とりあえず街に行くかパート1
「俺は奈伊藤ないとうオリバーだ、よろしくメリア」
「よろしく、オリバー」
「なあメリア、さっき魔法を使ってただろ。それでさ、服とか武器とか出せる?」
俺は昔から憧れてたファンタジーの装備を手に入れてみたいと思って、思い切って聞いてみた。
「出せるけど、私の家にある用意した物だけだよ」
「家にある物?」
メリアは魔法を使い、少し錆びて汚れた刀を取り出した。俺はその刀を受け取り、不安になった。
(えー、これで戦うの?)
「ちょっと錆びてるけど、まだ使えるよ」
そう言われても、不安は消えない。
「ねえオリバー、どんな服がいい?」
メリアが服を出そうとした瞬間、草むらから5匹のゴブリンが飛び出してきた。
俺は素早く戦闘態勢を取った。
「おいおい、思ってたより小さいな。こいつら」
ゴブリンたちは身長が約100cm、棍棒と盾を持っていたが、リーダーらしきゴブリンは槍を持っている。
「よし、これで力試しができる!」
俺は刀を振りかざし、近くのゴブリンに攻撃を仕掛けた。
「喰らえ、我が聖剣を!」
(聖剣じゃないけどな)
ところが、刀の刃が鞘から抜け、そのままリーダーゴブリンの額に当たった。刀が折れるかと思ったら、まさか刃が抜けるとは思わなかった。
(ええっ!?)
驚きつつも、すぐに目の前のゴブリンを拳で殴り、棍棒と盾を奪った。そして棍棒で殴り、盾を投げつけて隙を作り、さらに棍棒で次々とゴブリンを叩きのめした。
ゴブリンたちは散々ボコボコやられた挙句、武器を投げ捨てて逃げていった、オリバーは投げ捨てられた武器を回収した。
オリバーはボロい木の盾と槍を手に入れた。
「はぁ…はぁ…疲れた」
「なあメリア、次はちゃんとした物をくれ」
「悪かったわ」
メリアは気まずそうに言い訳を始めた。
「先代の刀を試してもらおうと思って渡したの。でも、その怒ってる顔やめてよ、ねえ?」
俺はちょっと怒りながらメリアを見ていたが、しつこく謝られるのも面倒で許すことにした。
「わかったよ」
「じゃあ、オリバー。この服を着てみて」
メリアは俺とほぼ同じ身長になり、魔法で次々と服を出してくれた。
「え、メリア、君そんなに大きくなれるの?」
「なれるわよ。それより、早く着てみて」
いろんな服に着替えてみた。
赤い色のローブと服をつけた、
効果は炎に対する耐性が得る。
次はベレー帽と緑のローブがつけた、
効果は迷彩効果がある、
次は黒の服と軽い鎧がつけた、
効果は身体能力の強化、物理ダメージの減少。
最終的に俺が選んだのは軽装の黒い服だった。
「似合ってるのかな、メリア」
「似合ってるよ」
「あ、そうだ」
「なあメリア、俺の能力ってなんだ?」
メリアはズボンのポケットからスマホを取り出し、画面を操作し始めた。
「えっ、スマホ持ってるの!?」
「うん、持ってるわよ」
「いいなあ……俺、死ぬ前はスマホなんて持ってなかったんだ。まさか、この世界の人もスマホを使ってるのか?」
「この世界の人はスマホを持ってないわよ。でも、私は持ってるの」
そう言いながらメリアは画面をスクロールし、やがて何かを見つけたようだ。
「お、あったあった」
メリアは俺の資料を見つけたが、難しい顔をしている。
わ
「何々、俺の能力って?」
「後で言うわ」
「なんでだよ、言ってくれよ!」
「ダメ」
「頼むって、本当に!」
「いーや、言わない」
「お願い、por favor、 please !」
俺が必死に頼むと、メリアは溜め息をついてこう言った。
「オリバー、君は能力がなくてもよく戦えるじゃない。それに、後で必ず教えるから約束するわ」
「…わかったよ」
「なあ、メリア。この辺に街とかあるか?」
「ちょっと待って、確認するわ。」
メリアはスマホを取り出し、地図アプリを開く。
「……うーん、近くに街はあるけど、一日かかるわね。」
「おっしゃー! じゃあ野宿だな!」
オリバーは目を輝かせ、拳を握りしめた。
「野宿ってロマンだよな! 焚き火囲んで肉焼いて、星空見ながら寝るとか最高じゃん!(まさにRPGゲームでやっていた事ができる!)」
彼の頭の中では、完璧なキャンプシーンが展開されていた。
しかし――
「野宿? やらないよ。」
メリアは首を振りながら、あっさり言い切った。
「えっ……?」
オリバーの目が見開かれる。
「だって、わざわざそんなことしなくてもいいでしょ。」
メリアは淡々とそう言いながら、近くの木に歩み寄り、指をパチンと鳴らした。その瞬間――木の幹に突然扉が現れる。
「今日は私の部屋で寝るよ。」
「えっ!? なにそれ!? ドア!? 木から!? そんなことできんの!?」
オリバーは扉を指さして大騒ぎ。
(ちょっと待て……。俺、異世界に転生したんだよな? なのに野宿なし? 焚き火もなし? シュラスコもなし? 俺の想像していたと異世界転生の生活が違うだけど……!)
