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COMIC-MAN  作者: ゴミナント
20/75

三日目、開幕

まだもうちょっとだけ続くんじゃよ。

 早朝。わざわざ迎えに来てくれた立花さんの車に乗って俺たちは病院を出た。

「いやあ、まさかお前にこんな可愛いガールフレンドが居たとは知らなかったぞ」

「そんなんじゃあ無いですよ。オヤジの知り合いと、『THE HERO』のヒロインのアカリちゃんのモデルの人の娘さんです」

「ほお。確かに似とるなぁ。メガネが無けりゃ瓜二つだ」

 運転しながらも結構喋る立花さん。やっぱり、千葉刑事とは違うな。まああそこまで運転に気をつける人なんか今時少数だろうけど。

 問題なしという事で一晩で退院した俺と違い、当然ながら入院することになってしまった千葉刑事。まあ腹部貫通なんて結構やばそうな怪我していたし、何よりあの人は人間だしな。けど病院を出る前に一度会いに行ったら元気そうだったし大丈夫だろう。

 それにしても、結構千葉刑事が教えてくれたことは多かったな。

 まず、俺の体のナノマシンのことやヒーロー活動に関しては秘密ということにしてくれた。上司や同僚にも黙っていてくれるらしい。なんでも『現状、日本にはヒーロー活動を規制する法律は存在しないし、警察にもヒーローの中身を公開する義務もない』とのこと。まあ屁理屈だけど、警察に余計な介入をされたくなかったからちょうど良かった。

 またそれに加えて、現在の捜査本部で俺たちに疑いの目を向けているのはやっぱり千葉刑事だけだったらしい。勿論犯人として疑っていたわけではないが、事件に関する重要な機密を隠していると感じていたんだとか。

 ただ、やっぱり捜査本部のほぼ全員が天竜寺グループと現社長の天竜寺サクヤを疑っており、決め手になりうる物証を求めて右往左往しているらしい。

 俺が教えたオヤジ狩りの三人組は、と聞いてみたが、結果は予想外の答えだった。なんと三人とも全身の血液を全て抜き取られたミイラ化した死体で発見されてたらしい。最初の二人は倒して気絶させて放置しておいた後に襲われ、昨日の一人は千葉刑事の呼んだ救急車やらのゴタゴタの中でいつの間にか殺されていたらしい。おまけに一昨日のオカマブラザーズも昨日の草野郎も、それぞれ同じようにミイラ化して発見されているらしい。

 もしかして、博士の研究所を襲ったサソリ野郎と最初に戦った時に加勢に来ていた奴の仕業なのか。なら、アイツはコウモリの怪人なのだろうか?

 そして最後に、昨日の事件は千葉刑事を襲った天竜寺グループの攻撃として報告されたらしい。イマジネーターに関することは伏せておいたが、いずれ間を置いて上層部に報告するとのこと。

 つまり、俺たちが解決するまで上層部に報告するのは待つと言うことらしい。あの人、結構気が利くよな。お陰で色々と助かる。このまま警察の介入を許してしまえば、最悪俺も確保されてしまうかもしれないしな。

「それで、本当に行き先は学校でいいのか?」

「忘れ物があるんだ。それだけ取って自分で帰るよ」

「そういう事なら構わんぞ。俺もこれから一文字先生の所に原稿を取りに行かんといけないからな」

「一文字先生かぁ。確か、オヤジの元アシで一度俺もバイトでアシに行ったことがあったっけ。あの人、最近新作で連載を開始したけどまだ立花さんの担当だったんだ」

「そうそう変わらんさ。ズバットはまだまだ若手の雑誌だからな。それこそ漫画家の数と比べて圧倒的に担当編集の人数が足りないわけだ」

 そんなことを話していると、話についていけない天竜寺が拗ねたように俺の服の裾を引っ張ってきた。しかも明らかに不機嫌そうにそっぽを向いているし。

「どうした?」

「別に…ただ、さっきから分からない言葉ばっかり出てくるから…」

 分からない言葉?アシとかバイトとか?まあ確かに帰国子女で日本の漫画文化について全く知らないしな。

 しかし運転席の立花さんは悪い笑顔を浮かべてこっちを見てくる。

「どうやらお姫様はお前に構ってもらえなくてご機嫌斜めらしいな。悪かった。こんなおっさんが王子様を独占しちまってよ」

「そ、そんなこと無いです!!ただ、知らない人の名前を聞くと緊張しちゃう性分なんです…」

 やたら繊細だなオイ。お嬢様ってみんなこんなもんなのか?

