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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
28/75

新生活スタート!

二十五話を越えて続けてみると、意外とキャラクターを統一させることが難しいことを悟ってきました。大変なんだなぁ(他人事)。


余談ですが、本日にてユニークアクセス数が555になりました。嬉しいです。また仮面ライダー4号を見て泣こうかな。

 夜。竹刀を背中に担ぎ、天川学園の制服を着た女子生徒が一人、肩を落としながら歩いていた。

「今日も怒られちゃったなぁ…」

 見るからに落ち込んでいる彼女。外見からは真面目さと誠実さ、そして制服の裾からはバランス良く健康的に鍛えられた体が見え隠れする。この辺の通りは比較的ガラの悪いチンピラが居たりもするが、ソイツらも彼女には遠目で見るくらいしかできない。何故なら以前に彼女に叩きのめされた経験があるからだ。

 この街では、自分の身は自分で守れるくらいの強さが無ければ夜出歩くことなど出来はしないのだ。

 そんな街中を歩く彼女の重たい足取りは、チンピラに混じったとある男の目に写った。

「あれ?メール…部長かな?って、なんだ。迷惑メールか…」

 普通ならこのまま削除、と行くところだが、宛先と件名を見て指が止まる。

「私立真赤蘭大学病院の臨床試験のモニター募集?スポーツ経験豊富な若年層を対象に、身体機能の衰えや集中力の低下を抑える薬品を開発…高校生以上は親の許可不要…」

 それは悪魔の囁き。しかし、そうとは聞こえないようにと幾重に整えられた道筋は、彼女の心を激しく揺さぶるのだった。



 おじいちゃんがいきなり家にやって来た次の日の朝。私はいつもよりちょっとだけ寝坊してしまった。色々とあって疲れてしまったのかもしれない。

 こんな日はやっぱり、和也のおいしい朝ご飯をいっぱい食べるのに限る。

 今日のメニューを想像しながらパジャマから制服に着替え、一階のリビングルームに降りる。

「おはよ、和也。もう朝ご飯出来て…」

 階段を下りて扉を開けると、そこにはまるで真冬のような寒々しい光景が広がっていた。

「なんじゃ。この魚、火がまだ通ってないじゃろ。こんな柔らかいの食っては、腹を壊して死んでしまうわ」

「一々うるせーな。雑菌が死滅したギリギリが一番旨いんだよ。ステーキだってレアとかあるだろ」

「ステーキぃ?ジジイはステーキなんぞ食わんぞ。馬鹿にしとるのか貴様」

「馬鹿にはしてねーよ。単にめんどくせーって思ってるだけだ」

 和也の作った朝食を前に、おじいちゃんが男の癖に小姑のように文句をつけまくっている。和也は自分でも言っていた通り面倒くさそうな顔しかしていないが、それでも三人分の箸と皿を用意している辺り律儀だが、おじいちゃんはその部分は都合よく見えていないらしい。

「食事中に喋ってないでとっと食えよ爺さん。仕事くらいあるんだろ?」

 昨日の夜の説明で、既に天龍寺グループの代表に復帰することを大々的に宣言していることも聞かされた。なら今日から早速本社に出社するものだと思っていたのに、おじいちゃんはかなり長いこと文句を言い続けているらしい。

 昔のおじいちゃんはこんな人じゃなかったのに。確かにちょっと変態っぽい言動は昔から多くて、お父さんがあんまり会わせたくないなぁって愚痴を言っているのを聞いたことはあったけど、まさか和也に対してここまで露骨な態度を取るような子供っぽい人だったなんて。

「おじいちゃん?朝から何をしているの?」

「ヒカリか。いやな。全く、こいつの作る朝メシがどうもワシの口に合わんのでなぁ」

「ならコンビニ弁当でも買えばいいじゃん。和也、私の分は?」

「ああ。今運んでくる。ったく、変な時間を使っちまったぜ」

 私の一言に情けない顔を見せるおじいちゃん。孫娘に味方してもらえないのは可哀想かもしれないけど、流石に私じゃこの状況でおじいちゃんの味方は出来ない。と言うか、誰も味方してくれる人なんか居るはず無いのに。

「ううっ…ワシのヒカリがぁ…」

 私っていつの間におじいちゃんの物になったんだろ。ツッコミ代わりにため息を付いて、和也が持ってくてくれた朝ご飯を受け取る。いつも通りの量で安心だ。

 そんなこんなで朝ご飯を食べ続けていると、ふと和也が首を傾げた。

「…そういや、爺さんは普通なんだな」

「あ?何がじゃ」

「いや、ヒカリは滅茶苦茶食べるのに、ヒカリよりもやたら元気な爺さんは普通の量だからさ」

 そう言って和也は自分で持ってきた山盛りの私の朝ご飯を見る。まあ確かに、私の食べる量は普通じゃないよね。お父さんがそう大食いって訳でもなかったし。

「まあ、特異体質じゃよ。痩せの大食いって奴じゃ。食べることにエネルギーを使うから、どれだけ食べても太らないらしい」

 流石にこの質問にはおじいちゃんも同意して頷いた。私も、海外に居た頃たまに同級生の女子からものすごい勢いでこの体質について教えろと迫られたことがあったっけ。特異体質なら仕方ないのかな?