「ほら、早く入って。」
「お、お邪魔しまーす……」としょんぼりした顔で入った。
オリバーが扉をくぐると――そこに広がっていたのは豪華で可愛らしい部屋だった。
広いリビングに、キラキラした最新キッチン。寝室は壁がピンクで、ぬいぐるみが所狭しと並んでいる。
「うわ、なんだこれ……。お姫様の部屋か?」
オリバーはぽかんと口を開けたまま立ち尽くしていた。
「ほら、口開けたままだと虫が入るよ。」
メリアが笑顔でそう言う。
「で、何か食べたいものはある?」
「え? 食べる?」
「いいわよ、冷蔵庫に何でもあるし。」
言われるがまま冷蔵庫を開けたオリバー。そこには牛肉、豚肉、鶏肉、ハム、ソーセージ――肉がぎっしり!
「なにこれ!? 天国か!?」
「で、どうする? 何か作る?」
「じゃあ、ハンバーグ! ハンバーグがいい!」
オリバーは満面の笑みでリクエストした。
メリアは慣れた手つきで料理を始める。
「オリバーは座って待っててね。」
「え、手伝うよ?」
「いいの、そこに座ってて。」
仕方なく椅子に座ったオリバーは、部屋をきょろきょろと見回した。
(こんな可愛い部屋に俺がいるって……これ、夢じゃないよな? ……でもこれ友達に話したら絶対「ずるい!」って怒るだろうな!)
友達「野郎ぶっ殺してやーる!!」
そんなことを考えている間に――
「お待たせ! 私の特製ハンバーグよ!」
「うおおお! すっげえ! いい匂い!」
オリバーはテンションマックスでフォークを手に取る。
「いただきます!」
二人でハンバーグをペロリと平らげた後、オリバーはふと疑問に思った。
(待てよ……この部屋は一人用に部屋だよなまさか、ベッド一つしかないか? 俺、どこで寝るんだ? え、もしかして一緒に? いやいや、いきなりそれはないな……。)
悶々としていると、メリアが話しかけてきた。
「オリバー、明日は街に行くけど、何か欲しいものある?」
「えっと……武器とか? あと服とか食い物も見たい!」
「いいわね。明日は美味しいスイーツも買って、君にぴったりの武器を探そう。」
「服って……この世界でも売ってるんだな?」
「もちろんよ。」
「じゃあ、メリアも新しい服とか買うの?」
「いや、私はこの服でいいわ。」
「えーその服で冒険すんの?」
「何か文句でもあるの?」と返事しオリバーは小声で
(全然ファンタジー感ないな……。)
そして完食した後。
「さ、そろそろ寝ようか。」
「あ、ああ……で、俺はどこで寝るの?」
メリアは自分の寝室に向かい、オリバーを呼んだ。
「ここよ。」
ベッドの前で立ち止まるオリバー。だが彼は、ベッドには向かわず、床に座り込んだ。
「え、ベッドで寝ないの?」
「うーん、なんか落ち着かなくて……床の方が安心するかも。」
オリバーは苦笑しながらそう言った。
「……風邪をひいても知らないよ。」
メリアは呆れたように笑ったが、その目はどこか優しかった
――(やっぱり資料の通り、オリバーは変態じゃないか、あの二人が異常なだったか.....)とオリバーの前の転生者たちを思い出していた。
メリアはベッドから起きると、静かに台所に向かった。オリバーはまだ眠っているようだ。彼女は朝食を作り始め、手際よくスープとパンを用意して、食卓に並べた。