「顔真っ赤にしちゃってまあ。いいさ、そろそろ学校に着くぞ」

 車の窓から外を見れば、最近ようやく見慣れてきた高等部の校舎が。近くの道端で降ろしてもらい、立花さんに礼を言う。

「ありがとうございます。最近、やたらお世話になっちゃって…」

「構わんさ。それよりガールフレンドを大切にしろよ?パートナーは早いうちに決めても損はないぞ」

「だからそんなんじゃないって…」

「それじゃあな。原稿、楽しみにしてるぞ」

 立花さんはそれだけ言って車を出した。ため息混じりに見送ると、やがて車は交差点を曲がって見えなくなっていった。

「さてと、行くか。まずは改築されてないクラブハウスだ」

 GWと言えど、グラウンドを見れば運動部は活動している。そう思って校門に足を向けたが、他の学生たちの服装をみて立ち止まった。

「しまった!私服じゃ入れないんだった」

「そうなの?」

 学生が入っても問題なさそうだが、今俺たちは二人共私服だ。残念ながら私服登校は許されていないからこのままでは入れない。しまった。焦って肝心なことを忘れてた。

 今から帰って着替えてくるのも面倒だし、下手すればその隙にまた新しい怪人が襲ってくるかもしれない。

「…滝先生に連絡して、協力を頼むか」

「滝先生かぁ。手伝ってくれるかな?」

「曲がりなりにも学生相談室の顧問だからな。手伝ってくれなきゃ職務怠慢で訴えてやるさ」

 スマホに登録しておいた滝先生の番号に電話をかける。しばらく待っていると電話が繋がって滝先生の眠そうな声が聞こえてきた。

「滝先生?今いいですか?」

『どした?お前がGWに俺に電話するなんて』

「学校に忘れ物したんですけど、いろいろ面倒な事情で私服で学校前まで来ちゃったんですよ。何とかしてくれません?」

『そんなん知らんぞ。俺は忙しいんだ。一度帰って着替えて来い』

「嫌です。時間がないんです。それに、相談室絡みでもあるんで」

『…分かった。しょうがない、今どこだ?体操服持って行くからどこかで着替えろ』

「あ、じゃあ女子の分も一着持ってきてください。サイズは…天竜寺、服のサイズどのくらい?」

「!?」

 しまった。いきなりな上に不躾すぎたな。天竜寺が顔を真っ赤にして睨みつけて来てるよ。

「悪い。質問を変える。体操服持ってきてくれるらしいからサイズ教えて」

「…自分で答えるからスマホ貸してくれる…?」

 冷ややかな声におっかなびっくりスマホを渡す。やっぱりかなり怒ってるよ。女子に体のサイズに関する質問は原則禁止って法律出来ないかな。そしたらこんなミスしないで済むのに。

 やがて校門からカバンを抱えた滝先生が出てきた。あからさま過ぎる寝癖と目やにを隠そうともしていないが、一応職務中のはずだよな。まさかサボって寝てたなんてことはないだろうし。

 そんなことを考えつつ、それぞれトイレの個室で体操服に着替えて学校に入る。運動部の連中も居るから何ら不自然ではないな。

「それにしても、天竜寺が相談室に来ていたとは知らなかったぞ。なんの相談だったのかは教えてはくれないのか?」

「滝先生、それは真面目に仕事をしてる人の台詞じゃないんですか?」

「ぐう…」

 どうやらグウの音は出たらしい。さてと、これからどうするかな。取り敢えず、滝先生を追い払うか。

「そう言えば、忙しいって言ってましたけどどうなったんです?」

「断ったのにゴネたお前にだけは言われたくないんだが…まあ暇だからサボってたんだし、良いだろ」

「暇だったのかよ。って言うかGWに暇なのに学校に居るんですか?」

「中途半端な敬語は逆に失礼だぞ…それに仕方ないだろ、職員室を空にするわけにはいかないんだ」

「なら早く戻ったほうがいいんじゃないですか?たった今、電話が鳴り響いているかも…」

「…薄気味悪いこと言うなよ…はあ、しょうがないか」

 肩を落として立ち去っていく滝先生。さてと、今度こそクラブハウスの調査だな。

 我が校の二階建てのクラブハウスは主に運動部が使っているが、基本的には倉庫として使われている。昔は文化系の部活もここで活動していて、さながら休憩室のような光景があったらしいが、新校舎の建設でそっちに文化系が移動し、更に老朽化で運動部の部員も滅多にここで休憩したりしなくなったらしい。近いうちに取り壊されて新しいクラブハウスが作られるらしいが、果たしていつのことになることやら。

「さてと。じゃあ、文化系が使ってたって言う二階から調べるか」

「鍵かかってるけど…」

 天竜寺が言うとおり、どれもこれもきっちり鍵がかかってる。今からまた職員室行くのも面倒だな。しょうがない。ここは、老朽化のせいという事にしてもらおうか。

 心の中でそう言い訳して、まずは一番可能性が高いかつて活動していたと言う漫画研究部の部室の扉の鍵を力任せにこじ開ける。あまり派手な音はたてていないからバレないだろ。

「これで開いた。行くぞ」

「大丈夫かな…?」

 中には綺麗さっぱり何もない。埃の山があちこちに点在してるくらいだ。噂じゃ十年以上前に活動していたらしいが、部員が少なすぎて解散させられたらしい。オヤジがやってた部活ってこれじゃないのかと思っているんだが、果たして…?

「ねえ。この壁、なんか落書きしてあるよ」

「ん?どんなだ?」

「色々書いてあるけど…何これ?」

 天竜寺が見つけた壁は、確かに色々な落書きが書かれてある。ってか、有名な漫画のキャラばっかりじゃないか。

「鉄人アテムにエンジェルマンにマシーンマン990に、これは海洋鉄道9999か。で、こっちはバベル三世にOKIRAか」

 それにしても、一直線に綺麗に並んで書かれてあるな。これはもしかしてパスワードのヒントか?

「試してみるか。USBメモリ貸してくれ」

「うん」

 カバンに入れておいた小型のノートパソコンを起動し、メモリを挿入。パスワード入力画面までたどり着くと、まずは全部のキャラを書いてある順に入力していく。勿論全部ローマ字だが、コレジャナイ感あるな。

「頭文字を入れていくか。アテムの『A』に、エンジェルマンの『A』、990だから『9』に9999で『9』。で、バベル三世で『B』で最後に『O』。AA99BO?」

「それ、お父さんがいつも使ってるパスワード…」

「ダメじゃん」

 試したあとだって聞いてたけど、まさかこれかぁ。これしかないと思ったんだけどな。けど待てよ。これらの順番を入れ替えるのは盲点じゃないか?

「じゃあまずは連載順に入れ替えるか。えっと、A99BA9O?」

感想待ってます。

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