第11話 そしてそれから。(番外編)
「相変わらず、まっずいわね」
「ああ…すっかり忘れていた。思っていた以上だ」
フール国に仕事で出かけると、父は必ずバラのジャムを母のお土産に買ってくる。
そして、まずい、まずいと二人で言いながら、楽しそうにそのジャム入りの紅茶を飲むのだ。
…変な夫婦…。
その後のことも知っている。父は小柄な母を膝に乗せてキスをする。
どうやらバラの香りのキスになるのだそうだ。
…年頃の息子の前で、何をやってくれてるんだ…
「マリウスもフールに行って好きな子が出来たらやってみればいい」
いつもは難しそうな顔をしている父が、この時ばかりはふんわりと笑う。
父に貰ったというチョーカーをいつも付けている母が、ニヤニヤして僕を見る。
「やりませんよ」
アルノルト侯爵家の長男の僕は、来週からそのフール国に留学する。
正確に言ったら、留学する第一王子にくっついて僕も行くことになっている。必要な書類に親の署名がいるので、貰いに来ただけだ。
***
新しい生活に緊張しているか?と聞かれれば、している。
余所行き着のタイを締めながら、マリウスは深く息を吐く。
馬車に次々に荷物が積み込まれる。3年の予定の留学だが、学校には制服もあるようだし、今、15歳で成長期だから、服は小さくなったら向こうで作るように言われている。実際、もう母の身長を超えたし。
見送りに出てくれた両親と弟妹たち。領地から祖父まで来てくれた。
一番小さい1歳になったばかりのアデリナが父に抱かれて僕に手を伸ばす。
「行ってくるね、アディ」
順番に5人の弟妹に挨拶して、最後に母が僕を抱きしめる。
トイ・トイ・トイ
いつもの母のおまじないが耳にくすぐったい。
「では、行ってまいります」
きっとうまくいく。きっと楽しい。
急に寒くなってまいりました。皆さん風邪ひいていませんか?
私の家から見える山々の頂はもう白くなりました。今年は冬が早そうです。
暖かくしてお過ごしくださいね。
いつも誤字脱字修正、感想、本当にありがとうございます。




