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不利でも、私は頑張る!

前回までのあらすじ


仲間を助けるため、勇気を振り絞って王城へ向かったサボン。

彼女を出迎えたのは、代理王──そして、白銀の髪を持つ謎の戦士・光の勇者だった。


「仲間を助けたいのなら、まずは君の実力を見せて」

冷たい視線を向けた勇者は、問答無用で剣を抜いた。逃げることも、怯むことも許されない。


「分かりました──では行きます!」

  (ステルスモード•オン!)


隠密用のマントとマスクで透明化しようとしたサボンだったが、すぐに異変に気づく。

──「針のケースがない……!?」

いつも腰にあるはずの愛用武器が、今はない。

そう、あのケースは、今もオリバーの手の中にあったの

だ。 

オリバー(ハハッ、ごめん、忘れてた!)

……と、サボンは想像した。


(ここまで来たんだ。不利でも、やるしかない)

希望をつなぐため、サボンは過酷な戦いへと挑んでいく──!



サボンは透明化し、柱の影に身を潜めて勇者の動きを観察していた。

得意の針投げは封じられ、手元にあるのはナイフが二本だけ。不安は尽きなかった。


そんな彼女の気配を、勇者は見逃さない。

「ふ〜ん、透明になれるんだね」


歴戦の戦士らしい、落ち着いた反応だった。

(……あれを使うしかないか)


サボンは決意し、柱から飛び出す。だが──

「そこか!」


勇者の剣が振るわれたその瞬間、斬られたのは分身だった。


サボンの父はかつて冒険者で、そして自称“忍者”だった。

その父の手によって鍛えられた技──うつせみの術で作られた分身が戦場に舞う。


(今は、父さんの技でやるしかない)


さらに二体の分身を出現させ、ナイフを用いて多方向から攻撃を仕掛ける。

勇者は直感と経験を頼りに、ナイフを剣で弾き、躱していく。


「君……忍者ってやつか? 昔、そうゆう転生者と出会ったんだ」


返事はない。


その隙を突いて、背後からサボンがナイフで襲いかかるが──

勇者は手でナイフを受け止め、そのままサボンを地面へ叩きつけた。


「くっ……ナイフを一本、取られたか!」


(父さんに会ったことがあるってこと……まさか)

三年前から行方不明の父。死んだとは思っていない。

だが、生活は苦しくなり、サボンは国の兵士と冒険者を掛け持ちして家計を支えてきた。


(私が、もっと力を持っていれば……!)

悔しさを飲み込みながら、サボンは冷静さを保ち、さらに三体の分身を展開する。


幻のナイフを投げ合い、勇者の注意を分散。

その隙に、一体の分身がナイフを回収へと動く──勇者はまだ気づいていない。


やがて、勇者は一本のナイフに違和感を抱いた。

「……当たっていない? 幻か」


「もういいよ、君の実力はわかった」


その手に、光の剣が現れる。


「──光魔剣シャイニングレイド!」


詠唱とともに、魔法で生成された四本の剣を壁へ投げ放つ。


「あとで弁償してくれよ」と代理王は資料を見ながらつぶやくが、二人は聞いていなかった。


サボンは一瞬の隙を突かれ、すぐ近くに投げ込まれた剣に気づく。


「王様! はいっ、メガネ!」


勇者がサングラスを代理王に投げ渡すと──


「──マトラバースト」


剣たちが一斉に強烈な閃光を放ち、玉座の間が白に染まる。

代理王には影響はないが、サボンは反射的に腕で目を覆う──が、遅かった。


(目がっ……!)


光によって生じた影を読み、勇者は分身たちをすべて斬り裂いた。

柱の陰に隠れていた本体の位置すら、すでに見破られていた。


そして──


視界が戻った時、サボンの眼前には剣の切っ先があった。


「っ……!」


冷たかった勇者の目には、いつの間にか優しさが宿っていた。


「君の実力は分かった。まだまだ強くなれるよ」

「この子を連れていくわ、王様。役に立ちそうだし──」


(この子には、才能があるね)


「よかったな、サボン」


「……うん」


仲間を救えるという嬉しさと、全力を出せなかった悔しさが、心の中で交錯していた──。



場面は変わり──

オリバーたちは村を後にし、街へ戻ってギルドに立ち寄っていた。


ギルドはにぎわっていた。

「ヤッホー!、カンパーイ!」

他の転生者や冒険者たちが高難度クエストを死傷者ゼロで達成した祝賀として、冒険者たち全員に飲み物と食事を奢っていたのだ。


オリバーはクエストボードに目を向ける。内容はすでに更新されていた。


残された高難易度クエストは、二つ──

•『異相の刻鏡者の討伐』

•『沈黙の教会の解散』


受付嬢の話によると──


『異相の刻鏡者』は、正体不明の存在。

鏡のペンダントの力で仲間の姿に化け、一瞬で冒険者グループを壊滅させたという。


『沈黙の教会』は、各地に広まりつつある宗教団体。

だがその実態は、禁術を研究する危険な集団だった。


オリバーはまだ気づいていない。

これから自分が戦う相手の、真の恐ろしさに──



ギルド内の片隅で、オリバー、アレックス、タツミ、メリアは食事を楽しんでいた。


「なあアレックス、その鞘の能力って結局どういうこと?」


アレックスはノートを取り出しながら答える。


「この鞘には聖なる力があって、邪悪なものを祓えるんだ。

さらに、近づいてくる飛び道具を逸らしたり、水平に落とすこともできる。

防いだぶんだけ魔力が鞘に溜まり、それが光になって放出される。

剣を鞘に収めたままでも攻撃できるから、これで昔──城を一個、落としたこともあるよ、はは!」


「ちなみにこの鞘、妻からのプレゼントなんだ」


一同──


オリバー、タツミ、メリア

「えっ……結婚してるの!?」


気に入っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると嬉しいです!

次の話を書く元気になります

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