかく、すぐに出るから…」

 しかし、慌てて掴んだ洗面器は俺の手からするりと抜け出た。まともに目視も出来ず、適当に引っ掴んだ上に水に濡れていた為だろうが、ひっくり返った洗面器はそんな言い訳など知ったことじゃないと言わんばかりに真っ直ぐヒカリの方に飛んで行ってしまった。

「え…?」

 酔っ払いでは無く、バスタオル姿のヒカリに頭から水がぶっかけられてしまう。

「わ、悪い!!だけどワザとじゃないんだ!!」

「つ、冷たい…さぶい…」

 俺の言い訳なんか聞いちゃいない様子で、震えるヒカリが水に濡れたバスタオルを振り払う。張り付いた水の冷たさで咄嗟に、と言うことだろうけど、そのせいで俺の視界がヒカリの肌色一色に染まってしまった。

「あ、あああ…」

「へ…?」

 凍り付く俺。ヒカリは一瞬首を傾げるも、すぐに全裸であることを思い出した。

「…っ!?!?!?!?!?」

 言葉にならない叫びと共に顔を真っ赤に染めて倒れる。あまりの恥ずかしさに気絶してしまったらしい。本人的にはもう無理、と言うことなんだろうが、気絶すら出来なかったこっちにしてみればもっと無理だ。

「ど、どどどどどうすりゃいいんだ!?このままにしておけるわけもないし…けど…」

 水に濡れた上に全裸で気絶してしまったヒカリ。このままだと間違いなく風邪を引いてしまうが、裸のヒカリを相手に何をしろと。

 助けを呼ぼうにも、今この家に居るのは酔っぱらったおっさんとジジイのみ。教師と言えど滝先生は他人だし、爺さんは時々ヒカリ相手に欲情しているフシもある。

「ええいままよ!!後で土下座でもなんでもしてやらぁ!!」

 俺は覚悟を決め、真新しいバスタオルをヒカリの体に掛ける。そしてできる限り体に触らないようにバスタオルを巻き付けるが、それでも手や指はやたらと柔らかい部分に当たってしまう。

(うっ!?ダメだダメだダメだダメだダメだダメだ!!)

 何も考えるな、ただ手を動かせ。自分にそう言い聞かせ、俺は何とかヒカリの体をバスタオルで包めることに成功する。

 そしてまずはヒカリを濡れていない場所にまで移動させ、そしてもう一枚バスタオルを持って来る。後でタオルケットでも持って来るが、今はこれでなんとか。

「はぁ…疲れた」

 前かがみになって肩で息をする。まさか、戦い以外でこんなに神経をすり減らすことがあるとは思えなかった。

「くそ…覚えてやがれよ、あの酔っ払い共…」

 まだ聞こえてくる酔っ払い二人の笑い声を聞き、俺はバケツに水を溜めなおす。おまけとして氷を何個か入れて、俺は水の入ったバケツを抱えてリビングルームに走った。

感想待ってます。

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