食事の準備が整った頃、オリバーがようやく目を覚ました。メリアは振り向き、にっこりと微笑んで言った。
「おはよう、オリバー。朝食できたわよ。」
オリバーは眠そうに目をこすりながら、席に着いた。二人はしばらく無言で食事をしながら、食べ終わるとオリバーが口を開いた。
「なあ、メリア。この街にはギルドってあるのか?」
メリアはスマホを取り出し、ギルドを検索した。「いっぱいあるわ。」
オリバーは軽くうなずきながら言った。「ふーん。それじゃ、メリアもギルドに入るのか?」
「うん、入るよ。」メリアは少し笑って答えた。「オリバーがひとりだと、なんだか嫌な予感がするから。」
準備を終え、メリアとオリバーはバッグに荷物を詰め込んだ。メリアは確認しながらつぶやく。
「よし、ハンカチOK、救急箱OK、食べ物OK…」
「「よし、行こう!」
オリバーは勢いよくドアを開いた。
その瞬間――
森の暗闇から、何かが飛んできた。
「危ない!」
メリアが咄嗟にオリバーの背後から抱きつき、腕で彼を庇った。直後、彼女の左腕に鋭い痛みが走る。小さな針が三本、深く突き刺さっていた。「うっ...!」
オリバーは即座に森の奥を見やったが、そこには誰の姿もない。ただ、静寂だけが広がっている。
(……誰もいない、いや、どこから針が飛んできた?――)
(——まさか....!、透明ができる敵か!。)
オリバーの背中に冷や汗が伝う。目に映らぬ敵。透明化の能力か、それとも何か別の手段か?
(....見えない敵とどう戦う?)
焦りを抑え、オリバーは冷静に考えた。そして、ある直感が脳裏をよぎる。
彼は地面に手を伸ばし、土をすくって勢いよく周囲に撒いた。しかし――土は当たらなかった。
オリバーは槍を構えた。ゴブリンの群れを倒した際に回収したものだった。鉄製ではなく粗雑な作りだが、戦闘には十分に使える。
オリバーは背後へと振るった。だが、手応えはない。
(クソッ、どこにいる!?)
一方、メリアは素早く傷口の処置をしようとしたが、違和感に気付く。腕に残る感覚は痛みではなく、痺れ。まるで神経を麻痺させる毒が塗られているかのようだ。
「っ……」
メリアは眉をひそめる。長引けば危険だ。だが、戦闘はまだ終わっていない。
オリバーは耳を澄ませた。わずかに、草の上を踏む音が聞こえる。しかし、音が聞こえてもそれでも居場所を探知をするの難しい。
オリバーは直感に任せ、広範囲に槍を振るい始めた。空を切る音が何度も響くが、敵の姿は見えない。
すると槍を構えていたオリバーの槍が真っ二つに折られた。
「•••!?」折られた槍を見たメリアは魔法でオリバーが回収したボロい盾をオリバーの目の前に出した、ガタッと落ちたを取ったオリバー構える。
「待っていろ、オリバー、サポートするよ」
メリアの声には緊迫感が滲んでいた。彼女は腕の痺れを無視し、敵の動きを必死に探る。
(……どこだ……何か、手がかりは――)
ふと、視界の端で異変に気付く。
(……ゆっくりと、踏みしめられる草……!)
わずかに沈む地面。風にそよぐはずの葉が、不自然に揺れている。そこに、確かに”何か”がいる。
「オリバーッ!後ろだ——!!」
メリアが叫んだ。オリバーは即座に後ろを向き盾遠構えた。
その瞬——ボロい盾は砕かれた!