 そんなこんなで私も朝ご飯を食べ終え、和也と二人で登校の準備を整える。そろそろ家を出る時間だ。

「おじいちゃん?私達もう行くけど、グループに行くの?」

「ん?おお、ワシはもうちょっとしたら行くでな。戸締りはワシの方でやっておくわい」

「そっか。じゃあ、行ってきます」

 挨拶する私の隣で、和也がぶっきらぼうに頭を下げる。おじいちゃんにも見えているはずだけど、おじいちゃんはワザとらしく顔を背けるばっかだった。

 どこまで子供なんだろ、と思わずため息を付きながら和也を見ると、意外と和也は呆れた顔はしていても不愉快そうな顔はしていなかった。

「まあ、面白い爺さんだよな。色んな意味で」

「そうだよね…うん…」

 怒ると言うのを通り越して、もう呆れる他ないと言うことなんだろうか。だけど和也は少し違うらしく、カバンから簡単なアイデアノートを取り出してラフスケッチと人物像を書き足していった。

「偏屈で変態で子供っぽい爺さんってのも悪くないキャラだよな。ここまで極端なら、漫画のキャラのモデルにはうってつけだ。親父もやってたらしいけど、周囲の変な奴らをモチーフにするってのは中々楽しいな」

「あ、そっち?」

「そっちってどっちだ。俺にしてみれば、あれくらいの変人は害がないうちは大歓迎だぞ。そりゃ作った飯にイチャモン付けられてイラッとは来たけどな」

 しれっと言い放って、器用に歩きながらおじいちゃんのイメージや大体のキャラをアイデアノートに書き込んでいく。そう言う和也も十分な変人であることに、本人は気づいていない様子だった。




 放課後、俺たちはすっかり居心地の良くなった生徒相談室で漫画の新作を描いていた。まあまだ大まかなストーリーを決めてネームを描き始める所なので、アシスタントのヒカリはやることが無く一人俺が貸した漫画をソファで読んでいた。

 変身用のスケッチや原稿は既に彼方此方に大量にストックを隠しているから、気兼ねなく今日も漫画を描けるという物。

 さて、新作のストーリーはどうしようか。ヒーロー物なのには変化がないが、完全新作となればヒーローのデザインや誕生経緯なども考えないといけない。掲載されることがあったとしても、連載は無しと言うルールのお蔭で、読み切り一回分で誕生経緯から一区切りまで書かないといけないから、ヒーロー物はエピソードの取捨選択が難しい。いっそ誕生経緯を省略して、初めからヒーローの居る世界を描くという手もあるが、それはそれで世界観に説得力を持たせるための一苦労が居るのでトントンだ。

「お、やってるかー?」

 その時、ノックもせずに見知った顔が相談室の扉を開けた。

「何だよ誠か。今アシスタントは募集していないぞ」

「アシスタント代も払わないのに、募集もクソもあるかよ。天龍寺さんだってそう思わないか?」

「え?和也のアシスタントってお金がかかるんですか?」

「え?あー。ま、別にそう言う訳じゃないんだけどな?」

 新作のラフスケッチを一枚めくりながら、誠が気まずそうに呟く。学校ではチャラいキャラで売っているが、どうも初対面の時からくる純朴なイメージの強いヒカリ相手ではやりにくそうだ。

「まあいいだろ?別にさ。それよりも、相変わらずここは暇そうだな。本来の相談室じゃなくて完全にお前の仕事場になってるじゃねーか」

「暇なときは作業場にしていいって言う条件でここに居るんだ。暇が続くんならこれでいいだろ」

「その作業場がメインになってるっつってんの。少しは仕事を探すとかどうだ?それこそ出張お悩み相談室…とかさ」

「は?」

「いや、は?じゃねーよ」

 どんだけ仕事したくないんだコイツ、と言う目でこっちを睨んでくる誠。仕方ないだろ。ネーム考えてる時間って言うのは結構大切なんだから。

 しかし誠はそんな俺の苦悩など知ったことじゃないと言わんばかりに備え付けのパソコンを立ち上げる。まさか、ここで暇つぶしするつもりか?

「言っとくが、そのパソコンネットに制限かかってるからな」

「知ってるよ。それよりもだな、一月前から噂になってる怪事件があるんだが、聞きたくはないか?」

「あ?」

 パソコンを弄る誠の姿を見て、やたらと嫌な予感がする。チラリとヒカリを見てみるが、あっちはもう漫画に夢中でこっちの話なんか聞く耳を持っていない。

 まあ、どんな噂話かもまだ分かっていないんだ。話はそれからでも遅くはないか。

「お、繋がった。これだよこれ。一月前からネットで話題の怪人動画!素人とは思えないほど出来のいいCGだってのに、実際に現場に行ってみれば本当にそこが壊れてるんだと。ソイツがこれだ」

「!?」

 誠に見せられた画像を見て、嫌な予感が的中したことを悟った。

 そこに写っていたのは、紛れもなく変身した俺とコウモリ野郎、そして半分機械に改造されたトカゲ野郎が戦っている瞬間だった。あの公園で、不完全に変身したせいでぼろ負けしてしまったあの戦い。まさか、滝先生以外にも目撃者が居たとは。

「それでよ。二体が戦ってる訳だが…こっちの怪人。お前がデザインしたヒーローに似てね?」

「そ、そうか?俺の描いたヒーローならもっと細かいディティールにこだわってるさ。こんな線が震えてるようなデザインじゃ満足出来ないって」

「そうかぁ?ま、お前は凝り性だからな。それにそもそも本当に変身出来るわけがないか」

 一人納得したような顔で笑ってパソコンを閉じる誠。どうやら誤魔化せたらしい。まあ、誠も言った通り、一般市民にとっては本当に変身出来る訳がないんだからこれで押し通せるはずだ。

「ま、二人も気を付けろよ。最近この街もだいぶ物騒だからな。俺も折角のデートをテロで邪魔されちまったし…」

「そうだな。お互い、命と身体は大事にしようじゃないか」

「違いないな。学生の身分で言うことじゃねーけど…っと。そろそろ中等部の部活が終わるな。アイツを迎えに行くかぁ」

 誠はそう呟き、年下の彼女を迎えに相談室を出ていった。

感想待ってます。

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