第48話 七罪の怠惰その3
ああ、たしかによく見れば、身体が変わっている。
ふん、と優男がオリバーに攻撃を仕掛けた。
「――おっと、いきなり攻撃するかよ」
オリバーは間一髪でそれを防ぐ。
見ていたメリアは、オリバーの鈍感さに少しうんざりしていた。
色々とツッコミたい気持ちはあったが、刑務所内に響く鉄と鉄のぶつかる音は、ますます激しさを増していく。
「ぐっ……ううう……!」
オリバーは鉄のパイプで、必死に攻撃を受け止めていた。
優男は手加減をしない。
反撃の隙を一切与えない戦い方だった。
メリアは妖精サイズへと姿を変え、魔法で援護しようとする。
「――サンダーッ!」
指先から放たれた雷は、しかし優男に届く前に、力なく地面へ落ちた。
「……え?」
オリバーとメリアが同時に驚く。
だが優男は気にする様子もなく、油断したオリバーに一撃を叩き込んだ。
「ぐはっ!」
オリバーはメリアの近くまで吹き飛ばされる。
「だ、大丈夫、オリバー?」
メリアが慌てて駆け寄る。
壊れた壁から舞う埃の中、メリアが見たのは――五歳ほどの子供だった。
「いてて……。……お姉さん、誰?」
子供になったオリバーが、きょとんとした顔でメリアを見上げる。
その光景に、メリアはさらに混乱した。
オリバーを女体化させられたうえ、今度は子供にされている。
こんな相手と、どう戦えばいいのか。
メリアはオリバーを抱え、その場から逃げ出した。
背後では、優男がゆっくりと歩きながら追ってくる。
「俺からは逃げられないぞ」
そして、冷たく告げた。
「あと二撃もあれば、そいつは死ぬ」
その言葉を聞き、メリアはさらに距離を取る。
――一方、コズモは。
「――ッ!」
槍が地面に突き刺さった。
「あらあら、回避がお上手ですね。星の勇者様」
「褒めるなよ。照れるだろ」
コズモは軽口を返しながら、次の一撃を避ける。
ドレスを着た美しい女性の槍が、今度はコズモの頭を狙って振るわれた。
だがコズモは軽やかに身をかわす。
「しかし、目が見えないのは鬼畜だな」
「けれど君の、素晴らしい容赦のない槍さばきを、もっと見ていたい」
見えていないのに、そんな言葉まで返す。
女性はくすりと笑った。
「お褒め上手ですね。わたくしの香水は、気に入りましたか?」
「いや、全然。俺は彼女が使ってる香水の方が好きだな。強すぎなくて、甘い匂いがほんのりするくらいがいい」
心の中では、彼女の香りを嗅いだだけで視界を奪われていることに気づきながらも、コズモは余裕そうに笑っていた。
「……ねぇ、姉さん。援護していい?」
「……まだよ。そこで待ってて」
「はぁ……まーじ最悪……」
普段着で杖を持った少女は、不機嫌そうに椅子へ座ったままだった。