「しまっ――」
だが、その時。
「動かないで!」
メリアの声が響いた。
彼女の手には、魔法の雷光――《スタン・ライトニング》
放たれる蒼白の閃光。
稲妻が駆け抜けた瞬間、空間が歪む。いや、“何か”が光に包まれ、形を現した。
「ぐっ……!」
敵が苦悶の声を上げ、地面に倒れる。
(やったか……?)
オリバーは慎重に槍を構えながら、倒れた敵を見つめた。
メリアが息を切らしながらも微笑む。
「……少し、痺れるでしょうけど……これで、大人しくなってくれるはずよ」
彼女の腕にはまだ痺れが残るが、それ以上に、敵を仕留めたという確信があった。
オリバーは深く息をつきながら、盾を地面に置いた。
「助かった……ありがとう、メリア」
森の静寂が戻る。
しかし、オリバーの胸にはまだ、見えざる敵への警戒が残っていた。
透明化が解け、倒れた敵の姿がはっきりと見えるようになった。黒を基調とした服装に、漆黒のローブとフードとマスク。影のように気配を消していたのも納得だ。
メリアは肩で息をしながら、自分の左腕を軽くさすった。
「……ちょっと待ってね」
そう言うと、片手を前にかざし、静かに魔力を込める。次の瞬間、空間が歪み、彼女の手元に一本のポーションが現れた。メリアは迷わずそれを開け、一気に飲み干す。
「ふぅ……大丈夫、ほとんど治った」
呼吸を整えながらそう言ったが、左腕を軽く動かすと、わずかに痺れが残っているのがわかった。
「どうする?」
オリバーが尋ねると、メリアは小さく笑って答えた。
「そうだな、まずは縛ろうか」
そう言いながら、彼女は自室へロープを取りに向かった。
戻ってくると、オリバーにロープを手渡しながら苦笑する。
「ごめん、左腕がまだ少し痺れてるから、縛るのはお願い。やり方を教えるよ」
「オケ、わかった」
オリバーはロープを手に取り、倒れた敵を見下ろす。
「じゃあ、どうやればいい?」
「まずは手首をこうして……」
メリアは片手でジェスチャーをしながら説明し、オリバーはそれを見ながら手際よく縛っていく。
「うん、いい感じ。でももう少しきつくした方がいいかも」
「こうか?」
「そうそう、そんな感じ」
敵をしっかり拘束すると、オリバーはふぅと息をついた。そして、ふと気になって敵のマスクに手を伸ばす。慎重に外すと——
「……え?」
思わず声が漏れた。現れた顔は、どう見ても女の子だった。
「転生者……?」
異世界ではまず見かけない顔立ち。驚きつつも、オリバーは僅かに息をのんだ。いったい何者なのか——?
オリバーは、しっかりと縛った女の子を寝室まで運び、ベッドの上に寝かせた。しばらくすると、女の子が目を覚ました。
「……ん?」
意識がはっきりするにつれ、彼女は自分の手足が縄で拘束されていることに気づいた。
「なっ……!」
身をよじらせ、縄を抜けようともがくが、しっかりと縛られているため微動だにしない。
その間、オリバーとメリアは少し離れた場所で話をしていた。
「で、この子をどうする?、街までどうやって連れて行く?」
オリバーの問いに、メリアは軽く考え込み——すぐに笑顔で提案した。
「オリバーが運びながら歩けばいいんじゃない?」
「……えー」
さすがにそれはキツいだろ、と言いかけて、オリバーは女の子をちらりと見た。
(まあ、こいつはそんなに重くはないけど……ずっと担いで歩くのは俺めっちゃ疲れるよ)
「うーん、それだと俺めっちゃ疲れるよ」
「そうだねぇ……じゃあ、引っ張りながら歩けば?」
「それはそれで大変じゃない?」
そんな風に話しながら、オリバーはメリアの腕に包帯を巻いていく。
「よし、完璧」
包帯をしっかりと巻き終え、オリバーは満足げに言った。
メリアは彼の手元を見ながら、微笑む。
「オリバー、包帯の巻き方上手いね」
「ふふーん、元保健委員を舐めるなよ。」
得意げに胸を張るオリバーを見て、メリアはクスクスと笑った。
その間も、ベッドの上では女の子が必死に縄を解こうと悪戦苦闘していた——が、やはり無駄だった。